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【KNOCK OUT】Unlmitedを山口元気代表に訊く─01─「格闘ムエタイ、格闘キックボクシングという流派に」

【写真】クロスポイント吉祥寺新館=ノックアウト・ファイトキャンプの2階、近々稼働し始めるカフェスペースで、インタビューは行われた。既に提携先と選手やパーソナル会員への食事の提供も始まっている(C)MMAPLANET

昨年末12月30日(月)にKNOCK OUTが横浜市中区の横浜武道館で開催したK.O CLIMAX 2024でUnlimitedルール3試合=栗秋祥梧×カルロス・モタ重森陽太×倉本一真バズーカ巧樹×大沢文也が実施された。
Text Manabu Takashima

立ち技ファイター同士の喧嘩の香りが漂うファイトは、会場内にプラスαの緊張感を生みながらも、ムエタイ×MMA、キックボクシング×MMAという2つの異種格闘技戦は、結果的にMMAファイターの圧勝となった。Unlimitedルールは立ち技ファイターがMMAを目指す際に短所を補い、長所を伸ばすことができる。ばかりか組み技系MMAファイターの成長にも役立ち、見ているファンにとってもエキサイティングなファイトになる可能性を秘めている。

そんなUnlimitedルールを考案し、実際に興行のなかに組み込んだ山口元気KNOK OUT代表に、手応えと今後について尋ねた。そこでは90年代に最強に憧れ、最強を目指した山口氏ならではの格闘浪漫に溢れた言葉が聞かれた。


――Unlimitedルールが一大会で3試合組まれてから、1カ月が過ぎました。年末の試合で、どのような手応えを感じましたか。

「手応え……正直な感想でいうと、ちょっと高望みしすぎたかなって(苦笑)」

──というのは?

「カルロス・モタにしても倉本一真選手にしても、ちょっと強すぎましたね。キックの選手に見合ったレベルでやらないと、興行としてはまずかったです。競技としては、良かったですけどね。あれだけテイクダウンをされると、勝てない。対応できないと勝てないよっていうのは、僕のやりたかったことなので。

ただ興行としては、次に続かない。レスリングのトップ、MMAのトップと試合を組んだことに、一足飛びが過ぎたかなっていう思いはあります」

──如何にブレイクに持ち込むのか。そういう展開になった風ではありました。ただ、エスケープで沸く。それは立ち技の選手が、このルールでMMAファイターと戦う厳しさをお客さんも分かっていて、一発逆転があるかもしれないという盛り上がり方でした。

「カルロス・モタに関しては『こいつの打撃、あぶねぇな』と思ってテイクダウンに切り替えましたよね。でもカルロス・モタは凄く面白い選手ですね。RIZINのフライ級戦線で見たい選手です」

──ハイ。MMAでも見てみたいですね。反対にキックやムエタイの選手がMMAで戦うことを考えているのか。それともUnlimitedまでしか考えていないのか。2つのパターンがあるかと思います。

「ハイ。僕としてはどっちでも構わないと思っています。Unlimitedの頂点を目指す選手がいても良い。そこで金が稼げてメジャーになれるだけのUnlimitedになっていたら。この戦いで勝てば、打撃最強だといえます。ボクサーがくれば、テイクダウンをしてパウンドをしてしまえば良い。MMAファイターが来たら、テイクダウンを切って倒せばよい。

それって北斗旗のチャンピオンと同じで。そのなかでウチはプロの興行をやっているのだから、イベントを盛り上げて選手が稼げるようにしていきたい。その意味で、本当のスタートを去年の12月30日に切ることができた。

それに僕が目指すモノが何なのか。それがクリアになってきましたね」

──元気さんがUnlimitedで目指す世界観ですね。

「ハイ。Unlimitedはイベントというよりも流派なんです」

──流派?

「ハイ。さきほど北斗旗という言葉が出てきたのですが、今は空道という名前を用いている大道塾って、格闘空手じゃないですか。僕の場合は格闘キックボクシングなんです。東(孝)先生は空手も投げや寝技に対応できないといけないという考えで極真から大道塾を創られた。

僕にとってキックボクシング、ムエタイってレスラーが組んできても勝たないとダメでしょっていうモノなんです。MMA選手とやっても、勝たないとダメでしょって。柔術家が相手でも、勝たないといけない。それが僕のやりたかったムエタイとキックボクシングで。

90年年代末から2000年代序盤に日本のキックシーンで活躍したランバーは2001年、MMAに転じて修斗世界フライ級(※52キロ)に君臨。PXCでも活躍するなど13勝3敗のレコードを残した。本格的なスクランブルMMAが日本に到来する前夜の活躍時期ではあったが、柔術をしっかりと習得し異次元の打撃を見せるなどMMAファイターとしての完成度も高かった

最強だったから、ムエタイを目指したので。

ランバー・ソムデートM16はMMAをやってもめっちゃくちゃ強かったじゃないですか。アレがムエタイの根底にある……僕の憧れだったんです。

だからMMAに対応できるのが、リアル・キックボクシング。リアル・ムエタイ。そんなもん、知らないっていう人もいるでしょうけど。僕にとってムエタイ、キックボクシングとは、そういうモノなんです。

競技になっているキックボクシングでなくて、僕がやりたいのは格闘キックボクシング。それを道場の数を増やして、同じ流派の人を増やすのではなくて、そのルールのイベントを開いて競技者を増やしていきたい。それが僕の選択でした。

俺が夢を描いているのは、Unlimitedをトーナメント制にしたり、タイトルを設けたりして誰かがチャンピオンになる。それは何も僕のジムの選手でなくても構わないです。その選手がMMAに参戦して、3戦目でRIZINに出てチャンピオンになる。UFCと契約して、UFCのチャンピオンになる。それってUnlimitedっていう流派が強いということになるじゃないですか。レスリングが強い、ボクシングが強いというのと同じで」

──その夢を追うなら、やはりブレイク待ちでなく……。

「テイクダウンを切ることですよね。それももう、そうならないと。ブレイクが早い、遅いっていうのはあっても結局のところはUnlimitedを続けていると、当て勘のある奴が磨かれていくと思います。

MMAを戦う前に寝技に制限があるルールで戦いたい。ファイトマネーが良いから戦いたい。目立てるから……といろいろや理由で、Unlimitedで戦う選手が出てくる。でもUnlimitedで戦っていると、MMAでも当たる打撃が磨かれていくと思います。と同時に、そういうことができる選手が見出されていく」

──そこに期待しています。MMAファイターがボクシング、キックを習う。そしてアレンジする。対して打撃のトップ選手がMMAで当たる打撃、スタンスやステップを生み出す。そのMMA打撃は、万人が使える教科書になるのではないかと。

「組まれたら嫌だ。倒されたくないという想いがあると、MMAで倒せる打撃も磨かれないですよね。もちろんテイクダウン防御の練習は必要だし、寝技の練習も欠かせないです。でも、それができるのは勇気がある選手。今でいうと、それこそが(鈴木)千裕だったのではないかと」

──なるほどです。

「勇気があります、アイツは。反対にUnlimitedで重森は技を出すことができなかった。バカになれる勇気がない。そういう子だと僕は思っているから、あえてUnlimitedを戦ってもらったというのはあります。一皮むけてほしいと思って。重森は技術もあって、洗練されたムエタイの戦いができます。でも、それだけではこれ以上、先を目指すことはできない。

そりゃあテイクダウンがあると、ヒザを狙うのが怖いですよ。だから試合中にヒザを出せ、掴まれても良いから出せと思っていました。ヒザを見せておくと、抑止力になるから。そうでないと、何も変わらない。でも、怖くて出せなかった。そこで出すことができれば、彼のムエタイも変わる。だってムエタイの人間がテイクダウンを切って、首相撲からヒザやヒジで倒すって……めちゃくちゃロマンがありませんか」

──ロマンでしかないです。

「テイクダウンを切れば、首相撲は有効。それはMMAで既に証明されています。それがUnlimitedでもできるはず。そうなればムエタイってすごいって、重森が証明できることになるんです。だからヒザを出すことは、重森に必要な作業でした。ただ『ここで諦めないで、もう1回チャレンジしたい』と本人も言ってくれています。そこは彼にUnlimitedを経験してもらって良かったと思っている部分です」

<この項、続く>

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