【UFN289】1年1カ月振りの復帰戦、中村倫也「MMAファイター、格闘家として心と体を持つ一発目の試合」
【写真】ここまで考え抜くことが正解かは分からない。しかし、それをするのが中村倫也 (C)MMAPLANET
26日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのメタAPEXで開催されるUFN289「Rosas Jr vs Barcelos」に中村倫也が出場し、ブレディ・ヒースタンドと戦う。
Text by Manabu Takashima
昨年8月にネイサン・フレッチャーを左三日月蹴りで秒殺し、ランク入りへ再スタート&奪取を決めたかのように思われた中村だが、3月のルアン・ラセルダ戦前に右ヒザ内側側副靭帯断裂で欠場。結果、1年以上のブランクを経験することとなった。
戦い、技術、体、心理面、常に追求し続けてきた中村は、このブランクの間にどのようなことを考え、実行してきたのか。ヒースタンド戦を前に話を聞くと、前足、後ろ足、どちらに重心を取るのかという点において、どれだけの試行錯誤があるのかが伝わってきた。
鈴木崇矢から『倫也さん、左が重たそうです』と言われた
――ブレディ・ヒースタンド戦を約10日後に控えた中村倫也選手です(※取材は18日に行われた)。昨年8月のネイサン・フレッチャー戦、三日月蹴りでKOという素晴らしい再起を飾りながら、結果1年1カ月ものブランクを経験してしまいました。
「そうですね、靭帯がほんのわずかに繋がっていてくれたので、手術でなく自然治癒という形で治療してきました。1月にケガをして、4月にATTに行った時も僕が信頼している体の動きを確認してもらえる先生に帯同してもらって。一つひとつ痛みが出る動作なんかを確認してもらっていました。
その先生は緩める方ではなくて、正しく力ませることにフォーカスする先生で。正しく股関節と足首が力めば、自然と抜けるべきところは抜ける。そういう視点で診てもらっていたので、最初の10日間は股関節の機能をあげ、動きが安定してから徐々に練習に戻っていったという感じです」
――2月ごろに取材をさせてもらった時の「体の感覚が凄く良くなっていた。ヒザが治れば、全てをひっくり返すことができるのでワクワクしている」という言葉は、自ら鼓舞するためのモノだったのでしょうか。
「8月の試合のあと、ケガもなく1分ぐらいで勝ったので11月に試合をしたいと思っていました。それが帰国して最初のレスリングの練習で、肩の腱を切ってしまって……。肩を治していく過程で体が整ってきて、凄く手応えを感じていました。
これは良いパフォーマンスを見せることができるという状態だったけど、ヒザの靭帯をやって……。もう……あの時は、落ち込んでもしょうがないから、プラスに捉えるということを無理にでもやっていたと思います。恭司さんと一緒にいて、貰っていたエネルギーもあったし。この状況をどうプラスに変えることができるんだっていう風に逆算している時期だったので、『これは新しい自分になれる』と思って話していました」
――なるほど、です。ATTでの練習でヒザ、体の具合をチェックし、それ以降は問題なく仕上げることができていたのですか。
「あの期間はヒザを悪化させることなく、過ごすことができました。でも、ヒザの内側をやると母指球に体重を乗せづらくなるので、後ろ足に体重が乗ってしまうとか、気づかない間に体のズレは生じていました。
そうなると喧嘩四つで内回り(左方向)になってくるじゃないですか? 三日月でKOも内回りで、その影響が悪い意味で出てしまっていました。もう内回り頼りになって、奥足の攻撃頼りになっている時期がありました。前足のケガもあり、体重を乗せにくいことに合致して、内回りで誘うばかり。でも『奥足の蹴り、俺は強いし』みたいな感じで。
なんか、その辺りのことは今回の試合の準備期間中でも、自分のなかでどうするのか戦っていました。対戦相手が決まって、前回の勝ちから空いたというのもあって。変わった姿が見せたいという気持ちも当然あるし、本気の取り組み、本気のMMAを全部出したいという気持ちになった時に、帰国中の鈴木崇矢から『倫也さん、左が重たそうです』と言われたんですよ」
――ハイ。
「そこで前に体重が乗らない癖ができている。内回りで仕舞いこまれてしまう感覚があるって、気づきました。前に体重を取るために、重心を真ん中にしないといけない。そこを気にするようになりました」
――武術では肛門が下を向いて垂直に収まっていないと、骨盤がブレて軸や姿勢が乱れるという風に考えていたと聞きます。スポーツにも当てはまるのか分からないのですが。
「いや、実は……」
――やめてくださいよ。肛門という言葉に触発されて、何かリアクションするのは。
「アハハハ。いや、肛門の下においてズレを強制する器具があって、それを使っています」
本当に最後に良いバランスをもって、オクタゴンに立てる。10日前にして、今、本当にそう感じています
――おお、そういうことですか。ホッとしました。でも、実際にそこも意識しているということですね。
「この怪我をしている期間、自分のMMA人生を振り返る時間が多くて。2021年7月にプロ修斗でデビューして、駆け足でUFCまで上がってきて……自分のレスリングで培った、跳ねるエネルギーで初戦のファーニー・ガルシア戦と2戦目のカルロス・ヴェラ戦は制することができていました。
でも、あの2試合は仕留めることができず、自分の仕留める感覚がなくなってくるのがどうしても嫌で。跳ねる、爆発力のあるエネルギーは強みにもなるけど、そのエンジンが尽きた時に倒せる感覚がなくなるのが、本当に自分の中で疑問で。
まして生まれてからずっと、ここでチャンピオンになることを目標に生きてきたのに、カルロス・ヴェラ戦では手も折って、ファンもブーイングだった。皆を喜ばせたいと思ってやってきたのに、誰も幸せになっていない……。そんな風に不貞腐れた心をずっと持ち続けたまま、今まで来てしまっていました。
体を変えないといけない。跳ねる力があっても、地に根を張る力が自分にはないから、もっと必要だと考えるようになりました。そこで肛門の位置とかも、どうすべきかと本気で取り組んできていました。
四股踏みとかやりすぎて、レスリングの前に出る爆発力ばかりだったのが、こうやって過ごしているとパンチを受けることができる感覚が出てきました」
――それはどういうことでしょうか。
「前はパンチが来ると思ったら、ピョンピョン跳ねてバックステップでかわす。そういう出入りのやり取りでした。それが受ける感覚が分かったことで、動きも重たいモノになってしまっていたんです」
――結果、それもネガティブな要素だったということですか。
「つまりはどっちも必要で、バランスなんです。それが今、取れてきている。その感覚があります。やっぱり崇矢はLDH-シャルアーツが出来た頃から練習に来ていて。僕のレスリング的なそういうエネルギーを受けていたわけです。
ダブルレッグ、バーンとか。ストレート、ピョーンとかっていう。そこを崇矢は知っているから、『倫也さんの爆発力って威力が凄いから無視できないのに、今はそれが消えているような感じがするんですよ』と言ってくれて。本当に『ありがとう』です」
――何かを考え、突き詰めると反作用が起こる。難しいですねぇ。
「もう、その繰り返しです。やっぱりピュアブレッド・レスリングから一期生で、色んな局面で一期生やキャプテンという立場にあったので、僕は人を頼るのが本当は苦手で……。だからこそ、人の輪というモノをATTで学べたし、今回はその全てが生きて、良いモノを創ることができるんじゃないかと思います。
本当に最後に良いバランスをもって、オクタゴンに立てる。10日前にして、今、本当にそう感じています」
――ビザの関係でATTでの練習をせずに、国内で最後まで調整することになった今回の試合ですが、日本ではどのような場所で練習をしてきたのですか。
「高谷さんのところ、津田さんのところ。津田さんにも重心の部分、構えとか修正してもらいました。それとKRAZYBEEの練習も参加させてもらって。あとは中村京一郎が動ける時は、ゴールドジムでドリルをしたりですね」
――ビザの関係でATTでなく、国内で最後まで調整することとなりましたが、その仕上げに関して、ATTを引き合いに出して考えることはありましたか。
「ATTでの仕上げと比べると、どうなるのか。そういう風に考えることはありました。ATTだったら、この相手をドロドロでも15分間組み勝てるようにしていたと思います。ガンガン組んで、ポジションを一つ一つチェックして仕上げる。そのなかでKOとか、寝技に繋げることができるかという風になっていたと思います。
ただ今回はケガの影響と自分のスタイルを試行錯誤するなかで、ズレていたことが大きかった。そこを修正し、体がレスラー中村倫也を卒業して……。僕の中での本当の意味で、前回の試合までがRoad to UFCだったという感覚です。中村倫也、UFCでやっていけんのかって。
今回は体が整って、MMAファイターとして、格闘家として心と体を持つ一発目の試合だと思います。そういう不思議な感じですね」
<この項、続く>
■視聴方法(予定)
9月27日(日・日本時間)
午前6時30分~UFC FIGHT PASS
午前5時45分~U-NEXT
■UFN289 対戦カード
<バンタム級/5分5R>
ラウル・ロサスJr(メキシコ)
ハオーニ・バルセロス(ブラジル)
<女子バンタム級/5分3R>
ノルマ・ドゥモント(ブラジル)
アイリン・ペレス(アルゼンチン)
<ライトヘビー級/5分3R>
セドリクス・デュマ(米国)
ルイス・ヘルナンデス(米国)
<TUF34バンタム決勝/5分3R>
イリムベク・アキルベク(キルギス)
ムハマドリ・オスマンリ(アゼルバイジャン)
<TUF34女子ストロー決勝/5分3R>
チナ・ブラッキ(ブラジル)
メリッサ・アマヤ(米国)
<バンタム級/5分3R>
中村倫也(日本)
ブレディ・ヒースタンド(米国)
<ミドル級/5分3R>
ホドウフォ・ヴィエイラ(ブラジル)
ロベルト・ブリチェク(ポーランド)
<ライトヘビー級/5分3R>
ホドウフォ・ベラート(ブラジル)
クリスチャン・エドワーズ(米国)
<ミドル級/5分3R>
ユースリ・ベルガウイ(オランダ)
ジジョルデン・サントス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
エルヴィス・ブレネウ(ブラジル)
ジョザイア・ハレル(米国)
<バンタム級/5分3R>
モンテル・ジャクソン(米国)
リッキー・シモン(米国)
<バンタム級/5分3R>
ジョン・カスタネダ(米国)
アラテンヘイリ(中国)
<女子ストロー級/5分3R>
ジャスミン・ハウレギ(メキシコ)
ヴァネッサ・デモポウロス(ギリシャ)



















