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【EJJC2018】昨年度ライト級3位、岩崎正寛─01─「自分は釘みたいなものだったんです……」

Masahiro Iwasaki【写真】良く考え、言葉にしてかみ砕く。そんな印象が岩崎にはある (C)TAKAO MATSUI

16(火・現地時間)から21日(日・同)までポルトガル・リスボンのパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスでIBJJF主催のヨーロッパ柔術選手権2018が開催される。

昨年の同選手権でアダルト黒帯ライト級3位に入賞した岩崎正寛に対して、さらに上の順位のメダル獲得へ向けて、大きな期待がかかる。世界の強豪との決戦を直前に控え、岩崎は何を考えているのか。
Text by Takao Matsui


――2018年がスタートしましたが、昨年は、どのような1年でしたか。

「色々なことがあった年でしたね。悔しい試合もありましたが、それでも獲れなかったタイトルを獲得することができて、キャリアアップには繋がったと思っています。その一方で、自己満足の練習が結果に反映されてしまいましたね」

――自己満足の練習ですか!? 岩崎選手は、勝つために貪欲でストイックな練習メニューを自らに課しているイメージがあります。

「これまでは、練習をやっているつもりだったということです。自分で練習メニューを考えているので、間違いもたくさんしていますし、世界と照らし合わせた結果、間違っていることが明確に分かりました」

――海外でも練習しているわけですから、その修正やアップグレードは順次できていたのではないですか。

「試行錯誤してきて、どこの戦力差が違って、僕のどこが相手と互角なのか、これからどうしなければいけないかというところの整理整頓ができたのが、昨年の11月とか12月くらいです」

――それまでは整理整頓ができていなかったと。

「飽和していましたね。ありきたりというか、やれば強くなるだろうと思ってやっていました。そもそも何の勝負に勝ちたくて、どんなルールで勝ちたくて、誰に勝ちたいのか。Xを求めるための要素は、すでにあるわけじゃないですか。

でも、それに対して環境があったり、練習相手があったり、流行りのテクニックといった様々な要素が加わってきます。自分がX座標にしていたものが、どんどん移動していって形を変えてしまうんです。それで、やっとここかと思っていたことを、つい最近、気がついたんです」

――微妙な変化に対して、反映できていなかったということですね。

「そうです。たしかに漠然としたものには気づきました。もっとレスリングテクニックを身につけて、スクランブル合戦をやって、階級の違いもあるので相手にここがあって自分に何が足りないのかも把握していました。だけど漠然とスパーをしていても、ただ強いやつとスパーをやっていても、本当に意味があるのだろうかと思い始めたんです。その得た材料をもとに、どうしたいって結論が明確ではなかったんです」

――つまり、強い選手とスパーしていれば自信がつくかもしれないけど、試合で活かすためにどうすべきかの方が大事だということですね。

「難しいですけど、それをやらなければ世界では勝てないです。海外だと考えなくても自然と強くなれる環境にいる選手もいるので、その差は広がってしまいます。後輩の渡辺和樹がグレイシーバッハへ行って感じるものがあって、ここが足りない、自分はこう感じたとか、互いに話し合うことによって、ようやく答えが分かることもあるわけです」

――海外だと自然に修正ができることが、日本では少し遅れてしまうと。

「海外でもっと練習をしないとダメだなと痛感しています。ただ、相手が知らない武器を日本で創るのも大切です。例えば、フリースタイルレスリングの細かい技術。組手争いとか、足首の持ち方ひとつも大切になってきます。

そして、細やかさひとつで勝てるものでもありません。総括した上で使う技術は、100パーセントではないですから。シングルレッグでもヒザを極めながら相手の足首をコントロールして、ステップを踏んで、素早い動きで取らなければいけないというセオリーはあるわけです。それでも、足取って崩してバックに回れば柔術では4ポイントになります。

レスリングのテクニックをそのまま使うだけでは、柔術では勝てません。もちろん柔道のトップ選手の投げ技、レスリングのトップ選手の動きを体験するだけでもアドバンテージはなります。でも、それで柔術で勝てますか?ということなんです」

――明確な答えがない以上、他ジャンルからの柔術への技術の落とし込みは簡単ではないでしょうね。

「うまく柔術で勝つために他ジャンルのテクニックをミックスアップしていき、かつ柔術の常勝集団の強さを分析できなければいけません。そこまで高めていかないと、自己満足の練習で終わってしまうんです。すべての要素をかき集めて、どうすればいいんだろうと思っていた課題が100個あるとしたら、100個すべての不安がなくなるようにしなければなりません」

――それは、時間がかかる大変な作業ですね。

「俺に不安要素が50個あって、世界チャンピオンが45個だったとしたら、5の差で勝負に負けることになります。どんな強い選手でも、不安要素が0ということはないと思いますので、トップとの差があるとすれば、そこでしょうね」

――試合で答え合わせをしてみて、初めて明確な差が分かるわけですね。

「このテクニックで負けたのかという時もありますし、結局、力かよと気づくこともあります。力を出すペースで負ける場合もありますよ。ここは力を温存する場面だと思って力を抜いていたら、相手が一気に力づくで攻めてきて負けるということもあります」

――力で持って行かれると自信がなくなる場合もありますね。

Iwasaki vs Lepri「2017年は、そうしたことを分析するための年でもありました。世界に近づいたという意識もありましたけど、世界チャンピオンのルーカス・レプリと戦わせてもらって、世界の底を実感しました。

深さは分かったけど、広がりは凄かったです」

――広がりの方が、深さよりもやっかいかもしれません。

「それで結局、自分は釘みたいなものだったんです……」

<この項続く>

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