【TUF11】第11週 決勝戦は敗者復活組の争いに
ジ・アルティメット・ファイター(TUF)シーズン11も、最終話となる第11週の2時間スペシャルを迎えた。最後の最後で、チーム・オーティズはチーム・フランクリンに変わるドタバタ劇の中、6月19日(土・現地時間)ネバダ州ラスベガスで行われるTUFフィナーレに進むファイナリストを決める準決勝二試合が行われた。
トレーニングセンター内では、ダナの説明のもと、UFC115におけるチャック・リデル戦の契約書にサインをするフランクリン。「2日前にいわれたばかりで、状況がまったくわからないし、選手の名前も知らない」と不安を口にする。
しかし、そんなフランクリンの不安を一掃する心強い味方が登場した。トレーニングセッションで、チーム・フランクリンととも姿を見せたのは、豪華なアシスタントコーチ陣=フォレスト・グリフィン、グレイ・メイナード、タイソン・グリフィンだ。
次戦の相手だけではなく、ライバルチームのコーチまでもが代わってしまったリデルは、戸惑いを隠せず、「正直簡単じゃないよ。これまで一番嫌いな相手との戦いに備えていたのに、代わりはMMAでも最高のヤツだからな。ただ試合になれば、相手を倒すことだけを考えるよ」と語り、複雑な心境を吐露しながらも、気持ちを入れ替えた。
準決勝第1試合は、もともとはチーム・リデルの5位指名ブラッド・タバレスと、6位指名のコート・マクギーによるチームメイト対決となった。ダナは、「難しいな。タバレスのことは好きだが、コートは見るたびによくなっている。正直どっちが勝つかわからない。選ぶのも辛いが、ただ俺はいつでも勝者を予想してきたから、ここではコート・マクギーといっておこう」と、マクギー勝利と予想する。
また、チーム・リデルのジョン・ハックルマンコーチは、「トレーニングを別にしたくはなかった。今でも同じマットの上でトレーニングをしているよ。ただ、スパーをやったりはしないけどね。本当に辛いね。おかしな話だよ」と、チームメイト対決に戸惑いを隠せずにいた。
当のファイター達は、「俺らはチームメイトだ。いつでも一緒に練習してきた」と話すタバレスに対し、マクギーは「スパーもしたし、寝技も一緒にやった。ブラッドがどんなファイターかは知ってるし、もちろんブラッドも俺のことを知っている。よい試合になりそうだ」と、開き直っているようだ。
ここで、ダナとともにアメリカ海兵隊員5名がトレーニング場に現れた。彼らは、海兵流のトレーニングとして、4人が四角形になって行う腕立て伏せや、護身術などを披露、ファイター達もグラウンドテイクニックをレクチャーするなど、技術交流を楽しんだ。
だが、「オクタゴンでは3つの試合の終わり方があるだろう。勝つか、負けるか、引き分けかだ。我々の場合も3つだ。自分が死ぬか、相手が死ぬか、2人とも死ぬか」と語る海兵の厳しい実情を目の当たりにしたファイター達は、大いに刺激を受けたようだ。
そして、始まった準決勝第1試合。1R、タバレスとマクギーは、オーソドックスで向き合うと、まずはパンチの交換から。マクギーは時折り、ロー、前蹴り、左のハイキックを放つと、パンチから組み付き、タバレスをケージに押し込むや、サバ折り+払い腰のような投げでテイクダウンに成功した。
タバレスも素早い柔術立ちでスタンドに戻ると、両者ともパンチのスピードが上がりはじめるも、互いに頭を振り、クリーンヒットを許さない。すると、差し合いからのシングルレッグでマクギーが再びテイクダウンに成功。タバレスはすぐに立ちあがったが、マクギーがややリードする初回となった。
2R、的確にジャブを突いていくタバレスに、マクギーはワンツーから左のミドルを返す。タバレスのローにパンチを合わせたマクギーは、胴タックルでタバレスをケージに押し込むと、片足を抱えたが、タバレスは差し合いからマクギーを突き放した。
打ち合いになると、左右のフックを放つタバレスがパンチをヒットさせるが、マクギーも効果的にローを蹴っていく。
3R、開始からパンチを放っていく両者だったが、続くタバレスのインローがマクギーの急所を直撃。再開後は足を止めて打ち合う場面も見られたが、マクギーの踏み込みに、鋭い左フックを返すタバレスは、ショートアッパーなどを織り交ぜ、パンチをまとめていく。
すると、今度は左フックから右ストレートを浴びせるマクギー。タバレスをケージに押し込むと、ヒザを突きあげたが、そのつま先が今度はタバレスの急所に当たってしまった。再開後、積極的に手を出す両者だが、残り45秒、またしてもマクギーの左ローがローブローとなり、タバレスは苦悶の表情を浮かべる。
そして、再開後の展開は一方的なものとなった。マクギーの左フックで、タバレスがダウンを喫すと、立ち上がったところへ豪快なテイクダウン。タバレスの動きに合わせたマクギーがバックに回るとチョークを極めたが、タバレスがタップをしなかったため、そのまま失神してしまった。
「これぞドッグファイトというべき、激しい戦いだった。お互いビッグショットもかなり決まっていた。素晴らしいファイトだった」と、両者を称えたダナに、リデルも「タバレスは負けず嫌いだから、タップができなかったのだろう」と語り、その健闘を褒めた。
「絶対に勝ちたかった。若過ぎるとかいろいろいわれたが、そんなの関係ない。今はフィナーレに出られることを願うよ」と悔しさを露にするタバレス。TUFフィナーレでの決勝戦進出を決めたマクギーは「言葉にできないよ。とにかく最高の気分だ」と喜んだ。
続く準決勝戦は、ジョシュ・ブライアントと、チーム・オーティズならぬ、チーム・フランクリンのクリス・マクレイだ。
短い期間ではあったが、コーチングを任されたフランクリンは、「クリスとジョシュの初戦の映像を見て、コーチと共に分析した」と話し、第5週で戦い、ブライアントが勝利を挙げた一戦から対策を考えている。
だが、何よりフランクリンを驚かせたのは、「6週で5戦を戦うとはクレイジーだ」と話した通り、今シーズンで5試合目となるマクレイのタフさにあった。過去の試合では、ケージ際の攻防やテイクダウン時にスタミナを浪費することを課題としたフランクリン。いかに無駄な力をかけることなく、相手を抑える、もしくは逃げるのかという点で対策を施すや、「試合の形が大きく変わるとは思えない。ただ、クリスはこれでスタミナを残して戦えるだろう。ファイターとして成長した姿がみられるはずだ」と、フランクリンは期待を寄せた。
また、曲者同士の共同生活も残り僅かとなったが、ここで今シーズン一番の問題児ともいうべきイェイガーが、「いたずらしたい気分だったんだ」と、数名の靴を隠しはじめた。さらには、タバレスが「豆と米を窓から投げてみた」と、プールサイドでくつろぐクレイトン・マキンニーとジェームズ・ハモーティを標的に。続けてイェイガーが花を窓から落とすと、これには、ハモーティが激怒し、イェイガーの部屋へと駆け上がってきた。
ゴミ箱を手に、中身をイェイガーの部屋にばらまいたハモーティ。イェイガーは「俺じゃねぇ」といい、残りの豆と米を部屋中に自らの手でばらまいてみせた。口論が加熱すると、ケイシー・ウスコラも現れ「ケンカなら家の外で受けてやる」と火に油を注いだ。
ここで騒ぎこそ収まったが、マキンニー、ハモーティ、ウスコラの3人は、TUFフィナーレで行われる決勝戦以外のワンマッチでイェイガーとの戦いを切望するように。「みんな俺とやりたいらしいな。ダナから、俺にこいつらの中から対戦相手を選べってリストがきそうだ」と強がり、イェイガーは相変わらずの異端児ぶりをみせた。
長かったTUFシーズン11も、トレーニングセンターでは最後の試合を迎えようとしていた。恒例となったダナ予想は、ブライアントの勝利。「イェイガーを倒したブライアントのパフォーマンスは凄かった。マクレイはノークをレスリングで圧倒したが、ブライアントに同じことができるとは思えない。ブライアントの方が総合力は上、もちろん、マクレイを一度は倒していることも考慮しないといけない。ブライアントを予想するしかないだろう」と語った。
両者抱き合ってからはじまった最後の戦い。互いに距離をとったが、まずは、マクレイがテイクダウンアテンプトをみせるも、バランスを崩したところでブライアントのパンチを浴びる格好になってしまった。
しかし、二度目のトライではブライアントをケージに押し込み、その動きにあわせてバックに付くと、先制のテイクダウンに成功する。スタンドに戻ると、マクレイが左ミドル、パンチから突進すると首相撲からヒザ蹴り。リーチに勝るマクレイは、その後もストレートやアッパー、首相撲からのヒザ蹴りをヒットさせたが、ブライアントも手を返していく。
2R、ジャブを放ったマクレイが組み付き、ブライアントを一気にケージへ。ブライアントが突き放すも、マクレイは再びパンチで突進しながら、今度は細かくアッパーを連打する。態勢を入れ替えたブライアントは、ブレイクを挟むと、マクレイのヒザ蹴りを受けながらも必死にケージへ押し込み、テイクダウンを試みる。
マクギー×タバレス戦に比べると、打撃は粗いといわざるを得ない一戦。ブライアントはマクレイの片足を抱え、ケージに詰めていくと、パンチを受ける際、やや棒立ちになりがちになる両者、疲労の色も見えはじめ、勝負は最終Rへ。
3R、ジャブを伸ばすマクレイに、ブライアントもアッパーからストレートを返していく。組みつけば、首相撲からヒザ蹴りを放つマクレイ。差し合いになると、ケージ際でブライアントの大腿部にヒザ蹴りを入れる。
これを突き離したブライアントだが、パンチの打ち合いからやや雑なスーパーマンパンチを狙ったところで、バランスを崩し、バックを奪われそうに。それでも、クリーン・テイクダウンは許さず、勝負は残り1分半。棒立ち状態から、左フックを連打するブライアントに、“苦しい時のヒザ蹴り”とでもいわんばかりに首相撲からのヒザ一辺倒になるマクレイ――、最後は時間切れとなり、マクレイが判定3-0で勝利を挙げた。
マクレイは「2回目の試合ができてよかったよ。成長できたことを証明できた」と、ブライアントへのリベンジを喜び、気をよくしたフランクリンからは「俺がTUF史上唯一の無敗のコーチだ」と冗談も飛び出した。
「一番の違いはゲームプランだった。素晴らしいゲームプランを用意し、クリスはそれを実行した」というダナ。TUFフィナーレでシーズン11優勝と、UFCとの6桁契約を懸けて争うのは、クリス・マクレイとコート・マクギーに決定した。
「マクギーはダークホースだと思っていた。アトニートの怪我で復活の場を与えた時には反対の声もあったが、見事に力を証明しくれた。クリスはワイルドカードからよく戻ってきた。計5試合、毎週火曜日に戦っていたことになる。信じられないよ」とダナも脱帽する両者の復活劇。「フィナーレまでには、更に成長した姿を見せてくれるだろう」と期待を寄せ、TUFシーズン11の番組は幕を閉じた。