【OFC15】上田将勝 「最後まで勝ちたいという気持ちで戦った」
【写真】ビビアーノ戦からホテルに戻った上田。激戦を物語る顔をしていた(C)MMAPLANET
3日(金・現地時間)にビビアーノ・フェルナンデスの持つOFC世界バンタム級王座に挑み、判定負けを喫した上田将勝。ローキックのカットでビビアーノの右スネを負傷に追い込み、幾度となく左ミドル、そして左オーバーハンドを決めていたが、要所でテイクダウンを決められ、バックを制されて敗れた。
それでもかつてないほどビビアーノを追い込んだ。精根尽き果てていた上田だが、大会直後の取材に快く応じてくれた。
――左の拳のアイシング、顔も腫れが目立つ上田選手ですが、ケガの具合は?
「拳は折れてはいないと思います。ただヒビが入っているんじゃないかと。試合後に病院に行くように言われましたが、懸命に断って何かサインをして戻って来ました。日本で診てもらいたいと思っています。あと目の方も、今は二重に見えるとかないので大丈夫かと思います」
――全てを賭けて戦ったビビアーノ戦でした。率直に今の気持ちを教えてください。
「悔しい気持ちもありますが、やり切ったという思いもあります」
――作戦的にはどのように考えていたのですか。
「前半を凌いで、後半に勝負をしようと思っていました。テイクダウンを交えながらの打撃を出すつもりでしたが、打撃だけになって段々と左のパンチを読まれるようになり、自分のペースに引き込めなくなりました。パンチを全部、当てようとしてしまって。試合の少し前に散らしながらで良いという指摘を受けていたのですが、そこは修正し切れなかったです」
――終盤、ビビアーノは明らかに蹴りが効いていたような風でした、足も痛めたみたいでしたし。
「4Rに足をやったことは分かりました。あそこが勝負どころだったと思うのですが、そこで攻めることができませんでした」
――寝技で下になっても上を取り返したり、左ミドルも思い切り入れたシーンもあり、しっかりと爪痕を残したファイトになったと思います。
「そうですか……、ありがとうございます。1Rのミドルも効いたのかと思ったんですが、ビビアーノさんは顔に出さないので分からなかったです。本当に気持ちが強かったです。足をやった時も、手招きをして『来い、来い』って言ってきて。それで戸惑いました。蹴って良いのかなって。やるしかないと思ったんですけど、顔に出さないので途中から効いていないのかとか迷ってしまいました」
――ビビアーノは想像通りの強さだったのか、想像以上に強かったのか。どちらでしたか。
「確かに強かったです。でも、イケると思ったこともありました」
――この試合のために練習してきて出せた部分は?
「左のオーバーハンドを練習してきたんですけど、それは何度か入ったので出せたかなと思います。テイクダウンから崩しという部分も、ですね」
――確かにビビアーノもテイクダウンの動きに凄く反応するシーンがありました。
「ただ思っていた以上にビビアーノさんのパンチがカチカチで痛くて、ジャブとストレートも反応できなかったです。どこから来るか分からなくて。打撃は想像以上でした。打撃で自分のペースを掴もうと思っていたのですが……。もう少し上手くできれば……」
――4Rや5Rのバックチョークは?
「取られる気はしなかったです。足を痛めていたので、チャンスがあれば足をロックして極めてやろうと思っていました。それをやりながら、疲れさせて上を取ろうと思ったのですが、コントロールが甘かったです。これまでやって来たことを出せた部分もあるのですが、もうチョット頑張れたんじゃないかという部分もあります」
――それでも、上田選手の賭けてきたモノを、しっかりと試合で見せてもらえました。
「やり切りました。最後まで勝ちたいという気持ちで戦いました。判定では負けていると思ったのですが、試合終了直後に一応、手だけは挙げておきました(苦笑)」
――もう少しできたかもしれない。ビビアーノにも行けるという部分が見えた。それでもやり切ったという気持ちの方が強いのでしょうか。
【写真】恐怖を克服し、強敵、そしてMMAに向かい合ってきた上田(C)MMAPLANET
「今はもう一度戦おうとは思えないです。もうこんな怖いことをしたくない……。怖いです。今の心境としては、悔しいですけど、悔いはありません。次は――とは、今は思えないです。1年間、本当に良い練習ができて、ああいう練習環境でやってこられたことが嬉しかったです」
――怖さを克服して勝利に邁進するところが上田選手の魅力でした。
「試合中はなんとか戦えるのですが、今終わってみて、やっぱり怖かったです」
――試合とは違うかもしれませんが、社会は怖いことだらけです。皆、不安を抱えて生きている中で、上田選手が恐怖に打ち勝とうとする姿をリングで見せてくれたことで勇気づけられた人も多いと思います。
「僕は幼稚園に入る前にアキレス腱を切っているので、身体能力という部分ではダメだと思ってずっとやってきました。常に気持ちはマイナスのところから始めていました。応援してくれる人がいるので、頑張らないといけないと思っていました」
――今はやり切ったという気持ちでいますが、また日本に戻ってゆっくりと気持ちを整理して、今後の身の振り方を決めていただければと思います。とにかく今日は気持ちの入った試合を見せてもらい、フィリピンまで応援に駆け付けた上田選手の友人たちも感銘を受けたと思います。
「引退に関しては……、しっかりと考えます。ただ、プロのMMAの試合をやめたとしても、体を動かすことは好きなので練習は続けると思います。指導者には向いていないのですが、練習は続けて、皆の役に立てればとは思っています。石渡(伸太郎)君ならビビアーノさんに勝てるかもしれないですし。良い仲間ができた――、格闘技をやってきてそれが一番の財産です。
勝ったらまたやりたいと思っていたのですが、負けたので……。最後にもう一度、ベルトを巻きたいという思いはありました。ビビアーノさんと戦いたい、ビビアーノさんがいるOFCで戦えてよかったです。ただ、トーナメントをやっている最中に割り込んできて、チャンピオンになられたのは……(苦笑)。GPで勝つと、キム・スーチョル戦だと思ってやってきたので……。でも、Bellatorで負けて一度は終わっていたのにOFCで戦えて良かったです」
――練習を続けることで、現役続行の気持ちが強くなることを無責任ながら期待しています。
「そういうこともあるかもしれないです……。ありがとうございます」