この星の格闘技を追いかける

【Special】UFC? Bellator?? MMAビジネスの今をシュウさんに聞く

Shu Hirata

【写真】「UFCで戦いたいなら、ベラトールとONE FCはなし。OFC なら単数契約なら」とシュウ・ヒラタ氏は語る(C)MMAPLANET

「世界で」、「UFCで」、「北米で」、あるいは「アジアで」戦いたいという日本人ファイターは増える一方だ。その一方で、まだまだ海外の現状を理解しているファイター、そして指導者は決して多くない。そこでMMA PLANETではUFC JAPAN 2013に水垣偉弥を送り込んだシュウ・ヒラタ氏にUFC JAPAN 2013の2日後、北米、そしてアジアの現状についてロングインタビューを敢行した。

シュウ・ヒラタ氏に聞く『MMAビジネスの今』、第1回はUFC JAPANと躍進Bellator MMAについて語ってもらった。

――今回のUFC JAPAN 2013、実質UFC on FUELとして行われたことに関して、どのような印象を持たれていますか。

「今、UFCはご存じの通りFOX系のFUELとFXで、PPVやFOXより小さめのイベントを中継しています。実は夏頃にFUELがFOX SPORT 2となり、同じFOX系でモータースポーツなどを中心に中継しているSPEEDがFOX SPORTS 1に代わるという話があります。そしてUFC中継はFXとFUELが統合して、FOX SPORTS 1で中継されるという風になりそうなんです。

だから、そこまでの戦略としてPPV、残りのFXかFUELという部分は、もうFOXとの兼ね合いだけで決めているという気がするんです。そして、これまで新たにUFCが進出した国を見てみると、初回はPPVでもそのまま続けている国は少ない。

結果、FXかFUELでどれだけ視聴者数を稼げるのかというのを見ている。つまり、そういうことだと思うんです、何か他に明確な理由があってFXとFUELを分けているのではなくて。

もちろん、私たちのような選手をマネージメントする立場からすると、契約しているファイターをPPVイベントに入れたいですよね。そして、一番入れたくない大会がFUELです。FACE BOOKで中継する試合が圧倒的に他のイベントよりも増える。するとスパンサー・フィーはガクッと落ちます(苦笑)。それでもUFCは一度、試合を断ると次はかなり待たないといけなくなる。だから、断ることはしないですよね」

――同じFUELでも、マカオ大会は現地の夜、つまり米国人からすると非常に視聴しづらい時間帯。一方、日本大会はこちら午前中開始で、米国では土曜の夜に中継されている。この差をシュウさんはどのように捉えていますか。

「米国のファンが見る試合を揃えた。そして、やっぱり日本マーケットですね。TUF以降の新しいファンはそうでないかもしれないですが、かつて日本がMMAの聖地だったということは米国のファンも十分に知っています。UFCがPRIDEの映像を買い取ったことでハイライトでも使われていますし、実況でもPRIDEのチェンピオンだったとコメントがあることで、否応なしに耳に入ってきているんです。そういう面でも、ジャパンのステータスはまだまだ高いと思います。

一時期インドでTUFを行なうという話も聞かれましたが、その後は不透明。マカオ大会の扱いをみても、アジアの窓口はジャパンなんですよ。だから、そこの違いだと僕は思うんです」

Silva vs Stann【写真】ヴァンダレイ・シウバとブライアン・スタンがメインだったUFC JAPAN2013は、米国のFUEL中継史上で最多の視聴者数を獲得している(C)MMAPLANET

――ヴァンダレイ・シウバとブライアン・スタンというカードは日本だけでなく、米国でも引きになるカードだったと?

「期待の表れですよ、ソレは」

――そんなUFCですが、昨年、人気面も少し落ち着きを見せ、またここから新たな仕掛けなど必要になってくる時期が来た面もあるかと思います。

「落ち着いたというか、FUELやFXの地方大会はチケットセールスの面でも苦戦していると思います。PPVやFOXと比較してFXやFUELはカードが弱い時があるじゃないですか。やっぱり、お客さんが見に来るのかなっていう大会もあります」

――昨年7月のサンノゼのFUELなど、平日の夕方開催。当然集客面では苦戦しますよね。

「そこまでの注目度はない。ただし、ビジネス・モデルがチケットの発売数を頼りにしているのではないのがUFCです。チケット収入はスモール・パーセンテージで、PPVの収益やTV局から放映権が圧倒的な収益を占めているでしょうから」

――だから、大会数を維持することが大切になってくると。

「その通りです。それはBellator MMAを見ていても、同じことですね。こう言っては何ですが、ガラガラの時だったあるじゃないですか」

――ベラトールはまた後程、話を伺おうと思っていたのですが、Spikeで中継されるようになっても、そういうことがあるのですね。

「場所によってはありますよ。今度、アトランティックシティで新しくできたレヴェル・カジノに進出しますが、これまで使用していたシーザースのボールルームなんて、結婚式でも使われることもあるような箱でしたから。ただし、Spikeになって変わりました。

僕はエディ・アルバレスの問題を訴訟に持っていったときに、彼らの本気度が理解できました。ヘクター・ロンバードは簡単にリリースされましたが、エディは違う。これはSpikeに移行して、Viacomの上の人がMMAをより理解したんじゃないかと。去年はそこまでヘクターに支払わなかったけど、今年はエディでOKを出した。今回のエディのケースは、これからのMMAの契約を変える歴史的な事件だったと思います。契約期間、支払、マッチングの定義は非常に難しいです」

――Viacomといわれても日本では、その存在がピンとこない。でも、パラマウント映画を持っているなどという例を出すと、その資金力が伝わるのではないかと思います。

「その通りです。本当に凄いです。どれだけの映画会社、TVチャンネルを持っているか。資本でいえば、ズッファよりずっと上ですよ」

――だからズッファの面々も神経質になっているような……。

「なっているでしょうね。全く侮れない存在になってくると思いますよ」

――そうはいっても、Spike中継の第1回大会のインパクトの強さは、決して持続していないと。現時点では真っ向からやりあえるコンペティターではない。

「それも確かにあります。ただ、マッチメイカーのサム・キャプランは凄く良い仕事をしていると思います。あれだけ良い選手を集めて来て。彼はUFCという看板がないところで、仕事をしているわけですからね。

UFCのマッチメイカーは、やはり契約面でも仕事が進めやすいですよね。細かい話なしに、サインするかどうかっていう風に進めることができる。でも、サム・キャプランは契約に関して、本当に細かいところまでヒザを詰めてやり取りをしないといけない。契約期間も長いですしね。だから、ウチがマネージメントしているドウグラス・リマやブレント・ウィードマンなど、ベラトールで戦っているファイターは、『もうUFCに行くのは諦めた』と言っています」

Douglas Lima【写真】現在シーズン8ウェルター級トーナメントを勝ち上がっているドウグラス・リマらもシュウ・ヒラタ氏はマネージメントしている(C)KEITH MILLS

――つまりUFCとベラトールは、セ・リーグとパ・リーグでなく、NPBに対し新たな競合するベースボール・リーグができたということなんですね。

「そうなんですよ。トレードはない。ベラトールで負けてリリースされた選手は、当然UFCへは行けない。ベラトールでチャンピオンになってもマッチングされると、これもUFCに行けない」

――マイケル・チャンドラーとUFCファイターの比較は意味がなくなる。なぜなら、彼らが交わることはないからと。

「そういうことですね」

――それにリアリティTVショーには、その良さがあるのでしょうが、毎週、実戦が見られるのは凄い。

「良いですよね。ベラトールのビヨン・レブニーという人は、もともとフライデーナイト・ボクシングをやっていた人。決まった時間にボクシングを毎週見ることができる。そういうビジネス・モデルを信じてきた人なんですね。『8時だョ!全員集合』ではないですが(笑)、8時になればMMAを見ることができる。これはコアのファンにとっては、どれだけ嬉しかったことか」

――プレリミの質もイベントによっては、変わってきたと思います。

「ハイ。でも、まだまだベラトールがプレリミナリーに突っ込む選手はローカルで、移動のコストが掛からない選手という形ではありますね」

――なるほど、だからニュージャージーやカリフォルニアなど、良い選手が多い州の大会だと、そこそこ有名なファイターがプレリミに出てくる。

Chandler【写真】Bellator世界ライト級王者のマイケル・チャンドラーはこれからのMMAを背負って立つ逸材。そんな彼もいち早く、獲得していたベラトールのタレント・リレーションの能力は侮れない(C)GONGKAKUTOGI

「そうなんですよッ。そういうセミ・ローカル的な部分はプレリミナリーには残しつつ、メインカードでナショナルな展開をしていく。ほんと、サム・キャプランは僕が契約したいなと思うファイターは、ほとんどベラトールに連れてきています。凄いことですよ。マイケル・チャンドラーだって、ストライクフォースに出ていた。会場にいたサム・キャプランは、その場でビヨン・レブニーに電話をして、その日のうちに契約が切れる日などを確認、交渉していたんです」

<インタビュー第2回はコチラから>
<インタビュー第3回はコチラから>
<インタビュー第4回はコチラから>
<インタビュー第5回はコチラから>

PR
PR

関連記事

Movie