この星の格闘技を追いかける

【OCTAGONAL EYES】ピンクの閃光

2010.04.13

【写真】LA郊外ポモナのダウンタウン、ガラは決して良くない地域の古い建物、そのベースメントで汗を流していた2002年当時のハビエル・バスケス。現在、彼の所属するミレニア柔術はミレニアMMAに名を変え、エクストリーム・クートゥアー級の設備を誇る最新のメガジムになっている。

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※本コラムは「UFC日本語公式モバイルサイト」で隔週連載中『OCTAGONAL EYES 八角形の視線』2009年8月掲載号に加筆・修正を加えてお届けしております

文・写真=高島学

本来であれば、日本時間の日曜日にカリフォルニア州アナハイムで行われる予定だったアフリクション。

ジョシュ・バーネット×エメリヤーエンコ・ヒョードルがメインで、PRIDEや日本の総合格闘技界とも縁のあるファイターが多数出場することもあり、国内でもスカパー系でPPV中継も決まっていました。

しかし、総合格闘技ファンの皆さんはご存じのように、バーネットの体内から禁止薬物が検出されたことで、ステート・アスレチック・コミッションが出場を認めない事態に陥りました。そして、この目玉カードを失ったイベント自体が、キャンセルされるというMMA史上、かつてない規模のドタキャン劇が起こってしまいました。

その注目度の高さに加え、翌週にはUFC101、WEC42が行われることもあり、夏休みを利用して米国MMA観戦を予定していた日本のファン、そして私のような記者も含め、本当に多くの人々に影響を与えた大失態といえます。


その後、ヒョードルの獲得こそならなかったUFCですが、WECも含め、私が今、原稿を書いている時点で、同大会に出場予定だったファイターのうち、9選手の契約が既にダナ・ホワイトより発表されています。

ズッファが獲得したファイターの名前を眺めているだけで今後のタイトル戦線が、楽しみになってくるファイターもいます。

その筆頭が、WECと契約したハビエル・バスケスです。

キューバ移民のハビは、カリフォルニアのハイスクール&カレッジ・レスリングで活躍したのち、ブラジリアン柔術と出合い、当時はまだMMAの開催が認められていなかったため、オープンハンドのパンクレーションで総合デビューを飾ったベテランです。

その後、カリフォルニアのネイティブ・アメリカン地区で開催されてきたKOTCでライト級王座を獲得し、一気に注目を集めるようになりました。ピンク系で統一されたコスチュームと、華麗な寝技を操り、ショータイムと異名を取るようになったハビは、来日を果たし、佐藤ルミナから勝利を収めています。

派手な一本勝ち、そして勝負が掛った試合では堅い試合も実行できる軟膏自在の彼は、その後、UFCへの出場も決定していたのですが、ヒザの負傷で無念の欠場を余儀なくされました。

幾年にも渡り、ヒザの手術と現役復帰を繰り返したハビ。2003年にカリフォルニアを起点に巻き起こったグラップリング技術革命の波にのり、ハビはその名を再び馳せるようになります。

レスリング+従来の柔術技術、そしてエディ・ブラボーが走りとなったラバーガード系の技術を融合させた、所謂カリフォルニアン・スタイルの先駆者の誕生です。

しかし、体の不具合は、それからもハビから貴重な試合出場の機会を奪い続けました。2005年のADCCサブミッションレスリング世界大会では、北米予選を勝ち抜きながら、本戦出場を諦め、翌年には4度目となるヒザの手術を受けました。

そして、この頃に彼の人生、そして格闘技人生を変えるターニングポイントが訪れます。

Xabi 02【写真】今も道衣を嗜むハビ。今時珍しい完全グラップラータイプのファイターだが、そのグラップリングは世界の最先端と伝統が混ざりあった最高級のレベルにある

それがホージー・グレイシーとの出会いでした。ホージーはUFC創始者ホリオン・グレイシーの長女で、彼女との間に二人の子供を儲けたハビは、その間にヒーロン&ヘナー・グレイシーから技術面をアジャストされ、さらに完成度の高いグラップリング技術を誇るようになりました。

今年の1月にハビとスパーリングを行った宇野薫も、かつてはサブミッションレスリングの試合で判定勝ちを収めているにも関わらず、1分間に一度以上の確率で、タップを奪われ続けました。

「グレイシーとの出会いで、ほんの少しの違いを矯正し、驚くほど穴がなくなった」というハビ。一部でハビエル・グレイシーの異名を取るようになった彼が、いよいよメジャー=WECにデビューします。

マイク・ブラウン、ユライア・フェイバー、ジョゼ・アルド、ヴァグネイ・ファビアーノら強豪ひしめく、WECフェザー級戦線にあって、ハビはその独特のグラップリング技術を武器に、青地のオクタゴンにピンクの閃光を煌めかせることは間違いないでしょう。

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