【Shooto2021#06】石井逸人の挑戦受ける、安藤達也─01─「つもり…ずっと取り組み方が中途半端だった」
【写真】ユライアが見守る中でスパーリング。アルファメールでの練習以前に、川原波輝の言葉が眠れる大器の目を覚ませたか(C)MICHINORI TANAKA
9月20日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2021#06で、環太平洋バンタム級王者の安藤達也が石井逸人を挑戦者に迎え、タイトルの初防衛戦を行う。
Text by Shojiro Kameike
昨年11月、元DEEP王者で修斗初参戦の大塚隆史と対戦し、1Rに右足を痛めTKO負けを喫した安藤にとっては、この試合が復帰戦となる。
防衛戦を控えて米国で練習を行っていたという安藤に、帰国直後にインタビューしたところ、彼の口から発せられたのは大きな意識改革だった。
――環太平洋王座の防衛戦を控え、今回はアルファメールで練習していたそうですね。どれくらいの期間、どこに行っていたのでしょうか。
「7月27日に日本を出発して、8月24日まで練習していました。アルファメール所属の川原(波輝、DEEPストロー級王者)選手から、『米国で一緒に練習しよう』と誘われたんですよ。
以前、川原選手が日本に帰ってきている時、KRAZY BEEで練習したことがあって。そこから川原選手と一緒に練習したいと思うようになったんです」
――そのように思ったのは?
「川原選手と僕ではスタイルが違っていて、お互いに無いものを交換できるんです。フリーになってから、一緒に練習する仲間はいるけど、『誰かが見てくれる練習』というのは少なかったんですよね。
僕も4年前にアルファメールで練習したことがあったし、今回誘われてアルファメールに行こうと決めました。自分の中では、去年11月の敗戦も大きくて……」
――大塚隆史戦で、1Rに足を傷めてTKO負けとなった試合ですね。
「はい。あの試合は、自分でも一番納得していない負け方でした。『今のままじゃダメだ』ってことが、身に染みて分かりましたね。お灸を据えられたというか。今まで自分のやり方でやってきたけど、あの負けが反省するキッカケをくれました。MMAには、いろんな攻め方がある。もっと高い水準で練習していかないとダメだと思ったんです」
――カーフを効かされたのか、アクシデントだったのか。その敗北でアクシデントとはとらえなかったということですね。
「アクシデントも含めて、負けは負け。それが格闘技じゃないですか。僕たちが求めているものは結果であり、勝利でしかなくて」
――確かに、そのとおりです。
「周りの人からも、『あれはアクシデントだったよね』と声をかけられることもありました。でも、そう言われると逆に――自分の中では、アクシデントというだけで終わらせることができなかったんです。
何よりも、完全燃焼できなかったことが、一番悔しかったです。何も出せずに、1Rにあんな形で試合が終わってしまったので。あの試合に向けて、それまでのキャリアの中で一番練習していたし、調子も良かったんですよ。それで何も出すことができずに終わって……3カ月ぐらい気持ちも引きずっていました」
――その状態を、どうやって克服したのですか。
「そんな時に、KRAZY BEEで川原選手と一緒に練習したんです。川原選手が、僕の気持ちを変えるキッカケを作ってくれました。川原選手は僕より1歳上だけど、MMAのキャリアは僕より短いんですよね」
――プロデビューは、安藤選手のほうが1年早いですね。
「でも遅く始めている分、意識が高い。そんなキャリアの差を乗り越えて、DEEPのチャンピオンになっているし、ONEにも出場しているじゃないですか。何て言うんだろう……言っていることと、やっていることが伴っているというか。ファイターとしての意識を背中で教えてくれるし、直接言ってくれることもあるので」
――川原選手からは、どのようなことを言われたのですか。
「格闘技は千日修行だと思え、と」
――千日修行……比叡山をはじめとして、天台宗の「千日歩いて悟りに近づく」ための千日回峰という修行のことですね。
「引退するまでファイターとして何ができるか毎日考えろ、と言われました。引退したら何でもできる。でもファイターとしての時間は今しかない、と。そうやって僕の意識をリマインドしてくれたんです」
――引退するまで……今、ファイターとして引退のことを考えたりすることはありますか。
「僕も、もう31歳になりました。プロデビューから8年経っているんですよ。正直、どれだけ選手を続けられるのかは分からないです。今はMMAも選手の年齢が上がっているし、頑張っている先輩方もたくさんいます。
でも、大塚さんとの試合でケガをして負けた時、『今回これぐらいで終わってよかったけど、後遺症が残るケガだったら引退だったな』と思いました。そこでファイターとしての最後を意識したんです。残りの格闘技人生、終わりを意識しながら、今できることを精一杯やらないといけないなって」
――なるほど。
「ずっと格闘技への取り組み方が中途半端だったんだと思います。もちろん自分の中では、その時にできることを全力で頑張ってきたつもりですよ。でも今思うと、それは『つもり』でしかなかったんだなって。ノラリクラリやっていたんじゃないかと思いました」
――その気持ちは、アルファメールでの練習でどう変わったのでしょうか。
「大塚さんとの試合前は、『それまでのキャリアの中で一番練習していた』って言いましたけど、そんなもんじゃないです。高いレベルで、ガッチリ練習することができました」
<この項、続く>