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【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月─その壱─ヴェウドゥム✖フェレイラ「タップ&リリース」論

【写真】微妙なタップ、レフェリーはストプしない。そんな時、青木ならどうするのか (C)PFL

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年5月の一番、第一弾は5月6日に行われたPFL2021#03 からヒーナン・フェレイラ✖ファブリシオ・ヴェウドゥム戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年5月の一番、最初の試合をお願いします。

「ファブリシオ・ヴェウドゥム✖ヒーナン・フェレイラですね」

──ヴェウドゥムが三角絞めを仕掛け、フェレイラがタップしたと技を解いた後でパウンドの猛攻を受けてTKO負けした一戦です。

「結論としてレフェリーがストップしていないのに、サブミッションは放しちゃダメです」

──ダメですよねぇ。

「そこにつきます。僕は良くも悪くも、ギブアップするまで放さないタイプなんですよ」

──もちろん、存じ上げています(笑)。中指を立てなければ、勝負ですし当然だと思っています。

「僕はいっちゃう。人によっては『折れるなら、タップを促せ』っていう人がいるじゃないですか」

──まぁ、その後のシーンは見たくないので、そのような意見も出てくるのでしょうが、レフェリーがいるわけですからね。選手が勝ち負けを決めることは、本来はできないはずです。

「分からないんですよね(苦笑)、そういう意見は。結果サブミッションを極め切るって、悪者にされる傾向があります」

──失神KOはそうではないのに……。

「ハイ。サブミッションの場合は、この試合もそうですけどタップをしていてもレフェリーが気付かないことがある。それで放してもらってから『タップしていないよ』と言くるから、レフェリーが止めるまで放すことはできない。そこでいうとレフェリーもしっかりと確認して止めないといけないと思います。スタンプ・フェアテックスの時みたいに、『タップしていない』って言ってくる人間がいるから。

僕は柔道出身だからよく思うのですが、柔道は審判が触って止めないですよね。見込み一本もない」

──岡田弘隆✖中村佳央戦を思い出します。

「岡田✖中村もそうだし、『一本、それまで』の世界だから時差で折れちゃうことがあり、それでも揉めてしまうこともあります。でもMMAはレフェリーがストプという掛け声で割って入るのだから、放すのはダメです」

──本来は同じモノだとしないといけないですが、やはり絞めで落とすのと関節を逆にするのは見た目も違うというのがあります。ヴェウドゥムは三角絞めだった。ならレフェリーが気付かないなら解くのではなく落とせば良いと感じました。

「うん、うん、うん。折るより見た目もソフトだし、すぐに起こせばダメージもない」

──それと国内でタップは3度叩くという認識ではないですか。でもフェレイラが3度叩いていなくて。誤魔化しタップで。

「それは僕、練習で指摘します。ソフトタップみたいなのをする奴がいると。『お前、それどっちだよ』って(笑)。微妙なタップをする奴には『こっちが悪く言われるんだから、ハッキリしろよ』と言います。それ以上やるとケガするかもしれないから、中途半端なことをするなって。試合でも、その気持ちは当然のようにあるので、ハッキリと参ったの姿勢を示せと思います。中途半端にするなよと。

ファブシリオに関しては凄く微妙なタップで、その前から殴られるポジションなんだから絞め続けるべきですよ。あのタップなら、『ハッキリしろ』って技を続けないと」

──仰る通りです。

「バーバルタップとは違いますからね」

──自分、大昔にサンボの練習をしている時に腕十字で一瞬にしてヒジを負傷したことがあり、サラリーマン時代だったので腕を吊って職場へ行き注意されて。それ以降は極められそうになるとタップより、声を出して知らしていました。

「口でタップするのは、僕らも練習でありますし。口の方が速いですからね。僕も口で言う方です(笑)」

──特に練習ですし、ケガをしてまで我慢することが自分には理解できないですし。

「だからこそ逆をいえば試合ではタップだろうが、口で伝えようがレフェリーが止めるまで極め続けないといけないということです。『あぁ』でなく『タップ、タップ』とか口にすれば止めることはあっても。それでもレフェリーが止めるまで、と思います」

──一つお伺いしたいのですが、腕十字は搾りながら極める方法と、一瞬にして支点の逆側に持っていきケガをする可能性が高い極め方があると思います。後者の腕十字を試合で使う選手は『怖い』という風に見られることがあります。そこについて、青木選手はどのように思われていますか。

「試合においては、取られる方が悪いです。それに支点系で取る人はズレることがあるから、勝つためにはいつも支点系でなく搾る系も使うようになると思いますし。だから試合では支点系も使って良いです。

跳びつきでも、立ち関節でも一瞬で決まる怖い技ですよ。でも、ルールで許されているから使いますよね」

──試合はもちろん根性勝負ですが、技に入られるともう負けだっていう認識が私のなかにあって。もちろんケガをしても負けたくない、タップを拒絶する選手もいると思いますけど。

「仰る通りで、『腕が折れても、タップはしない』という人が実際にいます。でも我慢比べじゃないですからね。アレって違うとは思います。で、折っちゃうと極めた方が悪く言われる。勝負ですからね、甘いこと考えずに極めに行くべきなのに。

そこは試合よりも練習でよく感じることです。寝技が下手な子は、おかしな逃げ方をするので。『そんな風に逃げようとして、ケガをされるとこっちが困る』と思うこともありますよ」

──ダメ押しのように、この試合結果がフェレイラの勝ちからノーコンテストに変更されました。

「それってファブリシオだからですよ。そこはプロモーション側も、誰の試合でああなかったかを考慮する」

──ヴェウドゥムは「タップした、だから放した。で殴られた。しょうがない」という口調で、相手を強く非難はしなかった。だから反論も起きず、同情論だけ勝ち取れました。

「そういう論争を起こさなかった。そこも含めて、強いです。ただし、レフェリーがストップするまで放しちゃダメ。レフェリーもしっかりと職務を遂行してください。

あとセコンド。腕十字を我慢している自分のところの選手がいれば、タオルを投げて良いです。特に女子、柔軟だからかって我慢させていると、一瞬して壊れる時がありますからね。セコンドは注意してほしいです」

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