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【Special】MMAビジネスの今をシュウさんに聞く(03) Invicta & Zuffa

Invicta FC

【写真】Invicta FCはかつてないビジネス・モデルを用いてMMA業界に旋風を巻き起こしている(C)DAVE MANDEL

UFC、Bellator MMA、さらにWSOFやRFAに話題が及んだシュウ・ヒラタ氏に聞く『MMAビジネスの今』。

第3回は女子MMAで世界中の注目を集めるInvicta FCをビジネス・モデルから、ZUFFAの目指すところ。そして日本のプロモーションに求められる改良点などを語ってもらった。
<インタビュー第1回はコチラから>
<インタビュー第2回はコチラから>

――水垣選手が中堅、つまり若い選手がドンドン出てきているということですね。

「男って経験と肉体が巧い具合にマッチするのって、僕は20代の後半から30代の初めだと信じているんですよ。ボクシングでも、そうじゃないですか?」

――MMAはボクシングよりも、さらに数年あとかもしれないですよね。

「そうですね、だから水垣君は3、4年が勝負です」

――今、男のピークという話になりましたが、女子MMA。インヴィクタFCに触れないわけにはいかないのですが……。

「Showtimeの中継がどこに決まるのか分からないですけど、そこにインヴィクタFCが入り込むことがあれば、凄いことですね。UFCも女子がロンダ・ロウジーのおかげで安定し、125ポンドや115ポンドをやることになると、インヴィクタも買収するでしょう。間違いなく」

――その匂いもするということですね(笑)。

「ハイ。今、マネージメントの至上命令は多くの女子選手をインヴィクタに注ぎ込むこと。魅津希ちゃんも4試合契約しますよ。とにかく、入れるぞということで」

――米国が本気になると、女子MMAの一気に質が変わりました。日本は女子MMAの歴史がある国ですが、ギアの違う状態だと感じます。現時点で、男子以上に海外で勝つのは難しいかと。

「2人、3人というところでしょうか、通じるのは。本当に僕、そう思っていますよ(笑)。でも、それは仕方のないことです。だって、日本の女子格闘技を見ている限り、好きでやっているということ以外、夢を見ることができないんですから。

子どもにレスリングや柔術をMMAファイターが指導していると、親御さんだってファイトマネーがいくらぐらいか気になって尋ねることもあると思うんです。そうなると、これは男女ともに言えるコトでしょうが――、その道に進ませることに躊躇しますよね。男子はUFCやベラトールという世界があり、日本でもPRIDEの時代がありましたが、女子はそういう状態になっていない。

本音をいうと、女子レスリングでトップ中のトップでない国内上位選手をスカウトしたいですよ。全日本で7、8、9位ぐらいで怪我がなく、打撃のセンスが良さそうな選手がいないか、常にアンテナは張っています。これは女子だけでなく、男子もです。特に女子ですが……。でも、親御さんと話すときに収入なんて保障できないですからね」

――そんな女子MMAで旋風を巻き起こしているインヴィクタですが、会場を見渡すとお客が膨れ上がっているわけじゃない。それでもビジネスとして成り立つフォーマットを用いているのでしょうか。

「そこを見越してのことなんでしょうね。前回大会はアクセスが集中して不調になり、払い戻しをしたU streamのPPVですが、9ドル99セントで20万人が視聴するようになれば、ペイできます。それをもとに大きなTV局の支配下となる、そんなビジネス・モデルを持っているのではないでしょうか。

これは僕の憶測ですが、最初の10大会ぐらいは興業収入など気にしていない。そういうビジネスをしているのだと思います」

――インヴィクタがShowtimeで中継された場合、ズッファは買収し辛くなるのではないですか。

「それはありますね。ただし、Showtimeは3年、5年という契約なので、その節目を狙うということは考えられます。他人の力で大きくしてもらい、それを買い取るということぐらいはやってのけるでしょう」

――ホント、そうなることを目指すビジネスが存在してもおかしくないということですよね。

「ズッファのMMAビジネスは、完成しているように見えますが、二つ弱点があります。一つ目は女子。もう一つは、ネットにおけるオンデマンドをあれだけ手がけているのに、そこで集金ができていない。そうなると、女子と世界的にネット中継で儲かるビジネス・モデルを創り上げた団体を買収する。それがズッファの最終形態だと思います。

だから、日本のプロモーションの方にはネットストリーミングを手掛けるべきだと進言させていただいているんです。まずは無料のストリーミングをやって、視聴者を全世界で作る。そこでPPVへ――と」

――そういう部分で、ビジネス・モデルとして縮小傾向にあるCSのTV中継に頼っている時代ではなくなっているのかもしれないですね。

「これは公表していただいて良いのですが、DEEPとJewelsは今年に入って7カ国で放送が始まっているんですよ。そんな凄い放映権料ではないですけどね。でも、ちりも積もれば山となるという言葉もありますしね」

――なによりも、マテリアルを寝かしているよりも、有効利用できた方が良いですし。

「その通りなんです。ただ、置いているだけなら1000ドルでも500ドルでも稼げ――ということなんです。ホント、日本のプロモーション関係者の方は、仕事が多すぎるので、そういう部分でお手伝いをしていければなと思っています。日本の状況をまず考えないといけないので、MMAのポテンシャルに対し、ビジョンを描く余裕がない。もちろん、元手という問題になってしまうのですが、工夫はできるはずです」

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――そんなMMA業界のポテンシャルを大いに見せつけている北米では、マネージメント関係も芸能関係、他のスポーツのエージェントが流入するなど、シュウさん的にも難しい局面を迎えることもあるのではないですか。

「Jacoのグレン・ロビンソンは、お金を払って選手を引抜くので、アレックス・デイビスなんてクライアントをかなり失いましたよね。大金持ちが趣味で、選手と仲よくしたいからマネージメントを始める。まぁ、MMAはそういう世界に足を踏み入れているということなんです」

<インタビュー第4回はコチラから>
<インタビュー第5回はコチラから>

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