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【Pancrase341】雑賀ヤン坊達也の挑戦を受けるアキラ「そんなに格闘IQが高くないので苦労しています」

【写真】IQが高くないという自覚があるから、アキラは努力して勝てる。なんでも自覚がない人の方が大変(C)TAKUMI NAKAMURA

31日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE341にて、ライト級キング・オブ・パンクラシストのアキラが雑賀ヤン坊達也を挑戦者に迎えて防衛戦を行う。
Text by Takumi Nakamura

昨年7月の超RIZIN02でトフィック・ムサエフに敗れて以来、約9カ月ぶりの試合でホームリングと言えるパンクラスで防衛戦に臨むアキラ。豪快・豪傑というイメージのアキラだが、ムサエフ戦の反省を踏まえてより細部にこだわる練習を続けてきた。王座防衛、そしてライト級で戦うことへのこだわりについてアキラに訊いた。


――2023年7月のトフィック・ムサエフ戦以来の試合が決まりました。ムサエフ戦後はどのように過ごされていたのですか。

「壮絶に倒されたので、石渡(伸太郎)さんから『脳のダメージを抜くように』と言われて、しばらく激しい練習は控えていました。それで少しずつ練習を再開していきました」

――改めてムサエフ戦を振り返っていただけますか。

「あそこで世界トップの実力を体感したというのはすごい大きな経験だったと思います。試合そのものは2R1分ぐらいでKOされて、結構やられていたと思うんですけど、作戦通りにいった部分・自分の中で結構手応えを感じた部分もあって。僕のパンチがムサエフ選手に当たってちょっと嫌な顔をして、そこから攻めづらそうになったり。パンチを効かせるまではいけなかったですけど、本当にいい経験になりました」

――試合前は後手に回らないところを意識していたのですか。

「そうですね。後手に回らない、引かないというのは決めていました」

――具体的に手応えになったところ、足りないと思ったところはどこですか。

「まずムサエフ選手の打ち合い…というか、打ち合う前の体の使い方だったりとかスピードだったりを意識していて。ムサエフ選手は組みも強いじゃないですか。僕とやったあとの武田光司戦を見ても、武田選手は組めなくて打撃をやらざるをえないみたいな感じで削れちゃっていて。そこは石渡さんの分析で分かっていたんで、あの時は組むという選択肢がなく、打ち合いの方が勝機あると思っていました。実際、倒される直前に僕の右フックがムサエフ選手の顎先をかすめているんですよ。あのパンチは僕の変なクセが出てしまって、あと一歩届かなかったんですけど」

――完全に圧倒されたという敗戦ではなかった、と。

「そうですね。ムサエフ選手が圧倒的な化け物だという感じもなかったですし、1人の人間として戦えるなと思いました」

――あのときは大会の約3週間前に決まった一戦でしたが、キャリア的にそろそろ海外の強豪と戦いたいという考えもあったのでしょうか。

「僕も年齢を重ねてきて、残りのキャリアも長くはないですからね。だからもう本当にチャンス、上に行くチャンスがあればどんどん貪欲にいきたかったので、舞い込んできたチャンス=ムサエフ戦をやろうと思いました」

――あの試合以降はどんなことを意識して練習していますか。

「ガンガン激しいスパーを積むだけじゃなく、悪いところを修正する・伸ばすところは伸ばす。そういう練習ですね」

――今は実践的な練習よりも技術練習の比重の方が多いのですか。

「スパーリングはそこまでガンガンやってなくて週1~2回、他は打ち込み練習・ドリル練習を繰り返していて、それと並行してフィジカルや心肺機能を上げる練習もやっています。ただ……ドリル練習は頭が疲れるので苦手です(苦笑)」

――アキラ選手の試合を見ていて、打ち合いや前に出る強みをどう生かすか、その展開をどう長くするか。そこがもっと上に行くために必要な部分だと思っていたんですよ。

「なるほど、なるほど。結局、格闘技って距離なんですよ」

――おおっ!格闘技は距離!

「………じゃないですか(笑)?」

――なんで急に自信がなくなっているんですか(笑)。MMAは他の格闘技と比べてやることが多いもので、選手によっていろいろな解釈ができる。そこでアキラ選手から“距離”という言葉が出たことが興味深いなと思いました。

「試合はお互いに立った状態で、その距離確認から始まるじゃないですか。そういう意味でも距離は大事ですよね」

――それは昔から意識していたのか、それとも今の練習環境の中で意識するようになったのか。どちらですか。

「昔はそこまで距離や位置取りは気にしてなかったです。それこそデビュー当初は打撃も距離も分からないから、とにかくフィジカルで相手を制圧したいと思っていて、とりあえず近づいて殴る・組んで倒す、みたいな(笑)。実際それが自分にとっては一番の安全策だったんです」

――リスクを負って前に出るのではなく、前に出ることで結果的に勝ちに近づくわけですね。

「はい、僕はライト級でもパワーある方だったので、一旦組んじゃえば組み伏せることが出来たし、修斗時代はリング&ロープだったので、とにかくロープまで押し込む。昔の僕って相手をロープに押し込んでいるイメージですよね?」

――ゴング&ダッシュ!という印象でした。でもそれが相手のレベルも上がっていくうちに少しずつ変わってきたわけですよね。

「そうですね。ただ距離を詰めるだけでは技術的に足りなくなるので、色んな人に教わりながら技術を覚えて。石渡さんに練習を見てもらうようになってから、さらにちゃんと格闘技を教わっている感覚ですね」

――石渡さんの指導はすんなりと入ってきたのですか。

「自分はフィジカルでなんとかしてきたタイプで、そんなに格闘IQが高くないので苦労しています(苦笑)。他の選手のように石渡さんに言われたことをパッと理解して体現することができないので、僕が理解しやすいように、石渡さんがより細かくかみ砕いて伝えてくれて。さっきの話に戻るんですけど、自分でも距離や位置取りは細かく気にしているし、試合中に石渡さんからも細かく指示されます」

――対戦相手の対策とは違う部分で、自分で勝ちパターンがより明確になっていますか。

「そうですね。それにハマったら誰にでも勝てるみたいな感じはしています」

――さて今大会では雑賀ヤン坊選手と対戦します。どのような印象を持っていますか。

「前は組み付かれたら背中をすぐついて負けちゃうイメージでしたけど、12月の粕谷(優介)戦を見ると、自分から(ポジションを)返したり投げにいったり、簡単に背中をつかなくなりましたよね。ちゃんとMMAとして強くなっていると思うので、僕も気合いを入れてやろうと思います。ただヤン坊選手の得意なパターンは分かっているので、しっかり対策を立てて試合を迎える予定です」

――2021年10月以降はRIZINとパンクラスで試合を続けていて、昨年4月にはライト級キング・オブ・パンクラスの統一戦にも勝利しました。パンクラスで戦うことにはどんな想いがありますか。

「やっぱ自分がのし上がってきた、勝ち上がってきた団体なので特別な想いはあります。しかも自分とヤン坊選手の試合はRIZINで組まれてもおかしくない試合だと思うし、そういう試合をパンクラスのメインで出来るというのは僕としてもうれしいし、皆さんに楽しんでいただけるように盛り上げたいですね」

――パンクラス王座の防衛戦であると同時に、日本人ライバルとの試合ということで勝てば前進・負ければ後退というシビアな一戦でもあります。

「僕はちょいちょいライト級日本人No.1は俺だ!と言っているので、そういう意味でも同じ日本人には負けたくないです」

――ライト級は他の階級に比べると日本人は少ない・外国人選手が強い階級ですが、直近のRIZINでも堀江圭功選手や中村K太郎選手がライト級に階級を合わせてきて、選手の駒も揃ってきた印象があります。今のライト級の状況はどう見ていますか。

「少しずつ盛り上がってきているなと思いますね。ちょっと前は海外選手が目立っている感じでしたが、日本人も充実してきたので、これからライト級を盛り上げたいです」

――アキラ選手はライト級で戦うことにこだわりはありますか。

「ありますね。一度フェザー級に下げた時は絶不調だったし。あとは五味(隆典)さんがやった階級でもあるし、ライト級が黄金の階級という意識もあるので、そこでしっかり自分の実力を示したいと思います」

――ライト級で戦う以上は、体のサイズの違う外国人選手にどう勝っていくかも大きなテーマになります。

「ライト級で自分よりも小さい選手は見たことがないので、そこで頑張っている姿も見せていけたらと思います」

――アキラ選手にとっての次戦=再起戦は内容結果を含めて重要になると思います。どのような試合を見せたいですか。

「ヤン坊選手は本当に強い相手なんですけど、そこは『自分が日本人ライト級No.1だ!』と言えるような試合をしたいです。あとはチャンピオンとして、迎え撃とうという感じじゃないですけど、しっかり潰してやろうかなと。これがチャンピオンの強さだぞというものを見せてやります」

――ではこの試合も含め、今後はどのような目標・展望を持って戦っていきたいと思っていますか。

「まずはしっかり目の前のヤン坊選手を倒してベルトを防衛して、また強い外国人と戦っていきたいです。体の小さな僕でもライト級の外国人とやり合えて勝てるところを見せたいです」

――それでは最後にファンのみなさんに向けてメッセージをいただけますか。

「ヤン坊選手も本当に強いので、早く終わるにしろ5分5Rフルにいくにしろ、すごくいい試合を見せられると思います。その上で僕がチャンピオンとしての強さを見せつけますので、皆さんぜひ楽しみにしていてください」

■視聴方法(予定)
2024年3月31日(日)
午後1時00分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

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