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【UFC285】世界戦キャンプをパラ柏で!! ヴァレンチーナ・シェフチェンコ─01─「必要な練習は全てできた」

【写真】言葉も表情も、本当にソフトだったシェフチェンコ。ファイトウィークのインタビューとは、明らかに違う彼女がいた (C)MMAPLANET

3月4日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC285「Jones vs Gane」のコメインでアレクサ・グラッソを相手にヴァレンチーナ・シェフチェンコがUFC女子世界フライ級王座、8度目の防衛戦に臨む。

そのシェフチェンコが2週間に渡り、パラエストラ柏でファイトキャンプを行っていたことは関係者やメディア、そしてパラエスト千葉ネットワーク関係者のSNS等でファンも周知のことだろう。MMAPLANETで本日21日(火)に日本を発つ、シェフチェンコの柏での最後のトレーニングを20日(月)に取材。強くなるなら世界に出る。日本の技術は遅れている。これらの意見が常識として認識されるようになった今、UFC世界チャンピオンが日本で世界戦を準備をした。

ある意味、我々の常識を根本から覆す来日と練習の日々を送ったシェフチェンコに、その理由を尋ね──最強の王者のメンタル、そして信条とは。


フェドートフ・コーチはヘッドキア着用、グローブの装着部のテープの使用に拘る。試合前、要らぬカットをしないための予防か

──世界戦を3月4日に控えているヴァレンチーナが、試合の2週間前まで日本で練習をする。

前代未聞の事件といっても過言でないです。なぜ、この時期に千葉に3週間も滞在してパラエストラ柏でトレーニングをしてきたのでしょうか。

「最初にずっと長い間、日本を訪れたいと思っていたことがあるわ。私は色々な国、土地を訪れて色々な人達と触れ合い、それらの国々の文化を知ることが大好きで。私の母国、キルギスもアジアの国だし、日本は決して遠くない。それと私の米国でのトレーニング・パートナーの1人が日本人と米国人のハイブリットで、その彼がパラエストラ柏で1年間練習していて。

日本にやって来るのに、全ての要素が絡み合って最適の時期が今──だったの。そして、ここパラエストラ柏で素晴らしい3週間のトレーニング・キャンプを行うことができたわ。

岡田さん、右クロスで腰が落ちていました

チャンピオンや経験豊かな選手たち、男女揃って強くて、素晴しいトレーニング・パートナーに恵まれていたから。本当にこんな素晴らしいキャンプができて、皆に感謝しているの。

私は日本に来る前から、ずっと日本のことを学んできたから、実際にやってきても文化が違うとかまったく感じなくて。

誰よりも強さ、怖さを体感していたに違いない浅倉カンナの表情で、いかにヴァレンチーナが慕われていたかが伝わってくる

そして、本当に日本のことが好きになったわ。日本の人達は凄く礼儀正しくて。他の人に敬意を払うことができる文化って、素晴らしいわ。それって世界中の人々が、忘れてはならないこと。伝統を疎かにしない。皆が忘れがちなことだからこそ、本当に大切にしなければならないことだと私は思っていて。

その大切なことが、日本にはたくさん残っていたわ。ホントにどこの国も同じようになってほしい。私の母国キルギスもそう。両親との関係はとても大切に思われていて、若い世代が年を重ねた人々を敬っている。

キャンプ最終セッション終了。鶴屋代表にはキルギスの帽子が贈られた。中央アジアの民のアイデンティティか。民族帽を大切にしているのが伝わってくる

そうすることで、全てが良くなる。上の世代の人たちは、どういう風に生きれば良いのかを知っているわ。結果、若い人間の道標になってくれる。

そういう世代の人たちを尊敬しなくなり、耳を傾けないようだと善悪の見分けがつかなくなってしまう。そして、間違いを多くおかすことになるわ。自分が何者か分からずに、年を重ねてしまうと取り返しがつかなくなり、そういう人だらけになると世の中がおかしくなってしまうのよ」

──なんとも深い……話です。いやぁ……それにしても、言葉の通じない場所にやってきて、そこまで深く感じられるモノなのですね。

「もちろん、完璧にコミュニケーションは取れないわ。私は日本語が話せなくて、日本はあまり英語が話せる人が多くない。でも今は凄くテクノロジーが進化しているから。例えば、携帯のカメラを日本の雑誌に向けるとGoogleが翻訳してくれる(笑)。

それに日本では電車や地下鉄に乗っても、英語表記が全てで成されているから。移動をする時も、問題はなかったし。それに日本の鉄道は、凄く使い勝手良くて移動は本当に楽だった。もうホントに科学の進歩に助けられたわ(笑)」

──私がキルギスに行った時には、キリル文字にお手上げでした(笑)。

「そうなってしまうのは分かるわ(笑)」

──それにしても今の話を訊いているだけで、ヴァレンティーナが日本を満喫できたことが伺えます。ただ、それでも日本を訪れたり、練習をするにしても世界戦前に……というのは驚きです。初めての場所で、世界戦の準備をするという発想は。慣れ親しんだ、勝手が分かった場所で既に気心が知れた選手たちと練習する方が不測の事態が起こる可能性は低くなるかと。

「日本ではマーシャルアーツ文化が確立されていて、強い選手がいることは分かっていたわ。今では30年も指導を受けているパベル・フェドートフは、私がプロ格闘家になる過程で多くの異なったルールの競技に出場させていたの。空手や柔道など、日本から伝わってきたマーシャルアーツの試合にも出ていた。空手は一つの流派でなくて極真会館のフルコンタクト空手から、松濤館、糸東流という伝統派空手まで試合に出ていたわ。だから、ここからマーシャルアーツが広まったことが分かってやって来たの。

トレーニング・キャンプで最も重要なことは、トレーニング・パートナーの存在。多くの人が綺麗で設備の整ったジム、栄養士が食事の管理をしてくれるとか、そういうことを重視しているけど、私にとって一番重要なのは練習仲間たち。今回のキャンプでは、必要な練習は全てできたわ」

──日本で練習していては世界から置いていかれる。UFCにファイターになるには米国に行って練習する必要がある。そのような声も多く聞かれます。

「技術面でいえば、米国に行けばUFCファイターになるための全てが用意されているのは確か。でも何より米国にいることでUFCファイターになりやすいのは、距離という現実的な側面が大きいはず。日本と米国は離れているわ。とても遠い。

やっぱり、米国と近い距離にいる方が組織には属しやすい。UFCの本部はラスベガスにあるから、そういう意味で米国にいると、全てが簡単だから。決してファイターとしての経験云々でなく、日本人選手の問題は距離でしょう。実際、キルギスで生まれた私もUFCファイターになるまで、数えきれないほどの海外遠征を経験したわ。

遠征……旅行が、私の人生にとってとても大きなパートを占めているの。だから、米国に行かないといけないっていう意見には関しては、選手の経験値でなくUFCとの距離感だと認識しているわ」

──日本の選手が米国で練習する必要があると思うことに関して、どのように感じますか。

「良いことよ。世界中、どこで練習して役立たないことはないから。全てが経験になる。世界中に別々のトレーニング・パートナーがいて、そういう選手たちと練習をすることでより経験を積めることは間違いない。そうすることで、より危険なファイターになれるから。私は声を大にして言えるわ。『米国に行って練習しましょう』、『タイにいくべきよ』って。ヨーロッパ、アジア、世界を渡り歩いて練習すれば、本当に強いファイターになれるから。

もちろん、日本で練習していても強くなれるわ。ただし、よりワールドワイドなステージ、トッププロモーション、UFCのような世界で一番の場所で戦うためには絶対に外に飛び出していくべきね」

<この項、続く

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