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“未完の大器”ウィルソン・ゴヘイア・インタビュー

2008.09.15

打撃の当て感もあり、寝技も強いゴヘイア。やはりあとはハートにかかってくる[photo by MMA PLANET]9月6日(土・現地時間)米国ジョージア州アトランタでPPVイベントが行われ、翌週10日に予定されていたWECがハリケーンで延期に。このとき、微かにズッファ・スタッフが笑顔を浮かべていた。

ラスベガスを拠点を置くケースが圧倒的に多いズッファ・スタッフたち、「これでアトランタ~フロリダ~ラスベガス~オマハでなく、家で少しはゆっくりできる」という声もハッキリと聞こえてきた。

そう今週の水曜日(17日・同)には、ズッファにとって初進出となるネブラスカ州オマハでUFC FIGHT NIGHTが行われるのだ。

オマハ・シビックオーデトリアムで開かれる今大会は、メインのネイト・ディアズ×ジョシュ・ニアーを始め、クレイ・グイダ×マック・ダンジグ、ジョー・ローゾン×カイル・ブラッドレーなど、日本のMMAファン注目のライト級のラインナップが揃っている。

そんなライト級フェアにあって、MMA PLANETで注目したいのは、この試合がミドル級デビューとなるウィルソン・ゴヘイアだ。白いミノタウロの異名を持つ天才ファイターは、ヘビー級からライトヘビー級、そしてミドル級に階級を下げ、「初めて腹筋が割れた」と自身を追い込んでの再帰戦。当初の予定ではベテランのジャレミー・ホーンと対戦予定だったが、負傷でライアン・ジャンセンと戦うことになったゴヘイアをキャッチした。


「これは僕の仕事。試合が終われば、ノーサイド。握手をして別れるだけ」
Interview by Manabu Takashima

――いよいよ初めてのミドル級での試合が迫ってきました。

「コンディションはこれまでのキャリアのなかで最高の状態だよ。ウェイトもあと6キロほど落とせばいいだけで、問題ないし。凄く体が軽く感じられるんだ」

――対戦相手がライアン・ジャンセンに変わってしまいました。

「試合に挑むときは、まずは自分の調子を上げること。そこから対戦相手の研究に入るわけだから、誰と戦うのかは僕にとっては大して重要じゃないんだ。確かにジェレミー・ホーンと戦えることは楽しみだったけど、拳を骨折してしまったならしょうがない。ジャンセンと戦うだけだよ。彼はUFCでは2戦2敗だけど、相手がターレス・レイチとデミアン・マイアだから致し方ない。甘く見ることはできないよ」

――前回のゴラン・レジッチ戦では、TKOで敗れたとはいえ、その最後の瞬間まで試合を優勢に進めていました。なぜミドル級転向を決意したのですか?

「ライトヘビー級は上が詰まっている状態で、ミドル級の方がチャンスが多いと思っていたんだ。ライトヘビー級は知名度の高い選手が上位を占めているから、なかなか上位進出のチャンスが回ってこないからね。対してミドル級は、ネームバリューでなく実力で勝負できる要素が多い。そんなことも踏まえて、コンディショニング・コーチのベンケイと話をしてきたんだ。でも、僕は普段から美味しい食事を摂ることが大好きだから、これまで決断が遅れてしまっていたんだ(笑)。

――ミドル級で戦うことで、フィジカル的にアドバンテージを得ることができると考えていますか。

「もちろん。僕にはヘビー級の力がある、そしてリーチの長さも僕に有利に働くだろう。体重を落としても、パワーが落ちていないのが分かり、力が漲っているのを感じるんだ」

――ベンケイ・コーチが言うには、ウィルソンの天賦の才は誰よりも勝っている。でも、怠け者でしっかり練習しないと。

「ハハハハ。確かに、僕は練習嫌いだった。通常体重で戦っていたし、ファイトすること事態にシリアスじゃなかったんだ。MMAで勝つためには、普通の人が想像すらできない厳しいトレーニングを積む必要がある。でも、僕が戦い始めた当初は、僅か500ドルほどのファイトマネーを受け取るような世界だった。僅かなお金を稼ぐために、どれほど自分に厳しくできるのか。僕はできなかった。ただ、このスポーツは発展して、結果を残す者は大金を手にできるようになり、ベンケイが僕には能力があることを説いてくれたから、変わることができたんだ。今はとてもシリアスに取り組んでいるよ」

――ウィルソンはもともと、柔術家ですよね。

「そうだよ。ブラジルのフォルタレーザでマーカス・アウレリオのアカデミーに通っていた。2001年のパンナムの紫帯で優勝している。生まれ故郷の州選手権では何度も優勝したし、実は柔術でも才能はあったと思っているよ」

――ところで先ほど、ミドル級の方がチャンスが多いと言っていましたが、その頂点には誰もがパウンド4パウンドの一人だというアンデウソン・シウバが君臨しています。

「違う。彼はP4Pの一人でなく、彼こそがP4Pなんだ。疑いようがない。そして、ミドル級でも断トツの強さを誇っている。彼こそ、本当のチャンピオンなんだ。そんな彼がいるから、ライトヘビー級から階級を下げる者も後を絶たないし、これからアンデウソンも厳しい試合が待ち受けることになると思う」

――ミドル級は王者アンデウソン、WECから合流するかもしれないパウロ・フィリョ、さらにレイチにマイア、さらにはトキーニョと、多くのブラジル人ファイターがいます。

「国籍は関係ない。MMAはスポーツだ。これから、もっと発展していく。僕たちはプロのアスリートだ。これで家内や子供を養っている。ブラジル人と戦うことは、日本人、米国人と戦うこととなんら変わりはない。これは僕の仕事なんだ。試合が終われば、ノーサイド。握手をして別れるだけ。ズッファが与えてくれる相手と戦うしかないけど、名前のあるファイトと戦って、王座挑戦を果たしたい」

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