【UFC ESPN52】ATTでの練習から国内を考える。中村倫也─03─「同じ志を持って練習仲間が集まるのは──」
【写真】 1カ月暮らしたATTのファイターズハウスから(C)RINYA NAKAMURA
8月26日(土・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるUFC on ESPN52「Holloway vs The Korean Zombie」で、ファーニー・ガルシアとUFC初陣を戦う中村倫也インタビュー最終回。
ATTでの練習、米国での生活を1カ月経験し、これからのトレーニング内容、練習環境について中村がどのように考えているのかを尋ねた。そして韓国で得た──あの技が、MMAで通じるのか。ATTでの試し斬りについて中村が話してくれた。
<中村倫也インタビューPart.02はコチラから>
──今後、日本と米国での練習の比率はどのようにしたいと現時点で考えていますか。
「全部、米国にするということは考えていないです」
──それは米国だけで練習をすると、デメリットが生じるということですか。
「そうですね。組み技は凄く細かく、レスリングなども突出していると思います。ただ打撃の面において、ミットを持ってもらえる人がいない。これも帰国してから日本で練習してみないと分からないところですけど、日本にいるとより細かいコミュニケーションがとれるというのはあります。
やはり食事の問題もありますし。あとは……虫が凄く多い(笑)。練習場所の移動とかを改善すれば、普段の生活はどうしても日本の方が、居心地が良いのは絶対です」
──練習面に特化すると、ATTの経験を如何に生かすのか。どの点を見極めたいと考えていますか。
「これは見極めるというのとは違うのですが、向うで確認できたことがドリルの重要性でした。一つのことにテーマを持って、ずっとしつこく練習を重ねる。1つの技術をドリルで1週間やり続けるということをやってきました。あれは指導者同士が、何を指導していくのかを共有しあっているんだと思います。
それだけやりこんだので、次の週のスパーとかでもかなり自然にその態勢に入れることがありました。ここはいつも練習している仲間に声を掛けて、テーマを持ってドリル練習をして、その動きが自然と出るようになるまで反復したいです。練習の前後なのか、あるいは一コマを使っても良いと思っています」
──そのような練習を日本で行っていく場合、練習パートナー達も同じ意識を持っていないと成り立たないのではないでしょうか。
「そうですね、日替わりメンバーでなくチーム……グループを創ることが重要で。僕のなかでも心当たりはあり、時間的にフルにMMAに生活を捧げているメンバーを中心に声を掛けていこうと思っています。それはアーセンであったり、スソン君であったり。ATTのように人は多くないですが、他にも何人かいるので積極的に声を掛けていきます。
自分は所属ジムがないので、その辺りは上手く考えながら今、お世話になっている方たちに相談しないといけないだろうし」
──所属ジム問題というのは、早急ではなくてもいずれは解決しないといけない課題の一つですね。
「日本のジムに関しては……仲間も含めてメインはKRAZY BEEかなとは、今は思っています。やっぱり仲間ですよね。同じぐらいの志を持って練習仲間が集まるのは、KRAZY BEEだと思っています。そこではまだ整った指導環境があるわけでなく、選手主体の練習になります。
ただし日本はMMAに必要な技術の個々の指導に関しては長けているので、そういう個々の技術を学んで持ち帰る。それをドリルに落とし込んで練習することを、プロ練習以外の時間にやっていこうとかも相談していきたいです」
──志が同じでも、スパーリング面でいえば力の差がある場合もあります。その辺りはどのように考えていますか。
「ATTでスパーリングをやっていると、本当に得意な展開をやり切れないということがありました。すると自分の攻めに関して、良いイメージが創り切れない。『俺はこのサイドを取ると、この展開でここに手を置く』とかっていうことを創っていくことができるのは、競い合いながらも自分の形に持っていける相手とのスパーリングだと思うんです。
まずそのイメージをしっかりと固める。もう1度創り上げる時期が来ていると感じています。そこは日本でやっていこうと思っている皆の協力があって、できると思います。そうやって創ったモノを、またATTのような強い選手が集まっている練習環境で試す。イメージをガッツリと創って体が覚えてから、強い選手にドンドン試していきたいです。
やっぽり米国のジムにいる選手はヒートし易いというのはあります(苦笑)。練習で上を取ってガンガン動いていると、スタンドになった時にもの凄く強いのを当てられたりっていうのがあったので(笑)。そういう意味では日本の方がやり易い面もあります。そういう意味では日本の良さを生かしたうえで、こっちでの練習の良さも落とし込めるようにしたいですね。
でも試合が決まったら、4週間か6週間はこっちでやろうと思います。その方が強度の高い練習ができます。なので日本でやること、米国でやることをしっかりと見極めて、実践していこうと思います」
──では瞑想の場所だけ、気を付けてください。
「アハハハハ。虫との戦いにも、しっかりと適応していきます」
──ところで一点、個人的に興味があることなのですが……。
「ハイ、何ですか」
──韓国のテッキョンで授けられたネッチャギを応用したアウトサイドで蹴るインロー。モンゴルでも試していましたが、ATTでもトライしてみましたか。
「あれ、やっぱり相手は動きが止まります。世界共通ですっ!!」
──では使えそうですか。
「絶対に使えます」
──凄いですね。
「ただし、懐に入り過ぎるとストレートを食らいます。だから組みから離れる時とか、そういう風に使い方を工夫したいですね。ホント、マジで動きを止めてくれるので。本当に決ると面白くて。でも、その面白さが出てしまって……」
──面白さが出る?
「ハイ。『やっぱり、コイツも止まる』っていう余計な思考が自分のなかに出てきてしまって、僕の方の動き出しも止まってしまうんです」
──あぁ、そういうことですか!! 自分も止まってしまうと。
「そうなんです。『うわぁ、止まってくれたぁ』と思って、自分も止まっています(笑)。次にどう繋ぐのか。でもATTという世界中から強い選手が集まってくるところの練習で、確認はできたので。ここはモノにします」