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【Shooto Torao】初のケージ公式戦を主催したTNS山本代表&豊島氏に聞く、ケージの修斗

Torao【写真】ランバーソムデートM16の出場で、修斗初のケージ公式戦大会の空気は変わった(C)TURTLE SPRING

21日(日)、プロフェッショナル修斗公式戦にとって初のケージ大会=闘裸男15 「DIRECTION OF THE CAGE」が、広島県広島市中小企業会館で行われた。昨年10月3日に行なわれた『修斗創始30周年記念パーティー』にて、インターナショナル修斗コミッションならびに日本修斗協会事務局長・鈴木利治氏から「修斗ルールをユニファイドに近づける」という発表がなされた。

【写真】左は豊島孝尚氏、右が山本陽一氏。中国・四国地方の修斗プロモーターとして、グラップリング、アマ& プロマッチ、アマのパウンド導入など地域格闘技に必要かつ、修斗として試行する必要のあるイベントを実践してきた山本氏と闘裸男が修斗初のケージ公式戦の舞台となった(C)TURTLE SPRING

【写真】左は豊島孝尚氏、右が山本陽一氏。中国・四国地方の修斗プロモーターとして、グラップリング、アマ& プロマッチ、アマのパウンド導入など地域格闘技に必要かつ、修斗として試行する必要のあるイベントを実践してきた山本氏と闘裸男が修斗初のケージ公式戦の舞台となった(C)TURTLE SPRING

今年に入ってヒジ打ちなどユニファイドルールで許された攻撃が許されるようになったなか、広島で初めて行われたケージ修斗。

今大会のセミファイナルには元修斗世界フライ級(※52キロ)王者ランバー・ソムデートM16が出場。大阪のマッチョ“ザ”バタフライと対戦し、序盤から鋭い左ローを中心に試合を組み立て、グラウンドで勝負したいバタフライを振り切り、判定勝ちを収めている。

メインでは地元・パラエストラ広島所属の冨樫健一郎が、大阪・直心会の武田飛翔に何もさせず、1RにRNCで一本勝ち。これまでリングの試合では打撃の攻防に終始することも多かった冨樫だが、本来そのベースは柔術。今回の試合では、ケージに押し込んでから相手の動きをひとつひとつ潰し、最後にRNCを極めた試合内容は、修斗のケージ化を象徴するシーンだった。

そんな修斗初のケージ公式戦のプロモーター『TORAO NATION STATE』(以下、TNS)の代表、山本陽一氏と豊島孝尚氏に大会後、今大会の感想と、地方大会のケージ化について話を聞いた。

――まず今回、プロ修斗公式戦興行『闘裸男』で、初のケージ公式戦を開催することになった経緯から、教えていただけますでしょうか。

山本 実を言えば、鈴木事務局長による「修斗ルールをユニファイドに近づける」という発言の前に、私と豊島さんで『TNS主催でケージ大会をやろう』という話をしていたんです。

――それは修斗公式戦としてではなく、ですか。

山本 はい。公式戦ではなく、VTJに近い形ですね。

――ということは、中国・四国地方でも『ケージで試合をしたい』という声が高まっていたのでしょうか。

豊島 もちろんです。今それが世界の流れですから。

山本 我々としては今までどおりリングの試合も必要ですけど、ケージの試合『も』必要なのではないか、と考えていました。あくまで『も』です。

豊島 当時の修斗公式戦はルール上、リングで行なわれるものだったので、修斗公式戦とは別の形でケージ大会ができたらいいね、という話を山本さんとしていました。

山本 そんな時にちょうど鈴木事務局長から、TNSでケージ公式戦を開催できないかという話を頂いたんです。

豊島 もちろん全ての大会、全ての公式戦をケージ化することは、制度の部分でも採算の部分でも、まだ難しいかもしれません。かといって今のMMAの流れを見れば、『修斗公式戦はリングだけでいい』という考えは無くなってきますよね。

山本 実際、我々のところにも選手から『ケージでやりたい』という声が届いていたわけですから。

――豊島さんは元プロシューターで、現在はプロモーターとなっています。ご自身の現役の頃と比較して、こうして修斗公式戦でケージが使用されることに対して、どのような想いを持たれているのでしょうか。

豊島 時代の流れを感じますね。僕たちの頃はリングでやることが当たり前でしたから。でも改めてプロモーターとして今のMMAの流れを見ると、ケージ大会の開催に至るのは当然だったと思います。

――ではTNS主催ケージMMAイベントの案が出ていた際に、鈴木事務局長からユニファイド化発言があったこと自体に対しては、プロモーターとしてどのように感じていたのでしょうか。

山本 その発言に対してどう思っていたかというより、闘裸男で初のケージ公式戦を行なうことになるとは思いませんでしたね(苦笑)。だって鈴木事務局長の発言は昨年の10月、闘裸男広島大会は今年の6月に決まりました。その前に他のプロモーターさんがケージ公式戦を開催するのではないかと思っていて……。

――蓋を開けてみると、闘裸男が初となりましたと。

山本 それはもうプレッシャーになりましたよ(苦笑)。

――今回の会場となった広島市中小企業会館は、広島サンプラザの斜め前にあります。その広島サンプラザは、2003年6月27日に初のプロ修斗広島大会が行なわれた場所です。

山本 私が観客として、メインでライアン・アッカーマンに一本勝ちしたルミナさんに、花道で抱きついてしまった大会ですね(苦笑)。あの広島大会の時は、まだ闘裸男が初期で……アマチュアの試合だけで大会をやっていた頃です。闘裸男でプロ公式戦を組めるようになったのは、2005年からですから。でも、あの大会が原点のようなものですよ。闘裸男でもこれだけのプロ公式戦を組みたい、と。

――そんな原点の地で、山本さんが初のケージ公式戦を開催することになったのは……。

山本 それは偶然です。

――え、偶然なのですか!?

山本 そもそも昨年末にケージ公式戦の話が出てきた時、この広島大会は別の会場を抑えていたのですが、その会場と話をしたら『ケージの搬入は無理です』と言われまして。仕方なく別の会場を探し直したところ、今回の広島市中小企業会館を抑えることができたんです。

でも……広島サンプラザの斜め前だったということに、何だか偶然というか運命的なものを感じました。ただそれほど感傷に浸ることもないぐらい、開催まで大変でしたけども(苦笑)。

――なるほど。では試合の話に移ります。今大会のセミファイナルに出場したランバー・ソムデートM16選手は専門誌に掲載されたインタビューで、ランバー選手が『山本さんから熱心なアプローチがあって、出場を決めた』と発言していました。

山本 私自身がランバー選手の試合を見たかったし、中国・四国のファンにも、トップクラスの試合を見てほしかったんです。何より、私は初めて大会に自分の子どもを呼びましたから。父の日に、ランバー選手の試合を見てもらいたくて(笑)。

――そのランバー選手が開始早々に放ったローキック、マッチョ“ザ”バタフライ選手が仕掛けたオモプラッタをランバー選手がディフェンスした瞬間、会場からは大きなどよめきと歓声が沸き起こりました。

【写真】メインは地元の冨樫健一郎が武田飛翔よりRNCで一本勝ち(C)TURTLE SPRING

【写真】メインは地元の冨樫健一郎が武田飛翔よりRNCで一本勝ち(C)TURTLE SPRING

山本 そうなんです。セミファイナルから、それまでの試合と雰囲気がガラリと変わりましたね。メインの冨樫健一郎選手もしっかり一本勝ちしましたし、良い内容になったと思います。

――改めて、初のケージ大会を終えた今の感想をお願いします。

山本 とにかく……疲れました。初めてということで、いろいろドタバタもありましたし。でも、修斗初のケージ公式戦ということで、修斗もリングだけじゃなくケージもやる、ということが分かっていただけたと思うんです。それと同じく、地方プロモーターでもこんなことができるんだ、と思ってもらえたら嬉しいですね。

――これまでケージ大会を行なううえでは、採算性の問題も挙がっていました。今回の大会は……。

山本 我々もケージ大会の現実が分かりました。ファイトマネーのことを考えれば、次回はランバー選手のような元王者クラスの試合を組むことは難しいかもしれません。試合数も少なくなるでしょう。それだけケージを用意することにはお金が掛かります。でも今回は協会の資金援助もあり、TNSと協会の協力のもとに開催された大会です。これからも条件が揃えば、闘裸男でケージ公式戦を開催したいです。

豊島 修斗もいろいろ変わっていくと思います。数年前に、ケージで修斗公式戦が行なわれるとは誰も想像していませんでした。だから我々が現時点で想像していないようなことが、何年後かに行なわれているかもしれない。今後、何が変わるか具体的には分かりません。でも、山本さんも言われているとおり、地方のプロモーターでもやってできないことは無いと思うんです。

――分かりました。次回の闘裸男は9月21日、東京・新宿FACE大会となります。

山本 次回はケージではなくリングによる修斗公式戦を行なうことになります。しかし闘裸男だからといって、中国・四国地方のプロシューターを中心とした興行ではなく、東京の選手に出てもらって、我々なりのマッチメイクを見てもらいたいと思っています。よろしくお願いします。

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