【TUF16】GSPの弟子リッチーがカナダ人初のTUF王者誕生に王手
【写真】写りは良くないが、2010年4月にBFCでパット・カーランと対戦したときのマイク・リッチー。MMA公式戦では7勝2敗の戦績を残している (C) KEITH MILLS
12月15日(土・現地時間)、ラスベガスのハードロック・ホテル&カジノ内ザ・ジョイントにてTUF 16 Finaleが開催される。前回から6桁複数年契約に加えて、カスタムメイドのハーレー・ダビットソンも優勝者に提供されるようになったTUF。熾烈なウェルター級トーナメントを勝ち上がった決勝進出者の1人は、予選含め32人の出場選手のなかでもっともファイターらしからぬ風貌の優男、マイク・リッチーだ。
リッチーはカナダ、モントリオール出身の26歳。不動のウェルター級王者ジョルジュ・サンピエールや、先日BJ・ペンに圧勝した超新星ローリー・マクドナルドらとトライスター・ジムでトレーニングを積む。
いかつい風貌の男が揃うTUFにあって、リッチーの端正な顔立ちとしっかり七三にセットされた髪型は当初から異彩を放っていた。予選でリッチーを見たダナ・ホワイトは「こいつはファイターというより会計士みたいだな」と、その印象を漏らしている。ところが、この優男が強かった!
ハウス入りをかけたイリミネーション・ラウンドでは、ジェイソン・サウスを相手にサウスポーから綺麗に伸びる左ストレートでダウンを奪い、パウンドで追撃して圧巻の1RKO勝利。これを高く評価したコーチ役のシェーン・カーウィンは、リッチーを3番目に指名しチームに招き入れた。
ハウス入りすると「孤独だ。僕が普段家族や友人たちとしているような会話を、ここの連中とするのは無理だ。人間のレベルが違う」と嘆き、(GSP譲りの?)気高さを見せつけたリッチー。1回戦は、優勝候補筆頭ドム・ウォータースといきなりの大一番だった。体格に勝るウォータースの打撃&レスリングに、リッチーが左ミドルを中心に多彩な打ち分けで対抗した激闘は延長戦へ。ラウンド中盤に上を奪取したリッチーは、試合終了まで抑え切り判定勝ち。勝負強さを見せつけた。
続いて彼は準々決勝の相手に同郷のカナダ人マイケル・ヒルを指名すると、ヒルは怒りを露わに。それまでリッチーに深い友情を示し、「カナダ人同士で決勝をやろうや!」と語っていたのだから無理もない。対するリッチーは「奴は傷つけられたとか言っているけど、知ったことじゃない」と言い放つ冷酷ぶりをここで見せた。
TUF版青木真也×北岡悟とでもいうべき『微妙な友情対決』となった試合で、リッチーはヒルの振り回すパンチを冷静にさばいてテイクダウンし、寝技で圧倒。対するヒルは終了までチョークを凌いで意地を見せるのが精一杯で、リッチーに軍配が挙がった。勝利したリッチーは、「相手チームの1位指名と2位指名を倒した。僕にとって奴らはただの数字だ」と静かに語り、さらなる非情さを発揮した。
続く準決勝、ジャブが冴えるチームメイトのニール・マグニーと対戦したリッチーは、1R中盤に飛び込みざまの左を炸裂させダウンを奪った。そして背中を向けて立ち上がったマグニーが、脇を差し返しつつリッチーに正対しようとした瞬間、がら空きとなったテンプルに狙い澄ました左ヒジがスマッシュヒット!! 衝撃の一撃決着でフィナーレの切符を手にしたリッチーは、今までの冷酷な態度から一転 「チームメイトをKOなんてしたくなかった」と涙にくれ、最後の最後に人間的な一面を垣間見せたのだった。
本来はヘビー級のファイターのリッチー。ウェルター級としては小柄ながらも、抜群の距離感から放たれる多彩な打撃はKO力を秘めており、高いテイクダウン能力に加え、寝技にも地力があるなど総合力の高さを誇る。 気高さと気の強さ、冷酷さと人間的な面を併せ持つこのユニークなキャラクターが、カナダ人初のTUF王者となる可能性は高い。15日にUFCは、GSP、マクドナルドに次ぐ第3のカナディアン・スター誕生の瞬間に立ち会うことになるかもしれない。
Text by ISAMU HORIUCHI
■TUF16 Finale 対戦カード
<ヘビー級/5分5R>
ロイ・ネルソン(米国)
マット・ミトリオン(米国)
<ライト級/5分3R>
マイク・リッチー(カナダ)
コルトン・スミス(米国)
<ヘビー級/5分3R>
パット・バリー(米国)
シェーン・デルロサリオ(米国)
<ライト級/5分3R>
メルビン・ギラード(米国)
ジェイミー・ヴァーナー(米国)
<フェザー級/5分3R>
ダスティン・ポイエー(米国)
ジョナサン・ブルッキンス(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ジェイムス・ヘッド(米国)
マイク・パイル(米国)
<バンタム級/5分3R>
ジョニー・ベッドフォード(米国)
マルコ・ヴィニシウス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ルスタン・ハビロフ(ロシア)
ビンチ・ピチェル(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ニック・カトーネ(米国)
TJ・ウォルドバーガー(米国)
<バンタム級/5分3R>
ルーベン・ドゥラン(米国)
ウゴ・ヴィアナ(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
マイク・リオ(米国)
ジョン・コフィー(米国)
<フライ級/5分3R>
ジャレッド・パパジアン(米国)
ティム・エリオット(米国)