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【Fight&Life & RIZIN44】クレベル・コイケ戦決定、前日譚 。金原正徳 「納得いく人間と最後はやりたい」

【写真】灼熱、8月の東京の空のように熱い言葉が聞かれた (C)MASASHI KIKAWA

今月 23日(水)発売予定のFight&Life#98で9月24日(日)に、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44でクレベル・コイケと対戦する金原正徳のインタビューが掲載される。
Text by Manabu Takashima

9日に正式発表された、この対戦。同インタビューはその6日に収録された。まだ、正式発表でないからこそクレベル戦のみならず、RIZINフェザー級戦線、そしてJ-MMA界の未来と金原の心の襞が見られた。

まさに金原正徳✖クレベル・コイケ前日譚といえる金原インタビュー、ここではスペースの都合上、誌面に反映できなかった山本空良戦からヴガール・ケラモフ戦アピールと、7月30日の鈴木千裕の歴史的な1勝、ケラモフ✖朝倉未来戦などについて金原が話したことをお届けしたい。


――まず金原選手に伺いたいのは、4月30日に山本空良選手に勝ったあとヴガール・ケラモフとの対戦をアピールしたことです。

「俺のなかで残り時間が少なくなっている……タイムリミットが迫っていることは分かっているし、ぶっちゃけて山本空良戦が組まれたことに納得がいっていなかったです。残り時間が限られているなかで、自分が強いと認めた選手と戦いたい。そういう気持ちでいて、1年近く試合をしていないなかで、去年の夏も今年の冬も準備はしていました。それに試合のオファーもあるにはあったんです。でも、納得がいく相手ではなかったので断らせてもらっていました」

――つまり試合をしていない間も、オファーはあったということですね。

「ハイ。ただ納得がいく相手でなかったので受けなかった。でも、1年も試合間隔を空けたくなかったから空良君とやることにしたんです」

――ただし納得はしていなかったと。

「彼には申し訳ない言い方になるけど、興味はなかったです。ただ空良君は、これからの環境次第で日本のMMAを背負っていく選手になれる。そういう若い選手と戦うのであれば、変に中途半端な相手と戦うよりもストーリーにもなる。そういう風にも思ってはいて。それでも戦ってみて……いや、やる前から分かっていたことだけど、力の差は感じました。だから自分が本当に強いと認めていて、誰もやりたがらないケラモフと戦うことができれば、まぁ納得もいくし。間隔も空けずに、スコっと最後の勝負をしようと思って、名前を挙げさせてもらいました」

――ただし、超RIZN44でケラモフは朝倉未来選手と戦うことになり、結果としてフェザー級のベルトを巻きました。ケラモフ✖朝倉未来戦の発表前に、金原選手にケラモフ戦のオファーはあったのでしょうか。

「ハイ。あのマイクアピールの当日に、『組むから』という風に榊原(信行CEO)さんからも言ってもらって、そういう方向で話をしていました。ただ7月というタイミングに関しては体のこともあり、ジムもあるので難しかったです。なので僕自身は9月か大晦日という風に要望を伝えさせてもらって。当然ケラモフが俺のために、そこまで待てないのも理解できるし、他の人とやることになっても、それはしょうがないと思っていました。自分ができるタイミングで意中の相手と戦えるって、それはもう運命のようなものだから」

――意中の相手と戦うにしても、満足いく練習ができて、万全の体調でないと試合は受けられない?

「納得して辞めたいんですよね。ビクター・ヘンリーは凄く強い選手ですけど、バンタム級に体重を落としたことで全然、体調が良くなかった。そういう意味でやり切れていない部分が多少ありました。今はフェザー級に戻ってきてメチャクチャ元気だし、言い訳ができないぐらい練習もしています。本当に格闘技も楽しいので、最後のチャレンジがしたい。自分は強さを求めてやってきました。今の数字や人気を求めているのとは違う人種の人間だから。自分が納得いく人間と最後はやりたい。それは思っています」

――つまり納得がいけば、ケラモフが絶対ではなかったと。

「こないだ未来が勝っていたら、それはケラモフではなくなりますよね。そうなった場合は朝倉未来になります。でもケラモフが勝ったことで、そこはケラモフ、もしくはクレベルになりますよね」

――それが最後だと断言できてしまうものなのですか。

「だって僕、引退しようと思ってジムを開いて10年ですよ。辞めようと思ったら、UFCと契約できた。UFCをリリースされて、もうMMAをやってもしょうがないと思ってキックボクシングに出た。でもキックをやったら、MMAが楽しくなっちゃった(笑)。いつも最後だと思っていたけど、もう辞めどころが分からない(笑)。それでも「これが最後」だと思って、いつも試合をやっています」

――だからこそ、本当に意中の選手しか戦いたくないと。

「自分が思い描くプランと皆が求めるモノは違うと思うけど、やっぱり若い子と戦うのは踏み台になるということで。それは、自分の挑戦が終わってからで良いかと」

――踏み台になることも、厭わないのですね。

「最後は踏み台にならないといけないです。自分が認めた次の世代のヤツと戦わないと。『お前に負けたらしょうがない。引退するよ』ってなることで、このスポーツも歴史が受け継がれていくわけですから。山本空良、平本蓮、萩原京平、鈴木千裕のような未来のある若者とやって、負けて終わりたい。もちろん『お前らなんかに、負けねぇよ』という気持ちを持って戦いますけどね」

――なるほど。本来は挑戦されるのではなく、挑戦する立場の強い相手と戦うこと願っているなかで、厳密にいえばフェザー級の試合ではなかったですが、鈴木千裕選手がパトリシオ・フレイレをKOしたことについては、どのように捉えていますか。あの歴史的な勝利で、鈴木選手は発言権を得られたと思いますか。

「ハイ、あって良いと思います。俺、試合にまぐれはない。ラッキーパンチはないと思っています。あのカードを掴んだ時点で、彼には決定権があると捉えています。誰もが掴めるチャンスではないですし、それを掴める人がいる。それが上に行ける人なんです」

――それが鈴木千裕選手だと?

「正直、あの試合に関してはピットブルが舐めていたところはあると思います。でも舐めていたからといって、勝てる相手じゃない。なかなかできることじゃないです。『俺はこの試合は勝てないから、最初から死ぬ気でいく』という選手はよくいますが、いけないヤツの方が絶対的に多いです。ライオンを目の前にしたら、なかなか怖くていけないです。でも、それで行けてしまう強さ。やっぱり、所英男のようなところですよね。こういう競技においては非常に重要なことを持っている人は、凄く少ないです。僕にはできないことだから、凄いなと思います」

――ではケラモフ✖朝倉未来戦をどのように捉えていますか。

「未来が負けるなら、あのパターンですよね。あれしかない。未来はどうしても右フックとカウンターの左ヒザの選手なので、あのハイクロッチで入られると、カウンターを合わせられない。結果、対応が遅れた時にバックを取られてしまう。ケラモフはバックからの攻撃が凄く強いので、流れのなかでRNCを取られることはあると思っていました」

――これは後出しジャンケンなのですが、あのRNCはケージもリングも関係なく、右腕の使い方でミステイクがあったように映りました。

「僕の勝手な感想なんですけど、日本人相手だとあの反応でエスケープができていた。彼の環境で気持ちが良い練習をしちゃうと、アドバイスできる人もいないし、そうなると反応はどうしても遅れる。やっぱり、やられる練習をしないといけない。練習でできてしまうから、その反応で正しいと思ってしまうので。やっぱり自分より強い選手に攻められ、厳しいことをしていると、対処法は身についてきます」

――金原選手が、自分より強い相手に攻め込まれることが練習でどれぐらいあるのでしょうか。

「岩本(健汰)君にしてもそうだし、もちろん青木(真也)君もそう。常にやられている環境にはあります。それにわざと自分がやられている環境を創って、練習をするようにもしています。自分がピンチにならない練習をすることも大事ですが、不利な状況から逃げる練習も大切です。体重は違っていても、上久保(周哉)君にその形でやると、逃げることはできない。彼の強いところで受ける。それが大切になってきます」

――気持ち良い練習と、しんどい練習のバランスは?

「その2つではなくて、3つ意識しています。1つは自分と同じ体格と同じ実力の選手とガチンコで競い合う練習。2番目が、やっつける練習。打ち込み感覚で攻めることができる練習ですね。3番目がやられる練習です。この3つは常に意識しています」

――比重はどうなっていますか。

「やられる練習はどうしても少なくなりますね(笑)。少なくなるというか、そういう相手が少ないので……。10本やって、岩本君と青木君と2本ずつやっても、6本はやっつけられる練習にはならないので」

――打撃もそうですか。

「打撃は違いますね。ただ昔は佐山(聡)先生の所へ行って、掣圏道ですね。桜木(裕司)さんや瓜田(幸造)さんとやることで、一生懸命しがみつくとかして、生み出される技もありました。さすがにパンチは手加減してもらっていましたけど、圧力という部分で凄く学ぶことがありました」

――その結果のMMAファイター人生を送り、今や実力でRIZINという場で評価を受けています。

「それは嬉しいですよ。実力で評価されるって。20年遅れで来たぁ、みたいな(笑)」

※クレベル戦決定までに挙がった平本蓮戦、クレベル戦に対する想いとこれからのフェザー級J-MMAファイター、今後に期待する選手達。そして、計量問題と計量失敗ペナルティに関して金原正徳が語ったインタビューが掲載されるFight&Life#98は8月23日(木)に発売です。

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