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【KIWAMI01】手塚基伸と5分1Rの短期決戦、石黒翔也─01─「ポイントで勝つことは考えていない」

【写真】5分──サブオンリー&OTだとSUG。KIWAMIはポイントがあるので、白黒はつくが10分や15分とはある意味、別モノの組み技が見られそうだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

19日(日)に千葉市美浜区の幕張メッセ国際展示場8ホールで開催される極~KIWAMI~で石黒翔也が手塚基伸と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

2021年にJBJJF全日本選手権の黒帯ライトフェザー級を制した石黒は、以降ノーギの練習を増やして昨年1月にはコンバット柔術で今成正和を下している

さらには今年2月に行われたUnrivaled02で、元ONE世界ストロー級王者の猿田洋祐を相手ヒザ十字で一本勝ちを収めた。そして今回も再びMMAファイターとノーギで対戦する石黒が、まずはルールの観点から自身のグラップリングについて語ってくれた。


――手塚選手との試合を控える石黒選手です。ここ最近はコンバット柔術も含めてノーギの試合出場が増えていますが、ギとノーギではファイトスタイルも異なっているのでしょうか。

「はい、スタイルは違いますね。まず柔術はギが掴めるので、ギを掴んだ状態からのテクニックが多くなります。ノーギだと掴むところがないし、掴んでも滑るので、そのぶん関節自体をコントロールしないといけなくなるんですよ。自分の場合だと柔術ではガードが得意なので、そこが大きく変わっていまいます。でも、最近ノーギを練習するようになって、ノーギのスタイルが柔術のほうに生かされるようになってきています。そこがすごく面白いですね」

――猿田選手とは2019年の柔術修斗杯(当時は茶帯)で対戦し、ポイントで敗れています。その時から時間も経っているのですが、ギとノーギでは試合展開も大きく変わったのではないかと思いました。

「そうなんです。柔術では、よくデラヒーバやリバース・デラヒーバを使っています。でもノーギでは、リバース・デラヒーバはまだしも、デラヒーバはグリップが無いぶん難しいです。そこで前回の試合は、練習ではよくやっているんですけど――柔術の試合では1回も使ったことがないディープハーフで、潜って足を取りに行きました」

――石黒選手といえば、柔術の試合ではガードポジションを整えてからスイープ→パスを仕掛けるという印象がありました。

「前回のルールは、ほぼサブオンリーだったんですよね。ポイントはあるけど、ポイントを取りに行くと不利になるような感じで。僕の中ではサブオンリーと考えて試合に臨みました。だからと柔術のように、上を取ってからアタックという攻め方はしなかったんです」

――それがマイナス6ポイントに繋がるのですね。

「1回引き込んだ時、相手が全くアタックしてきませんでした。自分としては、『もうマイナス100ポイントになってもいいや』と思って、どれだけマイナスポイントが入っても気にしなかったです。どんな展開になってもサブミッションを極めることを考えていましたから。相手が何を仕掛けてきても大丈夫、と考えていたんですよね。ただ、思いのほか相手が後ろに下がって、攻めて来なくて……それは想定外でした。

でも逆に、そうなると相手のほうが攻めることができなくなります。そこで僕のほうがディープハーフというリスクを負って攻めていきました。ディープハーフって、ノーギだとリスクのあるポジションなんです。密着しすぎて、キムラなど腕関節を取られやすいポジションでもあるので。僕としては、ディープハーフを使って相手との距離を詰め、サブミッションを取りにいく練習はしていました。そういう意味では、自分が考えていたとおりの展開と結果になりましたね」

――想定どおりだったのですか!

「ディフェンシブな相手に対してディープハーフを狙うという練習はしていました。相手が下がってしまうと、遠いほうの足は取れなくなりますよね。でも反対に近くの足に対してディープハーフで潜ってから、足を取りにいく練習をしていたんです。

それがMMAファイターとノーギで対戦するうえでの作戦で。今、MMAでもディープハーフを使う選手が多いじゃないですか。足関節も流行ってきて、見ているとメチャクチャ面白いです」

――するとディープハーフに持ち込められれば……という狙いだったのですね。

「そうです。でも次の極は外掛けが禁止なんですよね。先日の試合ではディープハーフで外から足を掛けていったので、一瞬だけ外掛けになる形でした。去年のムンジアルで、橋本知之さんの試合でもあったように、そこは審判がどう取るかという部分でもあります。ただ僕としては何がアウトで何がOKかは分かっているし、ギリギリなゾーンは自分の得意なところでもありますから、そこでも攻めていきたいです」

――極はSBJJFのスポーツ柔術ルールを採用した、ポイントのあるグラップリングです。その点ではサブオンリーと考えて挑んだフィニッシュの猿田戦とは、また戦い方も異なってきますか。

「変わらないです。次もポイントで勝つ気はなく、極める気マンマンなんですよ。ただ、試合時間が5分と短くて。しかも相手の手塚基伸選手も強いじゃないですか。強い相手を5分で極めるというのは――猿田戦も5分少しで、ようやく極めることができました。次の試合でも極めることは難しいかもしれないけど、極めに至るまでに良いポジションを取っているはずです。だからポイントゲームになったとしても、勝つことはできるんじゃないかとは思っています。

でもポイントで勝つことは全く考えていないですけどね。展開としては、まず僕が下になると思います。相手はMMA選手なので、上を取るのは強いでしょう。そこで僕が下になってから仕掛けて、相手がどう対応してくるか。足関節を警戒して下になってくるかもしれないし、そうなったら僕が上からアタックするか――というふうに考えています」

――IBJJFやADCC、最近のサブオンリーと比較しても、5分1Rはなかなか短いですね。

「5分は柔術だと白帯ですよ(苦笑)。相手は守りも固いと思うし、MMAでは潜ってくる選手じゃないですか。それを僕が崩していくしかないような気もします。ルール的には5分間、上と下が入れ替わり続けるシーソーゲームになる可能性もありますけど、そこで僕が極めて大会を盛り上げたいです」

<この項、続く>

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