【No-Gi Worlds 2014】変幻自在キーナン・コーネリアスが、ミディアムヘビー級を制す
【写真】引き出しの多さを見せつけミディアムヘビー級を制したキーナン・コーネリアス。どこまで強くなるのか、本当に楽しみだ(C) Kenny Jewel /GrappleTv
4~5日(土~日・現地時間)、カリフォルニア州アズサにあるアズサ・パシフィック大学内フェリックス・イベントセンターで開催されたIBJJF主催の世界ノーギ柔術選手権レポート第3弾。今回は注目の超新星キーナン・コーネリアス、道場最強の異名を取るムリーロ・サンタナ、昨年奇跡の大逆転優勝を飾ったエドゥアウド・テレス等が出場した注目のミディアムヘビー級の模様をレポートしたい。
<2回戦/10分1R>
キーナン・コーネリアス(アトス)
Def. ヒザ十字
タナー・ライス
ライスは、2年前に弱冠19才でタンキーニョことアウグスト・メンデスを倒したことで一躍注目を浴びた選手。コーネリアスとの試合は米国が誇る新鋭対決というわけだ。ガードの得意なライスに対して先に引き込んだコーネリアスは、ライスの右足に自らの右足を内から絡める得意のリバース・デラヒーバ(スパイラル)の形に。これがただのリバース・デラではなかった。この体勢で自らの右腕をライスの右足の外側からこじ入れたコーネリアスは、リーチを活かして掌でライスの内ももを掴むことでライスの右足を完全に固定。そのまま難なく後ろに倒して2点先制してみせた。
立って上から攻める形となったコーネリアスに、下が得意なライスも内回りで攻撃を仕掛けるがコーネリアスは冷静に対処。そこからライスの足を裁いては横に回るパスを仕掛け、ライスがそれを戻してくるとまた横に動いてのパスの連続攻撃。一度で決まらなくてもプレッシャーで相手を削ってゆく狡猾な攻めだ。対するライスは回転して50/50を作ることに成功するが、コーネリアスは長い手足を利してバランスを取っては、ライスの足を押さえつけて丁寧に解除してゆく。横に回るパスのプレッシャーをかけ続けるコーネリアスは、ライスがインヴァーテッド・ガード(逆さガード)で対応した所に膝十字へ。ライスの足を伸ばして一本勝ちを収めた。
先制点を奪ったコーネリアスのリバース・デラからの新グリップ(正確には先日のアメリカン・ナショナルズでも披露していたとのことだが)は特筆に値する。引き出した相手の裾を複雑に絡めるワームガードで一世を風靡したコーネリアスは、ノーギの試合においても、自らの腕を裾の代わりに絡めることでワームガード同様に相手の足を封じてしまったのだ。彼の尽きることのない創造力には驚嘆するばかりだ。
<準決勝/10分1R>
キーナン・コーネリアス(アトス)
Def. 2-0
ムリーロ・サンタナ(バルボーザ)
事実上の決勝戦と思われたこの試合。プレッシャーパスの名手サンタナに対して、簡単には座らずに立ち技勝負を挑んだコーネリアスがシングルレッグへ。するとがぶったサンタナはアームインギロチンに捕らえて引き込む。かなり入っていたかに見えたが、コーネリアスは自ら下になるように回転して脱出。サンタナがアドバンを1つ先制した。それでもスタンド勝負を続けるコーネリアスは、シングルレッグからサンタナを場外に押し出してアドバンを戻す。その後両者は一度ずつタックルで相手を押し出し合ってアドバンは2-2に。グラップリングと相撲の中間のような形で両者の神経戦が続いた。
残り3分近くになったところで、不用意に前に出たサンタナにコーネリアスが見事なタイミングのダブルレッグ。これが決まってついにコーネリアスはが2点を先取する。その後は深追いせずにスタンドに戻ると、残り時間を気にしたサンタナがスタンドで懸命に前に出るも、コーネリアスはうまくいなす。やがて残り1分半のところで座り込むコーネリアス。サンタナは得意の低いパスを仕掛けて行くが、コーネリアスは柔軟な膝と股関節を利用したガードワークで巧みに防御し続ける。結局サンタナは時間切れまでコーネリアスのガードを崩せず、試合はコーネリアスの勝利に終わった。
天才的寝技の持ち主として知られるコーネリアスが、立ち技の強さを披露しての勝利。前半押し出しも利用してアドバンを稼いだことや、上から時間かけて上から相手を疲弊させることに長けたサンタナに対して、確実に守れる最後の90秒だけガードワークを駆使したあたりは、心憎いまでの駆け引きの上手さだった。
<決勝/10分1R>キーナン・コーネリアス(アトス)
Def. ダースチョーク
アルナウド・オリヴェイラ(チェッキマット)
比較的名前の知られていないアルナウド・オリヴェイラはこの日、前回覇者のエドゥアウド・テレスと対戦。外回りのベリンボロを仕掛ける流れから遠い方にあるテレスの腕をいきなり取りに行き、腕十字で一本勝ち。百戦錬磨のベテランの虚を見事に突いてみせた。ちなみに先日のアメリカン・ナショナルズにおいては、コーネリアスもテレスとギあり、ギ無し両方の部の決勝で対戦し、いずれもポイント勝利を収めている。その意味でオリヴェイラは、コーネリアスのできなかったことを成し遂げたともいえる。
そんな経緯からも健闘が期待されたオリヴェイラは、開始早々下を選択してリバース・デラの体勢に。ここでコーネリアスがヒザ十字を仕掛けると、それを防いで上になって2点を先制する。その後オリヴェイラは、コーネリアスがライス戦で見せたリバース・デラのからの新フックも完全には作らせずに対処し、金星の予感さえ感じさせた。
しかし、4分を経過したところでコーネリアスはシッティングからシングルレッグに移行して、そのままサイドに。パスのポイントで3‐2と逆転してみせた。その後オリヴェイラは50/50を作るなどして対抗するが、コーネリアスは冷静に解除してはパスを決めてポイントを重ねてゆく。最後はコーネリアスが上四方からダースチョークをがっちり極めて勝負あり。地力の差を見せつけた天才コーネリアスが、初の黒帯世界タイトルを獲得した。
ノーギにもかかわらず相手をがんじがらめにしてしまうリバース・デラからの新しいグリップ。押し出しによるアドバン獲得も含めた立ち技の冴え、50/50をあっさり解除してしまうバランス、そして極めの力。コーネリアスはこの日、モダン柔術&ポイント柔術を極めつつ、その枠内にはおよそ納まり切らない多彩な技術と底力を見せつけた。今後もこの天才の一挙手一投足から、目が離せない。