【WEC44】大沢スタイル、2Rに開花もバヌエロスに惜敗
■バンタム級/5分3R
アントニオ・バヌエロス(米国)
Def.3R終了/判定3-0[29-28、29-28、29-28]
大沢ケンジ(日本)
【写真】「前蹴りで前進を止める」という自らが求め、築き上げたスタイルは「日本人でも米国人に勝てる」ことを証明するものだった。敗れはしたが、熟成の時間があれば―― (C) MMAPLANET
大沢の左ジャブに、右クロスをかぶせていくバヌエロス。大沢が打たせない打撃戦のリズムを掴む前に、パワーでその防御を打ち破っていく。それでも大沢は前蹴りで、距離を掴み、バヌエロスの突進を止めに掛るが、蹴り終わりで足が揃ったところに右を受け、尻持ちをつくようにダウン。決してダメージはないが、打たれると下を向いてしまうなど、自分のリズムでなかなか戦えないまま初回が進む。
バヌエロスの右にヒザを合わせた頃から、大沢の動きが良くなってきた。テイクダウン狙いのフェイント、さらに打点の高い前蹴りを見せるなど、大沢は攻撃を上下に散らしながら、蹴りやパンチを繰り出す。その打ち終わりと同時に移動を繰り返しながらリズムを掴み、バヌエロスが序盤に見せた勢いを消すことに成功した。
尻持ちをついた分、ポイントを奪われた大沢だったが、自分のペースを貫いたことで、2Rは攻めに出ることができた。ロー、ミドル、左ジャブとたて続けにヒットさせると、バヌエロスのプレッシャーが一気に弱まり、前に出られなくなってくる。
前蹴りで距離を取る大沢に対し、強引な左フックを振り回すバヌエロスだが、その拳は大沢に届かない。ならばとシングルレッグを放つも、スピード感に欠けており、苦もなく大沢は頭を潰してバックに回り、速射砲のように回転の速いパウンドを落とすと、動きが止まったバヌエロスにチョークを狙う。パンチが止まった瞬間に立ち上がったバヌエロス、大沢もスタンドへ戻り、ローや左ジャブで完全にこのラウンドをリードした。
勝負の最終3R。大沢の左ジャブから、左ミドルでバヌエロスが顔をしかめる。それでも距離を自ら詰めることがなかった大沢、一発のリスクが大きい打ち合いは避け、あくまでも距離をコントロールして勝負に打ち勝とうという選択か。しかし、その距離を作った前蹴りではなく、大沢はダメージを与えたミドルを多用するようになる。
すると、あれほど前に出られなくなっていたバヌエロスが、最後の力を振り絞るように前進を始めた。ミドルを左手でブロックするなど、蹴りの対応には未熟な点が見えるバヌエロスだが、腹に力を込めて、被弾覚悟で距離を詰める。距離が詰まったところで、大沢が前蹴りを出しても、既に一歩踏み込んできているバヌエロスの前進を止めることはできない。
さらに加速度をあげ、手数を増やすバヌエロス。対して、大沢は距離を取ったときと同じように左ジャブを頼り、右を打ちこまないまま時間が過ぎていく。距離ができたとき、セコンドの指示通りジャンピングニーを見せるも、クリーンヒットはせず万事休す。鼻血を流しながら、拳を振り回すバヌエロスが、最終ラウンドを取り、ジャッジ3者とも29-28というスコアで勝利した。
2Rに挽回しながら、そのリズムをミスから崩した大沢。リズムが崩れたときに、その崩したリズムを引きずって戦っていた点が悔やまれる。