【Bu et Sports de combat】ベトナム武道かつ国家的格闘競技、ヴィエボォダオ（ボビナム）って何??
【写真】 現在では米国やフランスなど、ベトナムから移民が多い国でもボビナムの競技界は行われているようだ(C)MMAPLANET
現在発売中のFight &Life Vol.75ではヴェトナム・ホーチミン紀行として、現地のMMAと柔術、そして伝統コンバットスポーツに関してレポートされている。
ONEが立ち技だけのイベントを開き、今もMMAが認められていない国に80年の歴史を持つヴィエボォダオ＝ボビナムという格闘技がある。
突き、蹴り、蹴り足を掴んでの崩し、さらにシザースのような独特の動きもみられるベトナム流格闘技の歴史と今をウェン・ノンウィン、ボビナム実行委員に尋ねた。
そこには社会主義体制下で成長する民族格闘技が存在した。
──まずボビナムの歴史を教えてもらえますか。
「ボビナムは1938年にグェン・ロックによりハノイで誕生した格闘技です。伝統的なベトナムの格闘術が基礎となり、ボクシングやムエタイをコンバインされました」
──ファイティングとデモンストレーションの2つのスタイルがあり、驚きました。
「ボビナムは護身術、健康を考えてフィットネスだったもののが、1996年にベトナム政府から柔道やテコンドーのような公認のマーシャルアーツとして正式に認められたのです。その時にドイ・カンと呼ばれるファイティングとクィエン・トクと呼ばれるデモンストレーションの2つのスタイルに分かれました。
ドイ・カンはファイティング、直訳すると敵対という意味になり、クィエン・トクは型という意味になります」
──2つとも練習している選手はいるのですか。
「ここはホーチミンの代表チームで、それぞれの地域か選抜されたメンバーが集まっています。だいたい都市代表に選ばれた時にどちらのスタイルを選ぶようになっています。
もともとはどちらも練習しているのですが、ハイレベルになるほど、両方を続けるのは無理になります。どちらも習うことはできるけど、ただ大会に出るためにコーチが選手の適正を考えます。ドイ・カンをやっているものが、クィエン・トクに出ることまずないですが、その逆はありますね。
ドイ・カンは強さを争うモノですが、クィエン・トクは決まり事で他との呼吸もあり、それらを覚える必要があるので。ダンスをするモノは、強さを求めれば戦うことができる。ただ、戦う者はダンスはできないです。
コーチ自身も初心者にはどちらも指導できますが、レベルが上がるとそれぞれの指導をすることになっています」
──ドイ・カンとクィエン・トクはどちらの方が人気があるのでしょうか。
「クィエン・トクの方が人気がありますね。そちらの方が、もともとのボビナムの動作が多く残っています。ドイ・カンはムエタイやキックボクシングの要素が含まれ、競技人口はクィエン・トクと比較するとどうしても少なくなります」
──戦う競技であるドイ・カンのルールは、どのようなモノなのでしょうか。
「ヘッドギアとプロテクターをつけて、3分3R制で戦います。勝敗はKO、スタンディング8カウントがあるポイント制で決定します」
──ポイントはどのような配分なのですか。
「ボディへの正確な蹴りは1P、顔面は2P、パンチは1Pか2P、投げも1Pか2Pで蹴り足を掴んで倒しても構いません。場外に出るとマイナス1Pで、注意を受けた選手は2Pの減点になります。それとボビナム特有のシザースに成功すると5Pが与えられますが、寝技はありません。
クィエン・トクはチームと個人戦があり、5人のジャッジがいて、一番高い得点と一番低い点を除外し、3人のジャッジのアベレージで得点が争われる感じです」
──ドイ・カンの選手がキックやムエタイの試合に出ることはあるのですか?
「チームに所属している間は、他の競技の試合に出ることはできないです。彼らはサラリーを市からもらって、ボビナムの練習をして試合をしているので」
──おお、ではプロということではないですが、職業として成り立っているのですね。
「契約は2種類あって、フルタイム契約だと1日3回の練習、パートタイムだと1日1回。パートタイムは昼に仕事ができるので、その方が、稼ぎが増えるのでパートタイム契約の選手の方が多いのが実情です」
──しかし、ホーチミン市がチームを持っているとは……。
「ベトナムの64の市がボビナムのチームを持っていて、35チームがナショナル選手権に出場できるような形です。ホーチミン市、タンホア市、ベトナム軍などが強豪チームですね。64の都市以外には軍と警察のチームもあります。クィエン・トクではホーチミンが最強なんです」
──どのような大会が行われているのしょうか。
「ナショナル選手権以外に学生選手権、社会人選手権がります。小学校ではボビナムのクラスもあります」
──ボビナム、ヴィエボォダオ、2つの名称があるようですが。
「ボビナムは英語、ヴィエボダオはベトナム語。ベトナムの武道という意味ですね。どちらを使ってもらって構いません」
