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【WNO Championships】レポート─05─ミドル級この一番。ヒメネス、廃コインランドリー産ヒールに下る

【写真】カウチが優勝候補筆頭のヒメネスを内ヒールで破る (C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されたWho’s Number One Championships。ライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメント──は2021年グラップリング界の最大のイベントとなった。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第5回はミドル級のこの一番──マイキー敗北に通じるアップセット=ジェイコブ・カウチ✖ロベルト・ヒメネス戦の模様をお伝えしたい。


<ミドル級1回戦/15分1R>
ジェイコブ・カウチ(米国)
Def.1分54秒 by ヒールフック
ロベルト・ヒメネス(米国)

ペドロ・マリーニョの負傷欠場を受け、直前で代打出場を決めたのはジェイコブ・カウチ。カウチは、話題の組技集団「デイジー・フレッシュ」ことペディゴ・サブミッション・ファイティング──ホドリゴ・バギの黒帯ヒース・ペディゴの指導の下、廃コインランドリーの建物にマットを敷いただけの粗末な道場に寝泊りし、修行僧の如く練習漬けの日々を送っている若者たちで、当初このトーナメントにエントリーしていたアンドリュー・ウィルツィがその出世頭だ──のメンバー。昨年のパンノーギ大会の紫帯を制して茶帯を取得しているカウチ。キャリアを考えると大抜擢だ。

この大チャンスに緊張した面持ちもなく、やる気に満ち溢れた満面の笑顔で登場したカウチは、試合開始後すぐに座る。

自分のやることは最初から決まっているとばかりに迷わずリバースデラヒーバでヒメネスの右足に絡んでいったカウチは、内側から左足を絡めてサドルを作り、外ヒールへ。

まだ入りが浅く回転して逃れたヒメネスだが、カウチはヒメネスのヒールを抱えたまま1度シットアップ。足の絡みを深くした後で、再び外ヒールを極めにゆく。ここも回転して防御するヒメネス。

両者が場外際まで行くと、カウチはいったん外ヒールのグリップを離して動きを止め、逆回転して中央まで戻ってゆく。

そこでヒメネスの右足を逆に持ち替えたカウチは、内ヒールを仕掛ける。ここも足を伸ばして回転して凌いだヒメネスは、カウチの左腕をホールドしながら立ち上がった。

が、サドル(インサイドサンカク)をしっかりとロックしているカウチは、ヒメネスのグリップが離れたところでさらに内ヒールで捻り上げる。

次の瞬間、ヒメネスは大声を上げてタップ。わずか2分弱。代役カウチが、優勝候補筆頭のヒメネスから一本勝ちという大殊勲を上げた。

ほぼ無名のカウチが、迷わずひたすら自分の得意技を仕掛け続けることで、本命のヒメネスに自分の戦いをする機会を一切与えずに極めきっての大金星。いかにオーソドックスな柔術の技術が高くても、足関節技への高度な対応ができないと不覚を取りかねない。グラップリング最先端における現実を、改めて教えてくれる試合だった。

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