【2014-2015】川尻達也「グィダに負けた時点で、このままでは厳しいというのはありました」
【写真】2014年の年頭に『俺なんて死んでしまえばよい』というネガティブ・シンキングの持ち主であることを明らかにした川尻、その後の格闘家人生の岐路を経て、今の心境は?(C)MMAPLANET
2014年が終わり、2015年を迎えようとしている。この2014年を振り返り、2015年に臨む──MMAPLANET縁のファイター達の声を年末年始特集としてお送りしたい。
第1弾は1月4日のショーン・ソリアーノ戦でUFCデビューを飾ったものの4月11日のクレイ・グィダ戦に敗北。その後、網膜剥離を再々発もあり引退も覚悟した川尻達也に2014年を振り返り、今後を語ってもらった。
──まず現時点で練習はどのような程度まで、戻せて来ているのでしょうか。
「12月に入ってから、軽くグラップリングと打撃のスパーリングを始めました」
──もう打撃のスパーリングもできているということですか。
「打撃に関しては、11月にジムの会員さんと当てない体面シャドーを再開し、今もまだ本当のマスですが始めるようになった状態です。でも、まだプロ練習で打撃はやっていないです。一般の会員さんの打撃は綺麗じゃない部分があるので、以前から良い練習になっていたんです。まぁ、自分のなかでは順調に仕上がってきています」
──術後の経過として、お医者さんから何か助言は?
「もう、この後は自己判断でやっていくしかないです。『いつから何をやって良いというのは言えない』ということなので、自分で判断してやっていきます。一応、年が明けてからプロ練習にも参加しようかと思っています。11月までは6割から7割、フィジカル中心で残りの3割から4割を打ち込みとか技術的な練習をしてきました。12月になってそこに会員とのスパーを加えた形ですね」
──6月の手術前の状態だと、何かの拍子で目に衝撃があると再発するという状況でした。もう、そういう状態ではないということでしょうか。
「まぁ、自分のなかで変化は分からないのですが、これまでの手術とは再発のリスクは全く違うと説明されています。先日も両目を網膜剥離になったボクサーで、僕と同じ病院で治療を受けた長嶺克則選手が1年半振りに復帰していました」
──復帰戦を戦ったということは、それ以前と同じトレーニングが積めたと理解できますね。
「そうですね」
──では以前よりも、今後への希望が大きくなっている?
「まぁ、でも怖いですけどね。なるべく距離をとって、パンチを貰わないことを考えて練習しています。打撃だけでなく、全てに置いて今までと同じレベルで復帰しても意味がない……通用しないので。復帰するからには以前よりも強くなっていないといけないし、変わっていないといけないと思っています。だから、今は新しい技術も学んでトレーニングしています」
──そういう状況まで持ち直すことができた川尻選手ですが、2014年を振り返ると1月4日にUFCデビューを飾ることができました。
「今年なんですね……。大分、昔のような気がします(笑)」
──新しい一歩を踏み出した年だったのですが、あの1勝はもう遠い過去のように感じられる?
「昔になってしまいましたね。グィダに負けた時点で、このままでは厳しいというのはありました。正直、納得できるだけの練習はしていたのですが、一直線になりすぎていて。回りが見えていない──必死になりすぎていました。この休養期間、練習ができない間に色々と考えることができるようになってきて、冷静に自分を見直せました。何が足りないのか、どうすれば良いのかをスパーリングができない時間で、とことん詰めて練習できています。
最初は飛び跳ねることもできなかったので、歩くぐらいのスピードでシャドーをして。そういうなかで、自分のなかで考えることが色々とありました。それを復帰戦までずっと続けて、より強くなって戻りたいですね」
──より強くなるために必要な部分はどこだったのでしょうか。
「う~ん、前から思っていたんですけど、MMAってキックボクシングの真似をする必要はないし、ボクシングの真似をする必要もない。レスリングの真似も必要ない。もっと自由で良いんじゃないかと、ジョン・ジョーンズなんかを見ているとそんな風に感じていたんです。言ってしまえば、ライオンのように両手もマットにつけて戦っても良いんじゃないかって(笑)。
それがUFCに出場することが決まってから、頭がカチコチに固まって『俺はこのスタイルしかない』って風になっていたのを一度、崩しました。冷静に考えて、全体的な底上げが必要だと思うようになりましたね。フィジカルもイチからやり直したし、これまでやってこなかったことだけでなく、以前はやっていたのに最近はやらなくなっていたことをまた練習するようになりました。
技術的にも重要視してこなかったことをやり直しています。その辺りが今後、どう出るのか。いや、出せないといけないですね」
──これまで重要視してこなかった部分とは?
「ピュアレスリングですかね。ピュアレスリングでは敵わないけど、MMAなら倒せると思っていたのが、しっかりとピュアレスリングを学び、そこに拘って勝負できるようになろうかと。そういう部分ですね」
──それは北米のファイターは、そこができて上積みをしているからということでしょうか。
「それもあります。大沢(ケンジ)さんと話していて、同じような考えてを持っていることも大きかったです。大沢さんは僕にとって色々なインスピレーションをくれる先輩なので。MMA的ということを第一に考えることで、疎かにしていた。レスリング以外にもあるんですけど、そういう部分をもう一度詰めてやっていこうかと思います」
──その間、何かヒントを与えてくれたファイターはいましたか。
「どうですかね……、試合は本当にたくさん見ました。アンソニー・ペティスとか刺激を受けましたし、誰これというのはないですが、同じ階級のファイターの試合もUFC Fight Passでたくさん見てきました。コナー・マクレガーもそうだし、真似もしてみましたよ。基本、僕は真似から入っているので。
新人の頃も(桜井)マッハ(速人)さんの真似をしたり、三島(☆ド根性ノ助)さんを真似てスパーをしたり。そうやって使えるかどうかを試し、判断してきました。色々な選手の試合を見て、色々真似て、取捨選択する。そういう意味で打撃に関しても、歩くようなスピードのシャドーから、この間に繰り返してきました」