【on this day in】4月25日──2013年
【写真】ハリマウ・ブランダイ派のワン・ユスマー尊師は、宗教に関係なくシラットの歴史、技術を教えてくれた(C)MMAPLANET
Silat in Kuala Lumpur
@マレーシア・クアラルンプール
「緑が濃い公園。今も、それがどこだったか分からない。Legend FCがその幕を閉じることになった大会を取材するために17年振りにクアラルンプールを訪れた。1度目のKL滞在は海外放浪中にシアトルで出会った中国系マレーシア人の実家に世話になった。その時、訪れたシラットの道場ではイスラム教徒でないから、練習を見せることはできないと見学を断られた。粘って交渉していると、日本で少林寺拳法を習ったことがある人物が現れ、『君の国で凄く親切されたんだ』と取材を許された。丸太を平にした上で、前後直線的にしか移動しない約束組み手のような稽古だった。今から3年前、無人運転の新交通クラナ・ジャヤ・ラインの終点、ターミナル・プトラから車で10数分行ったところにあった公園で、17年振りにシラットの技術を見せてもらった。『シラットはイスラム教徒がマレー半島に入ってくる前から存在していた。そんな武術をイスラムで括るのはおかしい』と自らはムスリムだが、異教徒にも指導している人物だった。どこの国に行こうが人間は、宗教や肌の色が違っても手足は2本、それぞれ5本指で、頭は一つ、同じ生き物だ。だから、格闘技でも体の使い方に共通性が見られる。武術も類似点はいくらでもある。競技格闘技でいえば、技はルールによって変化する。では、武術の場合は? 僕は気候や風土が武術を育むと思っている。平原で馬に乗り、長い槍や刀を使ってから組み討つことがルーツにある武術。鬱蒼と茂ったジャングル、足場は悪い。そんな場所でのゲリラ戦に長刀は不向きだ。シラットには短剣、暗器が多い。急所への攻撃が主流だ。そして、西側に占領されていた時代、隠れて技術を継承するために踊り、舞のなかに殺しの術が隠されていた。技術体系は全く違っていても、継承方法はカポエイラやテッキョンと共通点がある。格闘技、武術って、やっぱり文化だと思う」
on this day in──記者生活20年を終えた当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。