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【Interview】リコ・チャッパレリ<02> 「フリースタイルは、柔道が辿ってきた道を辿ろうとしている」

Rico Chiapparelli  and Naoya Uematsu【写真】植松直哉とリコ・チャッパレリ。個人レッスン後、植松が日本に招待するのでセミナーを開いてほしいと伝えると、「日本は遠いからいいや」と笑顔で語っていたチャッパレリ。レスリング&MMA界の仙人と化しているが、彼の技術をこのまま埋もれさせるのは、格闘技界にとって損失だ(C)MMAPLANET

12日発売の月刊秘伝に掲載される――カレッジレスリング・レポート。日本を代表するグラップラー、そしてMMA組技コーチの植松直哉が、フォークスタイル・レスリングの達人リコ・チャッパレリの下を訪れ、亀返しの指導を受けた。その際、チャッパレリが語ったフリースタイルとフォークスタイルの違い――。

前編に引き続き、後編では1987年にNCAA D-1を制し、バルセロナ五輪候補だったチャッパレリが、コンバットスポーツして戦いに勝つことだけから、見て楽めるエンターテイメント・スポーツへの変化に際し技術が変わる、カレッジレスリングがレスリングらしさを残すことができた理由、そして七帝柔道にも言及する。

<リコ・チャッパレリ インタビューPart.01はコチラから>

――競技柔術ではフィニッシュにいくまでの動きに、セルフディフェンスとはなりえない奇抜な動きが見られるようになったというリコの意見、本当にその通りだと思います

「ただね、レスリングも同じで、本当に重要な動きばかりしていると、ブーイングや『もっと動け』って野次られる(笑)。フリースタイルでもフォークスタイルでも、スモーでも同じだろう。柔術、サンボ、柔道も同じだ。だから、柔道も投げ優先で、一つの投げや30秒で勝負が決まるようにルールは変わってきた。今のフリースタイル・レスリングがその典型だね」

――フリースタイル・レスリングは、ほぼグラウンドの攻防は見られなくなりつつあります。

「そう。フリースタイルはコンプリートなレスラーでなくても良いんだ。フォークスタイルは、コントールが重要になってくるから、レスラーとしてよりコンプリートだ。フリースタイルは、柔道のようになってきた。いや、柔道が辿ってきた道を辿ろうとしているという表現の方がしっくりくるかな。

柔道は観客が見て、楽しめるスポーツになっただろう? 寝技が続くことはない。柔術のように足を一本抜いて、観客がわくなんてこともない。そういうビジネスベースに乗ったんだよ、柔道もフリースタイルも。ビジネスベースに乗ったという点でいえば、カレッジレスリングは米国最大のレスリング・トーナメントなんだ。

USオープンなんかよりもずっと大きい。いってみれば、世界最大のレスリング・トーナメントなんだよ。そういうビジネスベースに乗って、カレッジのルールだって変化が合ったよ。けれども、フリースタイルのように根幹が変化したり、目まぐるしく変わることはなかった」

――フォークスタイルは古くからのレスリングのエッセンスを残しているということでしょうか。

「アメリカのエッセンスを残しているんだ(笑)。4年に一度、注目されるレスリングよりも、毎年盛り上がるレスリングの方が人々だって夢中になれる。アメリカ人にとってレスリングといえば、カレッジスタイル。フォークスタイル・レスリングのことを言うんだ」

――米国の国民性だと、五輪でメダルを取ることに躍起になり、そこをファンのサポートするように感じるのですか。

「伝統だからだよ。強烈にサポートする州も残っている。世界選手権や五輪レスリングには、彼らがやっていけるフォームが必要になり、レスリングは形を変えたんだ。一方、カレッジの場良いはオクラホマやアイオワだと、カレッジレスリングの試合に1万5000人以上の観客が集まる。

彼らにとって、米国代表なんて関係ない、アイオワ大やオクラホマ州立大の方が大切なんだ。カレッジフットボールと同じだよ。ファンの興奮度は、レスリングの世界選手権とNCAAは全く違う。そういうことだから、カレッジはスタイルを大きく変える必要がなかった。これだけ人気があるんだからね。柔術もそうだ。寝技を喜ぶファンがいるんだから、柔道のようにはなっていない」

――フリースタイルは、レスリングとして完璧でないと言われましたが、技術的にも失っているモノが多いということでしょうか。特にグラウンドでは。

「ほとんどのケースでね。ライディングからピンへの動きにもっと余裕を持たせないと。1秒や2秒で、動きが遮断されるような展開ばかりだからね。とにかくポイントが入ると、人々が喜ぶと思っているから、押し出しのようなルールを制定したこともあった。柔道と同じだ。みんな一本が見たい、ピンが見たい、MMAならKOが見たい。柔術ならサブミッションだ。そういう要求にルールがすり寄っていくのは、どのスポーツに見られることなんだ。

【写真】ホールディングダウン(抑え込み)の際の重心を置く位置を植松直哉に指導するリコ・チャッパレリ(C)MMAPLANET

【写真】ホールディングダウン(抑え込み)の際の重心を置く位置を植松直哉に指導するリコ・チャッパレリ(C)MMAPLANET

カレッジでも勝つためにテイクダウンだけを目指す人間もいる。テイクダウンディフェンスを磨いてね。アイオワ大時代、倒されて立てなかったから俺達の時代はNCAAを制覇できなかった。俺達はスタンドでアグレッシブなレスリングをしていた。それがダン・ゲイブルのやり方だったんだ。俺はそうじゃないだろうって思っていたけどね(笑)。

トップからは強かったけど、下になるとそれほどでもなかった。ホクラホマ州立大はレッグライディングっていうイメージだったな。そんな風に大学の特色もあったよ。ポイントがある限り、皆が最も効果的な攻撃を模索するんだ。本来はそれがテイクダウンからピンを取ることなんだけど……、それも相手あってのものだからね」

――ところで、今回は植松直哉氏がフォークスタイル的なグラウンドコントールをリコに習いたいと訪れ、亀返しのテクニックを指導しました。

「テイクダウンの指導はよくしたけど、ああいうことを聞いてきた日本人は初めてだったよ」

――植松氏は現役を退いた今も、時折り七帝柔道という高専柔道の流れをくむ、寝技が残る柔道の試合には出場しています。そして七帝柔道には引き分け要員的な選手がいて、彼らはドローに持ち込んで勝ち残り戦から、実力者を外していくために戦っている選手がいて、いわゆる亀の態勢が非常に頑強なんです。

「ハハハハ。それは競技者じゃないな。勝利を目指さない戦いなんて……(苦笑)。強い人間と戦い、跳ね返されることで成長できる。それを最初からドローで良いというのは、あんまり考えられない思考だな。なぜ、試合場にいる? ドローを狙うため? アメリカでは考えられないなぁ。それでタートルポジションが頑強になったのか……、なるほどなぁ(笑)。う~ん、ギがあれば特にそうなのかもなぁ。ノーギじゃ、耐えられないだろうな。ドローはアメリカじゃ『kiss your sister(何も面白くない)』って言われているんだ。俺もシスターでなく、他の女の人にキスしたくて生きてきた。ハハハハハハ」


植松直哉に亀返しを指導した技術解析など、カレッジレスリングが特集された月刊秘伝は8月12日の発売となります
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