【ACB71】モスクワで無敗のカリモフと戦う、水垣偉弥─01─「実績を餌に、若い選手を潰すしかない」
【写真】なぜ、取材場所が某ファミレスなのか──は後編で(C)MMAPLANET
30日(土・現地時間)、ロシアはモスクワのクリタツコエ・スポーツパレスで開催されるAbsolute Championship Berkut71「Moscow」に水垣偉弥が出場し、ルスタン・カリモフと戦う。
8年間に渡る北米メジャーでの活動に一旦の区切りをつけた水垣が、選んだ道はロシアのACBだった。イメージとして、相手も環境も危ないことだらけの戦いに向け、離日1週間前の水垣に話を訊いた。
──試合まで10日ほどとなった水垣選手です。日本を発つのはいつになりますか。
「26日を予定しています」
──初めてロシアですが、勝手が違うことは?
「そうですね。向こうに行ってしまえば何とでもなるだろうと思っているのですが、やはり米国で試合をするのとはビザの取得からもしても、色々と事情が違っていて大変ですね(笑)」
──自分がロシアに行った20年前などはバウチャーという宿泊するホテルから来る予約証明書の取得が大変で。それを提出し、期日通りに申請してなお大使館の窓口の女性に袖の下を通さないと発行してもれなかったです(笑)。
「アハハハ、その頃と比較すると楽かもしれないです。とにかく米国と事情が違っていて、ビザが貰えるのも出発前日なんです(※無事取得し、離日した)。大使館もボディチェックもなくて、普通に裏口のようなところから出入りできて全く米国とは違いました」
──それでも現地では何とかなると思えるのが、水垣選手ですね。
「なんか、あんまり想像がつかなくて。でも、試合の条件も良いですし、ACBはロシアだけでなく米国やカナダ、ブラジルでも大会を開いており、日本でも──っていう話もあったみたいです」
──確かに我々も追い切れていないのですが、人材育成大会を含め、1カ月で複数のイベントを開いているし、元UFCファイターの名前も見られる大会です。
「その将来性、そして現実問題としてファイトマネーのことも考えると、僕にとっては現時点のベストの選択はACBだと思っています。資金は潤沢のようですしね」
──しかし、ロシアはファイターも危険極まりないです。今回対戦するルスタン・カリモフも無敗の9連勝という選手です。
「大まかにいうとスタンドは蹴り中心で、そこからテイクダウンにつなげて、パウンドが強いファイターです」
──スイッチも織り交ぜ、また後ろ回し蹴りを多用する部分ではヴォルク・アターエフの軽量級バージョンのような感じも受けました。
「確かにロシア人といってもヒョードルのような感じではないですね。パンチよりも蹴りが多い、そしてパウンドアウトするような。蹴りはスピードが速く、ハイキックで前に足をついてそのままテイクダウンに入るのも上手いです。
パウンドはもうザ・ロシア人。ただ、映像をチェックしても対戦相手のレベルが分からないですし、UFCへ行くような選手とは戦っていないかと思います。あくまでも動画でチェックするというのは、その相手のとの相対論だし、どこまで強いのかというは分からないのです。ただ、強いことは強いです」
──自分たちなどロシア幻想が以前からあり、ロシア人というだけでも怖い。そして、最近の各イベントでのロシア人を見ると、さらに怖くなります。
「もう、そこは僕もずっと米国でトップ選手とやってきたので……。そこを考えていてもしょうがないです。逆に僕からすると、UFCでランキングに入っていましたよ──という自分の過去の実績を餌にして、若い良い選手と戦って潰していくしか、FC復帰はないですから」
──やはり狙いはUFC復帰ですか。他に目標は持てない?
「今回の岡見(勇信)さんのようなこともあるわけじゃないですか。あれは励みになりました。階級は違うけど、僕は岡見さんを追っていたので。純粋に岡見さんがUFCと再契約できたことは嬉しかったです。
僕にとってロールモデルの方だったので、本当にモチベーションになっています。岡見さんもWSOPとPFLで4連勝という結果を残していたし、僕もここから負けられないです」
──ここで北米でないのは、岡見選手ともまた違う道ではあります。
「Bellatorには交渉してもらいました。でも『興味はあるけど、今すぐではない』ということだったので。そこでACBが良い条件でオファーをくれた。まぁ、ここでロシアも僕の格闘技人生だと思います」
──RIZINのバンタム級GPという選択肢はなかったですか。
「う~ん、向こうが僕のことを必要としているかというのもありますし。そうであっても……堀口君がいますからね。最終的に僕が何をしたいのか。それはUFCへ戻ることだし、近いルールでケージで戦っておきたかったです。こんなこと言うと怒られるだろうけど、堀口君と1試合なら(笑)」
──本当に怒られますよ(笑)。
「ハハハ。まぁ、僕がアンテナに引っ掛かることはないと思っていました」
──心配なのは水垣選手のダメージの蓄積です。
「3月いっぱいまでマススパーリングも一切していなかったです。実は耳の方の持病が、エディ・ワインランド戦の前に再発していて、試合後に手術というのは決まっていました」
──例の血小板が減少するという症状の方は?
「アレはもう全く大丈夫です。投薬をやめても、数値に変わりはなく。結局、原因が分からず、そのまま治癒した感じです。治った要因も分からないです(笑)。
まぁ、負けていてアレなんですけど、過去数年になかったぐらいしっかりと休むことはできました」
──体調的には問題ない?
「問題は一切ないです。もちろん、ワインランド戦よりコンディションも良いですし。ただ、試合間隔が空いていた分、仕上がりはいつもより2週間ほど遅れている感覚でした。
今からでも戦いたいという気持ちになるのも、これまでより遅かったです。あとは対戦相手云々ではなく、自分に対する自信がこれまでで一番ないです……」
(この項、続く)
■ACB71対戦カード
<ACBバンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]ピョートル・ヤン(ロシア)
[挑戦者]マテウス・マットス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
アンドレイ・コシュキン(ロシア)
エドゥアルド・ヴァルタニャン(ロシア)
<ミドル級/5分3R>
マルセロ・アルファイア(ブラジル)
アスラムベク・サイドフ(ポーランド)
<バンタム級/5分3R>
オレッグ・ボリソフ(ロシア)
ムラッド・カラモフ(ロシア)
<ミドル級/5分3R>
アレクセイ・ブトリン(ロシア)
ヨナス・ビルシュテイン(ドイツ)
<フェザー級/5分3R>
アレクサンドル・ペドゥソン(ロシア)
ムハメド・ココフ(ロシア)
<ライト級/5分3R>
エルジソン・バチスタ(ブラジル)
アリ・バゴフ(ロシア)
<フェザー級/5分3R>
アコップ・ステパーニャン(アルメニア)
サイドカムザッド・アフカドフ(ロシア)
<ライト級/5分3R>
クリストス・ギアゴ(米国)
シャミル・ニカエフ(ロシア)
<バンタム級/5分3R>
ルスタン・カリモフ(ロシア)
水垣偉弥(日本)
<ライトヘビー級/5分3R>
カロル・セニンスキ(ポーランド)
マキシム・フチン(ロシア)
<フェザー級/5分3R>
ジレノ・ロピス(ブラジル)
ドゥクヴァラ・アスタミロフ(ロシア)
<バンタム級/5分3R>
ヴァレリー・カジロコフ(ロシア)
ウスラン・アビタロフ(ウクライナ)
<バンタム級/5分3R>
トゥラル・ラジモフ(アゼルバイジャン)
中島太一(日本)
<ヘビー級/5分3R>
DJ・リンダーマン(米国)
アミルハン・イサガジエフ(ロシア)