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【ONE109】旧友・江藤公洋を無観客の地元で迎え撃つ、アミール・カーン「綺麗な顔のままで引退する」

Amir【写真】キャリア12勝6敗、ONE以外での実戦経験はデビュー戦の1試合のみ。ほぼ生粋のONE育ちといえるアミール・カーン(C)MMAPLANET

本日28日(金・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE109「King of the Jungle」で江藤公洋と対戦するアミール・カーン。

シンガポール人ファイターとして、ONEと共に成長して一昨年11月には世界ライト級王座に挑み、昨年はワールドGPに参戦した。

そして喫した3つの敗北。かつての練習仲間、江藤との試合を前して心身ともにリフレッシュされたというカーンの話を訊いた。


──地元での試合が無観客試合となりました。

「もちろん家族や母国のファンの前で戦えることを楽しみにしていたよ。でも、こういう事態になったんだからしょうがない。選手は試合をするだけだよ」

──1万人収容のアリーナに観客がいないで、ケージのなかで戦う。想像ができますか。

「きっとさ、パンチが一発当たるたびにゴツン、ガツンっていう音が鳴り響くんだよ。そんなことはジムでの練習でもないからね。でも、客の声がないってスポーリングみたいだよね。そんな経験、誰もができるわけじゃないからとても貴重だと思っているよ。それに過去最高にコーナーの指示がしっかりと聞こえる試合になるだろうね」

──ところでアミールは2018年11月にエドゥアルド・フォラヤンと世界ライト級王座決定戦を戦い、そのまま年が明けてワールドGPに出場し、初戦と代役出場となった準決勝で敗退という苦い経験をしました。

「本当に慌ただしかった。世界戦に敗れ、すぐにワールドGPのためにトレーニングに戻った。本来なら、休息を入れるなどもっとスマートに準備をするべきだったよ。ちょうど、あの頃はイヴォルブではヘッドコーチがいない時期で、自分で全てを決定しないといけなくて……何もかも詰め込んで急ぎ過ぎていた。

そのうえ1回戦で負けたけど、代役でセミファイナル出場が決まってさ──ローラーコースターに乗っているような激しく目まぐるしい日々だったよ。ベルトが欲しくて、ファイトよりもベルトを見ているような精神状況になり、自分を追い込んでいた。

あの3試合とエブ・ティン戦を経て、今の僕はベルトのことは考えてない。自分自身を見直すことができた。いかに試合で自分の動きを出せるのか、そういう風に気持ちに余裕が持てるようになったよ」

──11月にそのエブ・ティンを破り、1年2カ月振りの勝利を手にすることができました。

「凄く接戦だったけど、再び勝利を手にすることができた。いつだって試合は負けられいなかで、本当にもう負けられないという状況だったから勝てたことは良かったよ。でも、自分の動きに満足できなかった。

あの試合のあと、スペインで6週間バケーションを取って、ようやく落ち着きを取り戻すことができたんだ」

──おお、スペインですか。シンガポールや東京とは、まるで時間の流れが違いますよね(笑)。

「そうなんだ(笑)。午前11時からワインを飲んで、その後は昼寝の習慣がある。山の中を走ったりして、心の底からリラックスできた。シンガポールでは味わえない……心を休める時を持てたよ。過去4年、あんなにくつろいだことは一度もなかったしね。そして過去に捉われてもしょうがないことに気づいたんだ。今の僕は心身ともにリフレッシュできているよ」

──そのなかで江藤選手との試合を迎えます。

「スペインから戻って来て、キミヒロと戦うことが決まった。僕らは一緒に練習してきた友人だったから、このオファーには正直、驚かされたよ。でも僕はファイターだ。イエスと答えるしか選択肢はなかったよ」

──江藤選手の長所も分かって、試合に応じたわけですね。

「そうだね。彼は僕にレスリングを教えてくれていたからね。素晴らしいレスラーだよ。僕がエドゥアルドに勝てるようサポートしてくれた。ただ、ケージに入ると戦うのが僕らの仕事だ。試合が終われば、フレンドに戻る。

あの韓国人選手と戦った試合が、キミヒロの実力通りの内容だったとは思っていない。キミヒロはもっと良い選手だからね。あの時、彼は良い試合をしよう、皆に良いショーを届けようと思っていたに違いない」

──ただし、もう負けられない状況ではもっとソリッドな戦略で勝負に徹することが十分に考えられます。

「簡単な試合にはならないよ。キミヒロのことを軽視することは絶対にない。フェイクを織り交ぜ、僕をテイクダウンしようとするだろう。どんな局面でも気を抜くことなく戦うよ。僕だってキミヒロに負けないだけ、勝ちたいと思っているからね。

僕にはリーチ・アドバンテージがあるし、距離は僕のモノだ。去年とは違い、今の僕は自分が見えている。何を試合でやるべきか、もう迷いはないよ」

──アミールは距離のコントロールに長けていて、相手の攻撃を受けない選手です。

「綺麗な顔のままで引退したいんだ(笑)。僕にとってベストファイターは、ダメージを負わない選手のこと。戦ううえでのセオリーは殴られずに殴る──だよ。それがマーシャルアーツだからね。

ただし、エブ・ティン戦では貰わない意識が強すぎて、自分の攻撃も少なかった。攻撃が当たらない距離にいることは、僕のレンジで戦ったことにはならない。自分の距離より、少し遠かった。キミヒロとの試合では、そんなことなく僕のパンチを当て、彼の攻撃を受けないで戦うよ」

──では、日本のMMAファンに一言メッセージをお願いします。

「僕はK-1 MAXとPRIDEを見て大きくなった。凄く日本の格闘技が好きなんだ。だからキミヒロと戦った後は、僕のことも皆に応援してほしい」

■ONE109対戦カード

<ONE Super Seriesキックボクシング世界女子アトム級選手権試合/3分5R>
[王者]スタンプ・フェアテックス(タイ)
[挑戦者]ジャネット・トッド(米国)

<ONE Super Seriesムエタイ世界ストロー級選手権試合/3分5R>
[王者] サムエー・ガイヤーンハーダオ(タイ)
[挑戦者]ロッキー・オグデン(豪州)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
アミール・カーン(シンガポール)
江藤公洋(日本)

<ウェルター級(※83.9キロ)/5分3R>
秋山成勲(日本)
シェリフ・モハメド(エジプト)

<女子ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ティフェニー・テオ(シンガポール)
三浦彩佳(日本)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
山口芽生(日本)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
トロイ・ウォーセン(米国)
マーク・アベラルド(ニュージーランド)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
シャノン・ウィラチャイ(タイ)
ホノリオ・バナリオ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
リトゥ・フォーガット(インド)
ウー・シャオチェン(台湾)

<ウェルター級(※83.9キロ)/5分3R>
ムラット・ラマザノフ(ロシア)
ペ・ミョンホ(韓国)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ラディーム・ラフマン(シンガポール)
ジェフ・チェン(カナダ)

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