【Nexus37】初代ミドル級王座をかけて将斗と対戦。佐藤龍汰朗「試合で勝って、しっかり遊ぶがモットー」
【写真】「海外で試合をして延泊したいんですよ(笑)」自由にMMAを楽しむ佐藤龍汰朗だ。(C)MMAPLANET
28日(木)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるFighting NEXUS vol.37。今大会のメインイベント=初代ミドル級王座決定トーナメント決勝戦で佐藤龍汰朗が将斗(ゆきと)と対戦する。
Text by Takumi Nakamura
佐藤は2023年にパンクラス・ネオブラッドトーナメントミドル級で優勝を果たし、2024年からはNEXUSの初代ミドル級王座決定トーナメントにエントリー。一回戦でヨコヤ・マクレガーに一本勝ち、準決勝で瓜田幸造にKO勝ちして決勝まで駒を進めた。ここまでのMMA戦績8戦7勝1敗、ミドル級期待の22歳に話を訊いた。
――準決勝では大ベテラン・瓜田幸造選手と対戦して、右ストレートでのKO勝利でした。あの試合を振り返っていただけますか。
「すごくやりにくかったですね。瓜田さんは自分の父親よりも年上で、それだけ年齢差がある相手はやりづらかったです。しかもトーナメントの逆ブロックで(マシンと将斗が)SNSでバチバチにやり合っていたのに、自分はそういう煽り合いもやっていなかったので……試合前からなんかやりづらかったです」
――作戦としてはどういう試合をイメージしていたのですか。
「瓜田さんと磯部(鉄心)さんの試合を見て、大体の予想はついていて、瓜田さんが(スタミナ的に)長持ちはしないだろうなと。だからそこまで警戒する部分はなかったし、本当は寝技で削って打撃でいく予定だったんです。ただ思ったより打撃を当てることができて、おそらく瓜田さんが下(テイクダウン)を警戒していたからだと思うんですけど、それで打撃でいったらいけちゃったって感じです。最初だから打撃で倒すことはプランになかったと言えばなかったのですが、自分のメンタルが揺らぐことはなかったです」
――トーナメントを勝ち上がるなかで、どういった部分に成長を感じていますか。
「瓜田さんとやる前に打撃をすごく練習していて、そこは上達したかなと思います。特にバックステップからの右ストレートはずっと練習していて、右で倒せるパンチを得られたことは一つの成果ですね。一回戦で横山(ヨコヤ・マクレガー)さんとやった時はパウンドを練習していてパウンドから一本勝ちできたので、このトーナメントでパウンドとストレートという新しい武器を手に入れられたかなと思います」
――佐藤選手はMMAPLANET初登場ですが、最初に始めた格闘技は何だったのですか。
「小学5年生の時に柔道を始めました。それまで何かしらスポーツはやっていて、中学に上がるにあたって、自分がいく中学に部活がある競技をやろうと思って柔道を選んだ感じです。今はもうなくなちゃったんですけど、川崎に吉田道場の支部があって、中学に入るまではそこで柔道をやって、最終的に柔道は高校を卒業するまで続けました」
――吉田道場出身なんですね。
「はい。自分が出ていた少年柔道のクラスのあとに小見川(道大)さんが練習に来ていたのは何となく覚えています」
――いきなり1VS1の格闘技をやることに抵抗はなかったですか。
「そうですね。逆にコンタクトスポーツをやったことがなかったので、それで柔道に興味が湧きました」
――柔道は自分に合っていると思いましたか。
「どうだろう…そんなに柔道そのものは強くなかったと思います。ただ体は強かった方で、小学生ながらに力はあったし、相手にぶつかり負けしたり、押されたりすることはなかったので、それで続けていくうちに色んな技を覚えていきました。格闘技が好きというよりは新しいことをやるのが好きって感じで練習していました」
――柔道ではどのくらいの成績を残したのですか。
「中学時代は神奈川県の新人戦で3位、高校時代は県でベスト8だったので、パッとした成績は残せなかったです。ただ僕の柔道は見ている人たちからすると印象に残っていたみたいで、よく周りから『お前の柔道は喧嘩スタイルだ』と言われていたんですよ」
――喧嘩スタイル…ですか。
「はい。僕は奥襟を取るのが好きで、その時に相手を殴っちゃうんですよ。そしたら相手もヒートアップして襟を取る感じで殴り返して、殴り合いみたいになるんです(笑)。僕もいざ奥襟を持ったらパワーで相手を振り回すし、お互いヘロヘロになりながら最後は投げるみたいな試合をしてました。あとは足払いも足を蹴っちゃう感じで、当時からカーフキックは得意技でした(笑)」
――こうして話を聞いていると穏やかな雰囲気ですが、昔は血の気が多いタイプだったのですか。
「地元がやんちゃな人間が多いところなので、そんな感じなのかもしれないです。喧嘩っ早い方じゃないですけど、やるときはやるみたいなスタンスです(笑)」
――そんな佐藤選手がMMAに興味を持つきっかけは何だったのですか。
「高校の恩師が柔術やグラップリングでも活躍されていた高橋良治先生なんですよ。実は中学時代の僕をスカウトしてくれたのも高橋先生で、高校3年間はずっと高橋先生に教えてもらっていました。それで高校を卒業するときに高橋先生から『UFCに行くと金を稼げるぞ』と言われたんです。おそらく高橋先生は軽いノリで言ったんだと思うんですけど、僕も『暴れて稼げるなんて最高じゃん!』と思ってMMAを始めました(笑)。だから特にMMAに興味があったわけじゃなくて、髙橋先生の一言がきっかけです」
――それは面白いですね(笑)
「高校では部活が終わったあとに出稽古みたいな感じでエクストリーム柔術アカデミーでも練習してたんですよ。当時高橋先生がエクストリーム柔術に所属していたので。だから高校時代は柔道と柔術を並行してやっていました。それでMMAをやるうえで別のジムでも少し練習したんですけど、ちょっとそこの雰囲気が自分とは合わなくて。それでエクストリーム柔術で練習を続けて、パンクラスでデビューしました」
――現在所属している坂口道場にはどういう経緯で移籍することになったのですか。
「エクストリーム柔術にいた頃から坂口道場には行かせてもらっていて。エクストリーム柔術はあくまで柔術の道場なので、打撃とかMMAの練習がなかなかできなかったし、体格的にもミドル級でやれるスパーリング相手がいなかったんです。それで坂口道場に移籍することになりました」
――今年はNEXUSの初代ミドル級王座決定トーナメントに出場中ですが、ミドル級でこういったチャンスがあることをどう感じていますか。
「正直ミドル級は選手が少なくて相手もいないからウェルター級に下げることも考えていたんですよ。そういうタイミングでNEXUSさんからミドル級トーナメントの話をいただいて。トーナメントを勝ち進めば最終的に3試合やれるじゃないですか。定期的に試合が組まれるということもあってトーナメントに出ようと思いました」
――決勝ではAACCの将斗(ゆきと)選手と対戦します。将斗選手にはどんな印象を持っていますか。
「すごくいい選手だと思います。粗削りだけどポテンシャルが高くて、将来有望な選手だと思います。ただ試合経験とか今までやってきた相手を考えたら、自分と将斗くんとは全然レベルが違うし、まだ僕とやるのは早いと思います。ケガさせないように勝ってベルトを巻きたいです」
――今後の格闘家としての目標を聞かせてもらえますか。
「具体的なことは考えてないですけど、一度はウェルター級で試合をやってみたいと思います。ただ減量が大変そうなので……ミドル級でオファーがあればミドル級でやるつもりです。あと自分はどこかの団体でやりたいというのはなくて、試合のチャンスがあって、お金を稼げればどこでもやります。あとは海外でやってみたいですね」
――やはりミドル級という階級的にも海外の団体で試合をしたいですか。
「いや海外で試合をして延泊したいんですよ(笑)。海外で試合を組んでもらうと、交通費と最低限の宿泊は用意してもらえるので、試合後に数日間延泊して、海外を満喫したいです。海外旅行で交通費が浮くのって相当デカいじゃないですか(笑)」
――佐藤選手は何でも物事を楽しむタイプのようですね。
「そうですね。僕は格闘技は競技であり、エンタメだと思っているんですよ。見る人が僕の試合を見て楽しむように、僕も楽しんで格闘技をやりたいです。僕は試合で勝って、しっかり遊ぶがモットーなので、これからもそのスタイルで楽しみます!」