【Road to UFC S05 SF】田嶋椋と対戦、チュングレン・コレン「ずっと街のムクナ・チャンピオンだった」
【写真】インタビュー中、ずっとこの笑顔を見せていたコレン(C)MMAPLANET
28日(金・現地時間)に中華人民共和国は上海の浦東発展銀行上海東方体育中心(プートン・ファジャン・インハン・シャンハイ・ドンファン・タイユィ・ジョンシン)で開催されるRoad to UFC Season05 Semi Finals。バンタム級トーナメント準決勝で田嶋椋と、インド人ファイターのチュングレン・コレンと対戦する。
Text by Manabu Takashima
5月のマカオ大会はショートノーティスのオファーを受け、計量をパスすることはできなかった。しかし、UFCも宮口龍鳳と計量失敗の彼の試合が、公式にトーナメント戦となることを認め、準々決勝が実施された。
結果、2RにRNCで一本勝ちを収め準決勝進出を決めた。MMAPLANETでは上海に向かう直前のコレンをキャッチ。インドとのリモートでインタビューを行った。
東南アジア系の外見を持つ、インド人ファイター。おそらくは現代の日本で考えられないタフな人生を歩んできたであろうチュングレン・コレンは、苦笑い、微笑が全て大きな笑い声になる――そんな人物だった。
マニプールにはムクナという伝統レスリングがある。ベルトを掴んで始め、背中をつけさせたら勝ちだ
――Road to UFCバンタム級準決勝で田嶋選手と戦うチュングレンです。今日はインタビューを受けてくれてありがとうございます。
「グッド・アフタヌーン。ナマステ。僕もインタビューをしてもらえてハッピーだよ(笑)。アイ・ラブ・ジャパン」
――おお、いきなりですか(笑)。ドゥー・ユー・ラブ・ジャパン?
「ノー!!」
――えっ?
「あっ、違う。ゴメン、あまり英語が話せないんだ」
――いえいえ。日本人選手と戦うけど、日本が好きなのですね。
「そうなんだ。日本の人は謙虚で、凄く尊敬心を持っている。そして頭が良くて、フレンドリーだ。前回の試合で戦ったミヤグチも本当に良い人だった。日本人は僕の敵ではなく、ただ対戦相手なだけだよ。アイ・ラブ・ジャパニーズ・ピープル。いつか日本に行って、観光をしたいと思っている。エヘヘヘ」
――押忍。ところでマカオで計量の時にチュングレンの顔を見て、インドでなく東南アジアの選手かと思いました。今、ZOOMで拝見させてもらっている顔を見ても、同じように感じます。
「アハハハハ。それは僕がマニプール州(※ミャンマーと接したインド東端の州)生まれで、メイテイ人だからだよ。マニプールは他のインドの州とは風習も文化もまるで違う。言葉も違うし、衣服も伝統的なモノを着ているんだ。あと他と比べるとキリスト教徒が多く、僕もそうだ(※インド全体だとヒンドゥー教徒は約80パーセントを占め、イスラム教が14パーセント、キリスト教は2.3パーセント。対してマニプール州はヒンドゥー教とキリスト教が共に40パーセントとなっている)」
――インドにはクシュティと呼ばれる伝統レスリングがありますが、マニプールでも伝統レスリングは盛んだったのでしょうか。
「あぁ、クシュティ、レスリングはとても盛んだよ。僕もグレコローマン・レスリングで州のチャンピオンになり、ナショナル選手権大会にも出場した。チャンピオンにはなれなかったけど、僕はインディアンレスラーだ。アハハハハ」
――おおグレコですか。では伝統レスリングでなく、五輪種目のレスリングをやってきたわけですか。
「マニプールにはムクナという伝統レスリングがある。故郷で一番盛んなスポーツだよ。ベルトを掴んで始め、背中をつけさせたら勝ちだ。相撲みたいなものだよ。ハハハハハ。僕はずっと街のムクナ・チャンピオンだった」
――ムクナをやってきたことが、グレコに生きたことはありますか。
「イエス」
――どういう点で、ですか。
「う~ん、英語がダメでゴメン(笑)。相手の日本の人だから、英語が話せないと思ったんだ……。失敗した。僕の方が英語がダメだな。アハハハ。でもアイ・ラブ・ジャパニーズ・ピープル」
――ありがとうございます。(なら、どうやってインタビューを受けようとしていたのか……と思いつつ)いえ、そんなことは……。ムクナの経験は、グレコローマンに生きましたか。ベルトを掴んで始めるから、ワキが締まりそうです。
「そうだ。帯を取って引き寄せることで、タイトに組める」
ミヤグチは試合に応じてくれた。心の奥底で、ミヤグチへの感謝の気持ちを忘れたことはない
――そんなチュングレンがMMAを始めたのは、きっかけは何だったのでしょうか。
「マネーだ。ハハハハ。本当に貧乏だったから、金が欲しかった。最初はマニプール州で戦い、それからはインド全土で戦ってきた。アハハハ」
――MMAのキャリア積み始める時に、打撃の経験は?
「全くなかった。MMAでも最初の3、4試合は打撃を使わずレスリングだけで戦っていた。そしたら、4試合目でアンガド・ビシュトに負けてしまった。アハハハハハ。当時は柔術も知らず、サブミッションも知らなかった。でも、今は紫帯になった」
――練習環境は整っていたのですか。
「今はハリヤナ州のウォリアーズ・コーブMMAと、ライオンズMMAで練習している」
――ライオンズMMAはプーケットですね。
「そうだよ。そこで日本人とも練習をした。この試合に向けてもプーケットでキャンプをし、最後にウォリアーズ・コープで最後の調整をした。2つの場所で練習をしているんだよ。ライオンズMMAでは日本人とも練習をしたよ。3、4人の日本人と練習した。凄く尊敬すべき選手達だったよ。本当に謙虚で。アイ・ラブ・エブリー・ジャパニーズ・ピープル。本当に大好きだよ」
――おお、そうですか。名前を憶えている選手はいますか。
「イエス、イエス、イエス」
――おお、では教えてもらえますか。
「いや、名前は覚えていない。ハハハハハ。ウォリアーズ・コーブにも2人、日本人がいるよ」
――えぇ、日本人がインドでMMAの練習を!!
「いや、MMAではなくてBJJだ。アハハハハハ」
――さきほどから、少しに気になっていたのですが……どなたか横にいて、時々、自分の質問をチュングレンに訳してくれていないですか。
「そうなんだ。僕は英語の聞き取りも、今一つだから。分からない質問は、通訳をしてくれているんだ」
――!!! いや、ではチュングレンも自分の言葉を話して、その方が英語にしてもらえると……。
「おお、グッドアイデアだ。僕は英語が余り分からないから」
――(最初からそうすべきだろう……と思いつつ)お隣の方、ぜひとも宜しくお願いします。では、ここから少しインドのMMA事情を教えてください。チュングレンの試合をチェックするためにMatrix FNの動画を見たのですが、観客も多く立派なショーで驚かされました。
「とにかくMMAは盛り上がっている。UFCファイターが2人いるしね。4年前にアンシュル・ジュブリがRoad to UFCで優勝をした時、物凄く刺激を受けた。インド人ファイターがUFCと契約するには、Road to UFCで優勝することが一番だ」
――ショートノーティスの代役でしたが、出場のオファーがあった時はどのような気持ちでしたか。
「本当に驚いたよ。去年の8月にラビンドラ・ダントに敗れ、Matrix FNバンタム級王座を失った。だから、僕に声が掛かると思っていなかった。イアン・マティが欠場し、バックアップになる予定だった選手も、試合ができなかったらしい。だから急なオファーだったけど、本当に神に感謝した」
――ショートノーティスでの出場もあって、計量に失敗。トーナメント戦を戦う機会を失うところでした。
「オファーを貰った時、実は全然練習をしていなかった。皆、懸命に僕の減量を支えてくれた。何よりマカオでは減量に向けて、本当に設備が整っていた。サウナもそうだし、食事面もそう。でも、人生で一番厳しい減量で、規定のリミットまで体重を落とすことができなかった。結果的にオクタゴンで戦うことはできたのだけど……。
ミヤグチは対戦相手が計量を失敗したのだから、戦わずして準決勝に進める権利を有していた。にも拘わらず、ミヤグチは試合に応じてくれた。僕は彼を倒すためにケージに上がる必要があり、そして試合に勝つことができた。でも心の奥底で、ミヤグチへの感謝の気持ちを忘れたことはない。
僕だけじゃない、マニプール州の僕の友人、知人の皆がミヤグチ、そして日本に感謝している。僕自身、個人的にはミヤグチはRoad to UFCで体重オーバーの僕と試合をして敗れたわけだから、UFCは彼にコンテンダーシリーズへの出場を認めてあげて欲しい。そして、2人ともUFCファイターになって、計量ミスがない状態で再び戦いたい」
スピードでは、僕にアドバンテージがある。爆発力、真っ向からやりあえる力も僕の方があると思っている
――正直、多少の体重オーバーで宮口選手がチュングレンに遅れを取ることはないと思っていました。それがチュングレンは最初の危機を脱し、RNCで逆転一本勝ちを収めました。
「全てのメディアが、僕が勝つとは思っていなかっただろうね。インドのメディアも含めて。僕自身、計量は失敗するし、体調も悪い。いつものように自信を持って戦うことはできなかった。でも、あそこで逆転ができたのは神のおかげ、そしてチームのおかげだ」
――そして準決勝を迎えるわけですが、今回は前回と違いしっかりと調整機関もあったので、いよいよチュングレンの真価が問われる試合となります。
「タイでのキャンプ、インドでの最終調整と本当に上手くいった。前回より、良い動きができるはずだ。これまでと同じように、対戦相手のことを尊敬している。タジマには万全の体調で、オクタゴンに上がって欲しい。僕もケガなく、しっかりと戦いたい。そして自分の試合をして、勝ちたいと思う」
――田嶋選手の印象は?
「タジマはリーチが長くて、経験豊かファイターだ。ただスピードでは、僕にアドバンテージがある。爆発力、真っ向からやりあえる力も僕の方があると思っている。でも、僕は日本人が大好きだから……あんまり、そういうことは言いたくないんだよ。ハハハハハ」
――……。では、金曜日はどのような試合をしたいと考えていますか。
「全ての国の人々が、国に関係なく楽しめる試合をしたい。MMAの良さは、そこだと思っている。世界共通、誰もが楽しめるのがMMAで。国際戦は特に、その要素が強まるからね。そして上海のファンも、僕らの試合を楽しんでほしい」
――素晴らしい考え方ですね。そんななか、もう一方の準決勝カシブ・マードックとダントの試合の行方を占ってもらえますか。
「互角の戦いになると思う。どちらが勝ち残るか、50/50だ。僕はラビンドラ・ダントの強さは、身をもって知っている。彼は練習環境も良いし、本当に強い。可能ならダントと僕が勝って、決勝を戦いたい。リベンジ戦になるけど、それ以上にネパール人とインド人が決勝を戦うことになれば、Road to UFCにとっても、このMMAというスポーツにとっても新しい歴史になるからね」
――チュングレン、今日は色々と楽しい話をありがとうございました。最後に日本のファンにメッセージをお願いできますか。
「僕は日本の皆を愛している。今回の相手も日本人選手になったけど、これはトーナメント。タジマは敵じゃない、MMAを戦う対戦相手なだけだ。僕が日本のことを愛している気持ちは絶対なんだ。写真でしか見たことがないけど、あの美しい国をいつの日か訪れたい。アイ・ラブ・ジャパニーズ・ピープル、アリガトー」
■視聴方法(予定)
8月28日(金・日本時間)
午後6時00分~UFC FIGHT PASS
午後5時45分~U-NEXT
■Road to UFC Season05 Semi Final 計量結果

<Road to UFCフライ級準決勝/5分3R>
チーニョーシーユエ:56.93キロ
内田タケル:58.28キロ
※内田が計量をクリアできなかったため、試合はキャンセルに。チーニョーシーユエがトーナメント決勝に進出
(C)Zuffa/UFC





























