【UFC79】リデル×シウバ、6年間越しの一戦は?
■第9試合ライトヘビー級/5分3R
チャック・リデル(米国)
Def.3R終了/判定
ヴァンダレイ・シウバ(ブラジル)
【写真】殴られては殴り、殴っては殴られるという展開が続いた (C) ZUFFA
6年間、待ち焦がれた一戦――、つまりズッファがUFCを買収してから、常に追い求めてきた一戦が実現した。「FINALLY」、ついに――という文字とともにヴァンダレイ・シウバがマンダレイベイ・イベンツアリーナに登場。「PRIDE版のチャック・リデル」――、解説のジョー・ローガンがまくし立て、ヴァンダレイの存在感をアピールする。
シウバは、幾分シェイプなったボディととともにオクタゴンに上がる。一方、UFCの顔――、チャック・リデルは大歓声をバックにつけ復活を懸けた試合に、引き締まった表情で挑む。両拳をあわせ、リデルをにらみつけるヴァンダレイ――、やや緊張しているのか、その表情はやや固い。
リデルのゆっくりしたローキックで試合はスタート。両者とも、大きな構えでゆっくり前進する。一気に爆発するのを待つかのような、ゆっくりした両者の出足だが、観客のボルテージの高さは両者の対戦への期待の高さを表している。と、突然、両者のパンチの回転数が上がった。
オクタゴン中央で打ち合いが始まった。まず、シウバのカウンターが当たるが、すぐに前進してきたリデルの圧力に、ケージに追い詰められていく。ただし、リデルのパンチの命中率もいつもより悪い。再び距離を取り直し、仕切りなおしを図ったリデル、シウバも呼吸をおき、カウンター狙いに鋭さが戻ってくる。パンチをもらうものの、ショートレンジでカウンターを打ち返すシウバ。リデルもなかなか前へ足を踏み出せなくなる。ステップバックし、スウェイをしながらフックを返すシウバが、試合終了間際に自ら前に踏み出すが、ここでホーンが鳴り響き、実際に戦う両者の緊張感と観客の期待が交錯した1Rが終了した。
2R、リデルの左右のフックにシウバが後退するも、シウバの右ストレートにリデルの動きが一瞬止まる。前に出るシウバと、ケージ沿いに左右に移動するリデル。シウバのヒット率が上がる。バランスを崩したリデルが尻餅をつくが、米国ではアックマーダーと呼ばれるブラジル人もここで無闇に攻めることはない。シウバの攻勢が目立ってきたラウンド中盤、残り時間2分を切り、両者が中央で打ち合う。一発パンチを受けるごとに上体が大きくぶれる両者、組み付いたリデルの左ヒジがケージ際でヒット、この一撃でシウバの右目を大きくカットした。
激しい流血に負けず、前進するシウバの右フック、返しの左、ここでリデルのストレートが顔面を直撃するが、さらにシウバのカウンターがリデルを襲う。たまらずタックルに出たリデル、そのままテイクダウンを奪ったが、大興奮の2Rはここでタイムアップとなった。
3R、大きく肩で息をするリデルは、いきなりタックルからテイクダウン。しかし、すぐに立ち上がるシウバ、試合はやはりスタンドの攻防で決着がつくのか。リデルの左、シウバの右が交差し、再び両者が距離を置く。次に動いたのはリデルだった。しかし、右フックをヒットさせたものの自ら距離をとる。やや疲れが見えるリデル、シウバは事前の予想を覆しスタミナは十分のようだ。残り時間3分を切ったところで、リデルのバックハンドブローがヒット、ケージに追い詰められるシウバに、リデルの連打がヒットするが、ここでもKOに至らない。残り時間90秒、リデルが呼吸を整えつつ、ロングレンジでパンチを放つ。残り1分、シウバの追い足もやや勢いがなくなるが、それでも右ストレートを果敢に放つ。反対にここでカウンター狙いに転じたリデルは、勝利を確信した戦術か、残り時間15秒のところでテイクダウンに成功した。
そのまま試合終了のホーンが鳴り響くと、中継スタッフからは「リデル、大勝」というコメントも発せられた。試合を支配していたのは、リデル。だが、たった一つのパンチで倒れてもおかしくない展開、黄昏の一戦といわれた対決は、ファイティングスピリットが拳にのり移った魂の一戦となり、結果29-28、30-27、30-27でリデルに凱歌があがり、その左腕がレフェリーのハーブ・ディーンによって大きく挙げられた。
「とてもタフだった。良い試合を見せられたと思う、ベストと尽くした」としっかりした英語でコメントを出したシウバ。この英語の急激な成長は、ヴァンダレイ・シウバがピークを越した大物でなく、米国、UFCでの成功を誰よりも欲しているハングリーなファイターであることを表している。