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【ADWP2017】ワールドプロ柔術77キロ以下級、細川を下したアルジェスがナジミを破り貫禄の2連覇

18日(現地時間・火)から22日(同・土)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのザイード・スポーツシティ内のIPICアリーナにて、アブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2017が開催された。

高額の賞金を狙って各階級にて世界のトップクラスが競い合い、さらにこのスポーツのレジェンド達による戦いも組まれたこの大会。レビュー3回目は、細川顕が日本代表として出場、さらに世界の名だたる強豪たちが集まった77キロ以下級の模様をレポートしたい。


<77キロ以下級一回戦/6分1R>
細川顕(日本)
Def. by 4-2
ダイニス・グエン(カナダ)

柔道やサンボでも実績のあるグエンに対し、まず引き込んだ細川はすぐに内回りのスイープを仕掛けて上になることに成功し、2点を先制。その後グエンの足を一本超えてハーフで胸を合わせ、さらにアドバンテージを追加する。グエンも足を戻してバタフライからのスイープを狙うと、細川は立って回避。やはり立ってきたグエンが足を飛ばしてくると改めて引き込んだ。

下からスパイダーを作った細川は、素早い仕掛けから三角絞めへ。グエンは前方にステップオーバーして防ぎ、なんとかスクランブルで上を保つが、これで細川にアドバンテージが追加された。グエンは噛みつきパスを見せるが細川はヒップエスケープで対応。ガードを作り直してベリンボロを仕掛て行く。グエンがトォーホールドでのカウンターを試みるが、これを凌いだ細川は上を取ってリードを4点に広げて見せた。

その後グエンの内回りスイープで2点を許した細川だが、残り時間はしっかり足を効かせて対処して初戦を突破。自分の形を作り積極的に仕掛けた細川が、多彩な攻撃で持ち味を発揮しての快勝。現在世界の頂点に君臨する一人、ガブリエル・アルジェスとの一戦に駒を進めた。

<77キロ以下級準々決勝/6分1R>
ガブリエル・アルジェス(ブラジル)
Def. by リアネイキッドチョーク
細川顕(日本)

細川が早々に引き込むと、アルジェスは立ったままそのズボンの背中部分を片手で掴んでリフト。細川に後転を余儀なくさせてから低く体重をかけてのパスを狙う。細川もエビでしのぐが、立ち上がったアルジェスはレッグドラッグのように足をさばいて横に回って豪快なパス狙い。それを嫌いスクランブルを狙った細川を上からがぶってアドバンテージを得た。

ガードに戻した細川は、アルジェスのプレッシャーをスパイダーでかわすと、素早く三角絞めへ。しかしアルジェスは強固なベースをキープし、再び立ち上がってズボンを掴んで細川をリフト。浮いた細川のボディにステップオーバーしてのバック狙いから、サイドを取って3点先制する。

やがて足を戻した細川は、内回りスイープを見せるがアルジェスは安定感のある対処で一緒に動いてバランスを保つ。さらに細川がシッティングの体勢になると、上から飛びつくように覆いかぶさるとアームインギロチンの体勢に。細川が体をひねって逃れようとすると、すかさずバックについてそのままチョーク。細川はたまらずタップした。

スイープの強さが際立つアルジェスだが、強靭なフィジカルとバランスを活かしたダイナミックなトップゲームも圧巻。細川のガードゲームを完封した挙句、最後は見たこともない首技の連携で極めたアルジェス。ムンジアル基準でいえば階級の違う世界王者級の柔術家が、高い世界最強の壁を見せつけた試合となった。

続く準決勝でアルジェスは、もう一人のブラジル代表のイサッキ・バイエンスと対戦。今年から黒帯として戦いはじめたバイエンスはパン大会でホムロ・バハウを倒して準優勝して一躍脚光を浴びた選手だ。

今大会でもバイエンスはブラジル予選初戦でルアン・カルバーリョを倒し、予選準決勝でホベルト・サトシと対戦。50/50の攻防で点を取り合った後、下からスクランブルしてズボンを掴んでのテイクダウンを決めて勝利。強豪ひしめくブラジル予選を制して本戦に進出している。

そのバイエンスとアルジェスの準決勝は、やはり50/50戦に。残り数十秒のところで、アルジェスがバイエンスの下からの仕掛けを潰して背中に付きかけてアドバンテージを獲得。細川戦でも猛威を振るった上からのバランスとプレッシャーの強さを発揮し、準決勝でジョナサン・サタヴァとの同国人対決を制した米国の若き極め業師、エドウィン・ナジミとの決勝に駒を進めた。

<77キロ以下級決勝/6分1R>
ガブリエル・アルジェス(ブラジル)
Def. by 2-0
エドウィン・ナジミ(米国)

グレイシー・バッハ同門対決となったこの試合。試合開始早々に引き込んで足を絡めると、すかさずナジミの右足を抱えることに成功する。対するナジミは大きくステップオーバーしてその足を抜いてのパスを狙うが、アルジェスは足を絡み続け右足を離さない。その体勢から内掛け、外掛けと足の組み方を変えながらナジミを揺さぶっていったアルジェスは、やがてナジミの右足を肩で抱えたまま立ち上がって倒し、2点を先制してみせた。

下になったナジミも足を絡めて、スパイダーガードと絡めてのスイープ狙い。それをアルジェスが堪えると、展開を変えるためか馴染みも一緒に立ち上がる。するとアルジェスは再び引き込んで、先ほどと同じナジミの右足を抱えた体勢をすかさず作った。

そこからアルジェスは絡み方を変えながら、横回転しながらのスイープ狙い。ナジミはそれを凌ぎながら足を抜こうとするが、最後まで抜けず。2-0でアルジェスが2連覇を成し遂げた。

細川戦やバイエンス戦では、トップからの抜群のバランスとプレッシャーで勝利したアルジェス。決勝ではガードから相手の足を抱える得意な形を作り、最後まで破らせず。上からも下からも無類に強い上に、自分の勝ちパターンも確立しているこの若者は、ムンジアルのミドル級でも間違いなく大本命だろう。

■リザルト

【77キロ以下級】
優勝 ガブリエル・アルジェス(ブラジル)
準優勝 エドウィン・ナジミ(米国)
3位 ジョナサン・サタヴァ(米国)

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