この星の格闘技を追いかける

【Special】MMAビジネスの今をシュウさんに聞く(04) Asian MMA

2013.03.11

RFC, LFC, OFC & PXC ASIAN MMAevents

【写真】躍進アジアのMMAだが、基本的に日本とは経済格差が残る地域のファイターで需要がまかなえる状況にある。日本人ファイターを登用するのは、彼らの意気込みの表れだ (C)MMAPLANET

UFC、Bellator MMA、さらにWSOFやRFAから女子MMAに話題が及んだシュウ・ヒラタ氏に聞く『MMAビジネスの今』。

第4回はこの2年、飛躍的に存在感を増すようになったアジアのMMAプロモーションの現状について、マネージメントサイドから語ってもらった。

<インタビュー第1回はコチラから>
<インタビュー第2回はコチラから>
<インタビュー第3回はコチラから>

――北米のMMAはショービジネスとして、一つ深い部分に入りつつあるという気もします。

「そういうことですよ。ああいう、グレン・ロビンソンのようなやり方がどうなっていくのかも、興味深いですね。選手の価値以上の支払いも億万長者だから可能になる。まぁ、困っちゃいますよ(笑)」

――スポンサーマネーとファイトマネーの兼ね合いという部分でも、プロモーション側のそのような事態は好まざる状況なのでしょうね。

「そういう風にお金を振る舞うことが、一個人でなくMMA業界にいるファイター全てにとって良いことになるのかどうか。それは微妙なラインですしね」

――北米のMMAは、日本で思われている殻を完全に突き破っていることが実感できるお話ですが、成長著しいアジアのマーケットについて、シュウさんはどのように捉えられていますか。本音をいえば、ONE FCにしてもこれからのポジションにいると自分は感じています。勿論メディアとしては、アジア全般のマーケットが少しでも盛り上がって欲しい。それが日本のファイターにとっても良い状況になる。ただし、現状のマーケット、そしてマネージメント・ビジネスとしてはそれこそ様子見の状態だと思われるのですが。

「OFCに関しては、35歳以上のファイターに勧めています。20代の選手が、その後のキャリアにUFCというものを見据えているのであれば、一考の余地があるのは確かです。特例を除くと、契約試合数が多く、その年数も長い。ファイトマネーのアップ率が北米と比較すると低い。それとチャンピオンになると保有権をプロモーション側が持つことになる」

――つまり、ステップの場ではなく終の棲家として考えないといけないわけですね。

「だから20代の選手には諸手を挙げて、OFCで頑張ろうとは言えない。マネージメントサイドとしては、意地でも単数契約を勝ち取らなければならない。1試合契約が勝ち取れるなら、若いファイターでも戦うべきだと思います。なぜなら、注目される大会で試合をすることが、セールスマンである僕の立場からすると、今後、売り込みやすくなる」

Boku【写真】アジア最大のプロモーションとして注目を集めるOFC。現在、このケージを主戦場にしている日本人選手は朴光哲(35歳)、BJ(34歳)、上田将勝(35歳)、青木真也(29歳)、契約を済ませたファイター=漆谷康宏が36歳で、鈴木信達は35歳だ(C)MMAPLANET

――OFCがそれだけ注目されている事実を踏まえて、強気の交渉ができる魅力を選手も持たないといけないということですね。

「その一方でPXCとビジネスする時は、3試合のエクスクルーシブなのですが、『UFCとBellatorからオファーが来た場合は、選手側から契約を破棄できる』という一文をつけてもらっています」

――アジア・ラージエストMMAショーを標榜するOFCとフィーダーショーを自認するPXC、アジア太平洋地域のプロモーションにもそれぞれ特色があります。

「PXCはファイトマネーが高くなったファイターは、どうぞUFCやBellatorに行って下さい。その後釜には若くて、ファイトマネーもさほど掛からない選手が座れますよという姿勢なんです。

こう言っては何ですが、今や日本のプロモーションは全てフィーダーショーですよ。これは厳しい現実ですが、パンクラス、修斗、DEEPのチャンピオンだからといっても、UFCで長期活躍できる保証はないということです。

それをイベント側も理解し、UFC還りというファイターを如何に登用していくか。『チャンピオンをUFCに持って行かれた』なんて、大騒ぎする必要はないんです。だから、各プロモーションのチャンピオンも初防衛すれば、頑張ってこいよって送り出す。そして、ダメならまた戻ってきて戦えば良いという姿勢で構わないと思いませんか?」

――野球やサッカーも同じで、プレミアやメジャーリーグでプレイしてきた選手たちが、その経験をJリーグや日本のプロ野球に還元してくれれば。

「マイナーリーグという言葉に敏感にならないで欲しいです。ベースボールはマイナーリーグでも、しっかりとしたビジネスをやっています。メジャーの人気に、言葉は悪いかもしれないですが便乗する」

――便乗ビジネスの大きさが、この業界を大きくすると思います。それが業界のインフラ整備でもありますし。巨大プロモーションが、チケット販売から、場内の飲食物の販売まで仕切って、ビジネスの裾野を広げることができなかった例を私たちもこの目で見てきましたし。

「UFCを敵に思う必要もないし、プロモーションとして協力する必要もない。団体同士の協力なんていう概念は、UFC側にはないですから。そこなんですよ。

まぁ、アジアのプロモーションを振り返ってみてみると、組織力をあげる必要があると思っています。窓口が誰なのかハッキリしないから団体のトップに連絡をいれても、レスポンスが悪い。努力をしているのに、PR不足ということを感じています」

――私は個人的に、アジアと欧米社会はビジネスの仕方が違うと思っています。特に中国、韓国、日本と北米流をそのまま持ち込むことが難しくはないでしょうか。

「難しいです。本当に難しいです。それは欧米×東アジアという見方でなく、日本と韓国という間でも感じられることです。韓国でも以前は、簡単にイベントがキャンセルされるなど、問題点を指摘されてきました。そんな状況をRFCが覆す努力をしていると思うのですが、やはり躊躇してしまう部分はあります」

――実際、今年から去年に掛けてアジアン・メジャーといっても良いOFC、PXC、RFC、LFCは正式、非公式に限らずマネージメントレベルでは、4つとも全てのプロモーションがイベントを延期しています。

「そうなると二の足を踏みますよね。まだまだ不安定な部分はあります」

Melvin【写真】日本を主戦場にしていたビッグネーム獲得にも力を入れるRFC。メルビン・マヌーフに続き、ヨアキム・ハンセン&ティエリー・ソクジュが4月に出場する(C)MMAPLANET

――そうなると、北米でTV局をつけている組織も、最初のプラン通りにモノゴトが進まないところも多く見受けられる。つまりMMA界で安定しているのはUFCとBellatorの二つになってしまう。

「その通りなんです。だから、二つのメジャーリーグがあって、その下にマイナーリーグという呼び方が嫌なら、フィーダーショーがある。世界中のプロモーションは、ニューヨーク・ヤンキースではなく、ブルックリン・サイクロンズなんです。でも、それで良いじゃないですか。ブルックリン・サイクロンズはしっかりとビジネスをしているんだから、そのビジネス・モデルを皆で考え、構築していかないと」

<インタビュー第5回はコチラから>

PR
PR

Movie