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【Interview】リコ・チャッパレリに聞く、フォークスタイル・レスリングの神髄、フリースタイルとの違い

Rico Chiapparelli  in R-1 gym【写真】カレッジレスリング、フォークスタイルとは何なのか、リコ・チャッパレリが語ってくれた(C)MMAPLANET

「フリーやグレコでなく、カレッジスタイルを経験してきたから米国人レスラーはMMAに馴染みやすい」。そんな意見をリコ・チャッパレリの口から初めてきいたのは、1998年のことだった。

当時、彼の言っていることがまるで理解できていなかったが、UFC人気が急激に上がり、世界のMMAがケージ+トップ重視になった頃から、ようやくその真意をなんとなく理解できるようになってきた。NCAAなど米国のカレッジレスリングの試合を目にすると、それはまるで打撃のないMMAに見える。ただし、フォークスタイルと呼ばれるグランドコントロールに優れたレスリングを日本で体験することはできない。

6月某日、Team OTOKOGIという日本を代表するMMAトレーニング・チームで組技を指導するネクサセンス代表・植松直哉――日本を代表するグラップラーが、その神髄を確かめるべくLA近郊イングルウッドのR-1ジム、リコ・チャッパレリの下を訪れた。

1987年にNCAA D-1を制し、アイオワ大で名将ダン・ゲイブルの指導を受けたチャッパレリは、ヘンゾ・グレイシー門下グレイグ・キューカックの下で柔術も学び、rAwチームというレスリング上がりのMMA集団を創った。その性格からか、あまり表舞台に現れないチャッパレリだが、誰もがその実力を認めている。チャッパレリを通じ、植松は亀返しなどグランドコントロール、そしてテイクダウンの指導を受けフォークスタイルを肌で感じた。

この訪問の模様は8月12日発売の月刊秘伝に掲載されるが、その際、リコが語ったフリースタイルとフォークスタイルの違い――をここで紹介したい。レスリングが相手を組み伏せるコンバットスポーツだった時代のエッセンスを受け継ぐ、カレッジレスリング、フォークスタイル・レスリングの神髄とは。

――NCAA D-1王者だったリコですが、日本人にとってレスリングとは五輪で行われているフリースタイルであり、グレコローマンを指します。カレッジレスリング、いわゆるフォークスタイル・レスリングの知識をあまり持っていません。フリースタイルとカレッジ、どのような違いがあるか説明してもらえますか。

「フリースタイルのようなものなんだ。ほんと、変わりはない。ただ、ペースがゆっくりしている。それはよりコントールが重視されているからなんだ。どの国にだって、ビジネスの事情にあったレスリングがあるだろう。日本ならスモー、我々はフォークスタイル、ヨーロッパのキャチ・アズ・キャッチ・キャンからの流れだ。ピン・コンビネーションのね。フリースタイルとの違いは、よりコントロールを重視し、ライディングタイムが与えられ、何よりもエスケープ・ポイントが設けられている点が大きいだろう。それとリバーサリングもね。下になっている人間が上になると、テイクダウンと同じだけポイントが入る。

テイクダウンをした時に、一気にピンにいくのがフリースタイルで、フォークスタイルはじっくり攻める。パーテルでも下を選ぶ選手が多い。立って向き合い、離れると1P入るからだ。そういう戦略が成り立つんだよ。フリースタイルにパーテルがあった時は、皆バックを選んでいたはずだ。その方が圧倒的に有利だからね」

【写真】アイオワ大時代のリコ・チャッパレリの雄姿。「ダサいシングレットを着ないといけなかったんだ」と、大学卒業後トップモデルとして活躍していた彼は当時を笑って振り返る(C)IOWA University

【写真】アイオワ大時代のリコ・チャッパレリの雄姿。「ダサいシングレットを着ないといけなかったんだ」と、大学卒業後トップモデルとして活躍していた彼は当時を笑って振り返る(C)IOWA University

――同じキャッチ・アズ・キャッチ・キャンがルーツでも、ポイント方法が違うので、スタイルも変わっていったということですか。

「技術的な面でいえば、フォークスタイルは抑えている時に腕をクラッチしちゃいけない。だから腕力でなく、ボディで相手をコントロールする必要がある。フリースタイルは腕を組むから、そこから攻防が少ない。組まれた方もクラッチを剥がすのに懸命になる(笑)。フォークスタイルを戦ってきた米国のレスラーは、MMAになって打撃有りでも相手をコントロールできるんだ」

――なるほどッ!! ボディで相手を抑えることができるので、余った手でパンチを入れることができると。ずっとMMAを見てきたのに、リコに言ってもらうまで分かっていませんでした。ベン・アスクレンはNCAAでは2度優勝していますが、五輪ではメダリストではありません。でも、コントロール力は五輪メダリストよりもあるということですね。

「フリースタイル・レスラーは、グラウンドのコントールなんてできないよ。彼らがアスクレンより劣っているんじゃない。そういう競技のなかで戦ってきたんだから、当然なんだよ。フリースタイル・レスラーは、相手が立ち上ることを気にする必要がない。多くのコンバットスポーツは、攻めることばかりに重点が置かれるようになった。だから、投げて立ち上がることを気にする必要はない。

フォークスタイルは立ち上がられるとポイントを失うから、立たせないようディフェンスが発展している。凄くテクニカルなんだ。殆どの人が理解できないけどね(笑)。フリースタイルやグレコの連中は、腕を組んでいないと相手を抑えることができない。ブラジリアン柔術のグラウンドが優れているという意見が多いけど、柔術家は胃で相手をコントロールすることはできないんだ。だから、スポーツ柔術ではフィニッシュにいくまでの動きに、セルフディフェンスとはなりえない奇抜な動きが見られるようになった」

<この項続く>

植松直哉に亀返しを指導した技術解析など、カレッジレスリングが特集された月刊秘伝は8月12日の発売となります
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