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【OCTAGONAL EYES】五味隆典

2010.07.03

Gomi
【写真】五味が初めて海外で試合をしたのは1999年5月のハワイ、スーパーブロウルで行なわれた修斗公式戦。ステファン・パーリングを相手にリアネイキドチョークで勝利しているが、米本土での勝利はない

※本コラムは「格闘技ESPN(旧UFC日本語モバイルサイト)」で隔週連載中『OCTAGONAL EYES 八角形の視線』2009年10月掲載号に加筆・修正を加えてお届けしております

文・写真=高島学

今年は1月2日(現地時間)にUFC108が開催されました。残念ながら、私は現地でなく家内の実家がある名古屋で、ライブストリーミングを拝見させてもらいましたが、PPV中継枠で五味隆典選手の顔が抜かれ、過去のPRIDEでのファイトの模様が流されました。

噂に上ったファイアーボールキッドのオクタゴン登場が、ついに実現に至るというわけです。

五味選手とUFC。修斗~PRIDE~戦極で戦ってきた姿を間近に見ていた日本のファンのみなさんにとっては、チョット新鮮な顔合わせのように感じられかもしれませんが、両者の接点はもう随分と以前のことになります。


01年12月に修斗世界ウェルター級王座を獲得した五味選手は、ホームリングでの防衛戦を行いながら、UFC参戦を視野に入れていました。

その五味選手が、初めてUFCをライブで見たのは2003年4月にマイアミで行なわれたUFC42でした。ライバルであり、親友である須藤元気選手が2度目のUFC参戦を果たし、ドウェイン・ラドウィックと戦った大会、メインはUFC世界ウェルター級王者マット・ヒューズ×ショーン・シャーク戦でした。

訪米以前から、修斗を通してUFC出場を打診していた五味選手サイドですが、当時UFCライト級戦線では、前述した須藤選手以外に、宇野薫選手が世界王座決定戦に出場するなど活躍していました。

須藤選手、宇野選手に通じるズッファが求める日本人ファイターは、サブミッション・ファイター、あるいは寝技で仕留めることができる選手でした。

この事実を裏付ける話があります。五味選手出場を後押ししていた修斗関係者に対し、UFCからの返答は「ルミナ・サトーか、ミシマなら」というものだったというのです。

ボクシング+レスリング、そしてパウンドという五味選手のスタイルは、多くの米国人が持つモノ。なら、わざわざ日本から呼ぶ必要はない。

さらにいえば、日本人選手同士は米国での対戦を嫌うということで、イベント開催数が年に5回だったUFCでは、3人目の日本人を雇い入れる余裕はありませんでした。

ビジネスとしても、ファイトとしても、まだ発展途上にあったUFCが下した判断も致し方ないでしょう。

そんな大人の事情を理解しつつも、PRIDE武士道発足以前、修斗王者になっても常に前進したい若者は、居ても立っても居られない気持ちを内包し、フロリダの地に立っていました。

試合当日、当時ズッファのオフィシャルカメラマンだった長尾迪氏らと一緒に、昼食がてらビーチサイドのストリートへ出かけ、1時間ほど自由行動を取りました。

私はショッピングする予定もなかったので、ビーチで大西洋の高い波を眺めていたのですが、その話をすると五味選手の顔が変わりました。「マジですか? 俺だってビーチに行きたかったけど、元ちゃんの試合に来ているんだから、そんな観光気分になっちゃいけないって思って行かなかったのに……。それなのに……、行っちゃうの?」と、憤懣やるかたない表情の五味選手。

そんな昼の出来事は関係ないのでしょうが、会場入りし、頭のてっぺんに髪の毛が残っていたダナ・ホワイトに肩を組まれても表情は硬いままでした。いつも日本人選手には笑顔でウエルカムのジョー・シルバが、ちょっと複雑な笑みを浮かべると、いよいよ彼の目には厳しさが増していきました。

きっとUFCに出場する機会はすぐには訪れないと、五味選手は感じとっていたのでしょう。

そして、盟友・元気の敗北を受け、「人種間の争いですよね。アレは怖かったです。元ちゃんの試合なんて、USAコールはラドウィックを応援しているんじゃなくて、アメリカという国を応援していますよ」と語った五味選手、その豪快なイメージの裏にある繊細さが数多く垣間見えたマイアミ滞在でした。

実際、初めて一人で飛行機に乗って太平洋を越えて、イミグレを通ったことに関しても「きつかった。プライベートな部分で一皮剥けたかなって。意味のある一歩だと思います」と言っていました。

あれから7年、BJ・ペンとのハワイの死闘で敗れ、PRIDE武士道で世界の73キロの頂点に立った彼が、PRIDE活動停止後、時折しか見せなくなっていた、あの触れるモノ全てを傷つける刃のような輝きを、全開する時がもうすぐやっています。

過去2年の五味選手と、UFCライト級の進化を考えると、簡単なチャレンジにならないことが予想されます。

ただし、今年で32歳を迎える五味隆典にとって、これが最後の大勝負になることは間違いありません。守るより攻めることで、最大限の力が発揮できる五味選手の挑戦は、私にとって2010年UFC最大の楽しみです。

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