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【ONE FN10】モライシュと決着戦。デメトリウス・ジョンソン「試合が終れば、直に日が沈む時を迎える」

【写真】今回の試合が最後になる空気を漂わせていたDJは 「Covid19のおかげで、ONEが日本大会から遠ざかってしまった。日本はいつだって最高に訪れたい、そして戦いたい国。ファンの皆もそうだし、スシ、うどんヌードル、ヤキニク、何もかも恋しい。日本をまた訪れたい。この試合が終われば、今後のことを決める。ただ、ONEが日本大会を開くなら日本に行って新宿を楽しみたい」と言っていた (C)MMAPLANET

5日(金・現地時間)、コロラド州ブルームフィールドの1stバンク・センターで開催されるONE FN10「Johnson vs Moraes 3」。同大会のメインでONE世界フライ級王者デメトリウス・ジョンソンが、アドリアーノ・モライシュと3度目の世界戦を戦う。

2021年4月の第1戦はモライシュがTKO勝ち。昨年8月の再戦はDJがヒザでリベンジした。決着戦はONE米国初大会のメインで組まれた。計量方法、階級、ルールと北米MMAとは一線を画すONEの上陸が、どのような影響を与えるのか──をDJにモライシュとの3度目の試合、今や練習仲間のヘンリー・セフード✖アルジャメイン・ステーリング戦の行方とともに語ってもらった。


──ONEにとって初の米国大会でヘッドライナーを務めます。試合まで約3週間、今の気持ちは?(※取材は4月14日に行われた)。

「最高だよ。体調も体重もバッチリだ。あと4日、ワシントン州にいてコロラドに向かう。コロラドの標高に体を合わせる必要があるからね。またフィニッシュするために。

WECのときにニック・ペースとデンバーで戦ったことがあるんだけど(※2010年9月30日)、あの時は違和感はなかった。でも今回は2週間前に入ることにしたんだ。36歳になり、18年間戦ってきて……今も最高のレベルで戦うのだから、それぐらいの準備期間を設けようと思った」

──ONEの米国デビューに、母国のファンの期待が高まっている空気を感じますか。

「期待しているかどうか分からないけど、エキサイトしている様子は伝わってくる。でも米国にはUFC、PFL、Bellatorがあるし、LFAやCFFCや僕が覚えていないショーもたくさんある。そんな状況でONEがUSデビューを飾るわけだからファンも喜んではいても、期待をしているというのとは違うかと思う」

──開催地のブルームフィールドは、UFCが第1回大会を開いたデンバーの郊外。何か運命的なモノを感じないですか。

「ノー。そんなこと考えたこともなかった。コロラドで試合だと言われ、ただ了解しただけだから」

──ではONEのMMAルールセットや計量システムは、北米の他のショーに影響を与えることになるでしょうか。

「ノー。計量方法ってカルチャーなんだよ。米国ではMMAだけでなくボクシング、レスリング、キックボクシング、ムエタイ、柔術が行われており、このONEの素晴らしい計量方法を取り入れているところは一つもない。そして何級で戦うかは、選手が決めることだ。誰かの指図を受けて、その階級で戦っているわけじゃない。

対して計量方法は選手が選ぶものでなく、団体がチョイスしている。僕はONEのやり方が気にいっているし、ハイドレーションがあるなかで適した階級で戦っていく。でも米国は米国の減量文化があるから、このシステムが広まることはないだろう」

──なるほど、です。ではルールの方はどうでしょうか? ヒザ蹴りがグラウンドで認められているのは危険にも感じますが、フェアでもあるように思います。そしてファンはデンジャラスな攻撃を好むのではないでしょうか。

「そこに関して……僕はアドリアーノとの初戦で受けたヒザ蹴りで反則勝ちにならないのかという説明を、何度も米国でしないといけなかった。皆、UFCやBellatorで北米ユニファイドのルールの試合を見慣れているからね。う~ん、どうだろうね。ファンはこれまでもPRIDEやDREAM、今はRIZINでサッカーボールキックも見ている。でも米国のプロモーションは、どこもこのルールを採用していない。まぁ、将来的にどうなるのかは様子を見る必要があるだろうね。とにかく僕に必要なのは、このルールに合わせた戦いをすることだけだから」

──ONEとしては特色としてアピールはできるかと。

「う~ん、そこも思わないなぁ。僕はただ合わせて戦うことしか考えていないから。僕らは米国で拳銃の出回っているなかで生活をしている。そこに関して目の前のある状況に合わせているだけで。それと同じことなんだよ。寝技でヒザ蹴りを認めた州は本当にわずかだ。コロラドとジョージアだけじゃないかな。だから米国のファンは、その攻撃を見ると『なんだ? 反則だろ?』ってなるだけで。

だから、そういう攻撃が認められているということは伝えても、そこをPRがプッシュすることはないはずだ。彼らがやるべきはMMAだけでなくキックボクシング、ムエタイ、サブミッショングラップリングというマーシャルアーツが一同に会しているのがONEという大会をアピールすることだから。

グラップリングより柔術が好きだという人もいるし、昨夜、実際に『試合を見るなら柔術やグラップリングよりもムエタイの方が好きだ』という人がいた。僕は『じゃあMMAのなかで組み技を見るのは?』って彼に尋ねたんだ。すると『パンチやキックがあるなら良いよ』って言うんだよ。『そこで使われる技術は、MMAもサブミッショングラップリンも変わりはないよ』と説明したよ。そして、ONEなら全てを一度に見ることができるからってね」

──それがONEのエンターテイメント性でしょうか。

「う~ん、エンターテイメント性というよりも、スポーツ性が強調されていると思う。もし、そのエンターテイメント性がWWEのような方向性にあるなら、僕はエンターテイナーじゃない。それは2人の人間が、人々を煽って一つの完成された世界観を提供するショーだから。僕はONEだけでなく他の団体の試合もスポーツとして見ている。そう、エンターテイメントよりスポーツだ。NFLやNBAを見ている時もそうだ。僕個人としては、そういう風に見ているよ」

──キック、ムエタイ、グラップリング、そしてMMAが一つのパッケージになっていることでONEのエンターテイメント性は上がっているのかと思った次第です。球技ならバレーボール、バスケットボール、テニスや卓球の試合を1枚のチケットで観戦できるのは。

「なるほど、そういう観点なら立派なエンターテイメントだ。ショーのパート、パートで楽しむ人もいるだろう。ただ僕に関しては、サブミッショングラップリングが好きな人、立ち技が好きな人にも楽しんでもらえるフルパッケージのMMAを皆に見てもらう。それこそが、ONEが僕に望んでいるマーシャルアーツだと思っている。パーティーのメニューなら、誰もが食べられる食事でありたい。それが僕の役目だからね」

──では3度目の対戦となるアドリアーノ・モライシュのことをMMAファイターとして、どのように評価していますか。

「ONE、アジアで戦ってきたから米国のファンには知られていないけど、本当に良い選手だよ。レンジ、背の高さはこの階級で頭抜けている」

──前回の対戦から、DJはどのあたりが成長していると感じていますか。

「2度戦い、僕が良い動きをした時、彼は不完全で。彼が良い動きをした時は、僕が不完全だった。試合に勝って、ファミリーと時間を過ごし、また試合が決まるとアリゾナに行ってヘンリー・セフードと話し、練習をしてきた。互いの知識を交換し、クリンチゲームでは僕の知識がヘンリーのアルジャメイン・ステーリング戦に役立てば良い。そして僕のレスリングゲームは、ヘンリーのアドバイスが絶対的に生きてくる。

それからワシントン州に戻り、道着を着たブラジリアン柔術をマスターとやり、マット(ヒューム)と練習を続けてきた。当然、成長している。前回の試合から7カ月、この期間で目に見えて成長するということはちょっと困難だ。でも、この7カ月間が僕にとって戦略を実行するうえでの一部となっている。だから……う~ん、ここではそれほど話せない部分だし……試合で見せたいと思う。僕が強くなっていることを」

──DJには大切な試合が控えているなかで、このような質問をすることを許してください。セフード✖アルジャメイン戦は、どのような結末を予測していますか。

「とにかく楽しみにしている。最初はアルジャメイン・ステーリングが、どういうアプローチでヘンリーと相対するのかを楽しみにしていた。ただ一緒に練習し、ヘンリーのケツを叩いてきた。だからベストバージョンのヘンリー・セフードが見られることを楽しみにするようになった。本当にヘンリー・セフードは知性的なファイターなんだ。

ヘンリーがフィニッシュできると思っているけど、絶対にハードな時間も過ごすことになるだろう。きっと、それだけの練習をアルジャメイン・ステーリングもやってきたはずだ。うん、どうなるのか──そこは試合を見てみないと分からないね」

──DJ✖ミキーニョ、セフード✖アルジャメインと連夜で視られるファンは、エキサイティングかつファイトIQの高いファイトが堪能できますね。

「そうなってくれれば嬉しいよ(笑)。でも、MMAファンならエキサイトしてほしい。僕とアドリアーノ、ヘンリー・セフードとアルジャメインの試合が続くことに。僕もヘンリーも年を重ね、36歳になった。家庭もある。僕らはこの試合が終れば、直に日が沈む時を迎える。そうだね、金曜日に自分の試合が終わると、土曜日は僕もしっかりとヘンリー・セフードの試合を見たいと思っている。ファンの皆もそうしてほしいね」

■放送予定
5月6日(土・日本時間)
午前8時00分~ABEMA格闘チャンネル

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