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【IBJJF】ついにノーギ・アダルト黒&茶でヒールフック、そして外掛け解禁が正式決定!!

2021.01.22

【写真】2007年から始まったノーギ・ワールズで内掛けストレートフットロック、トーホールド、ヒザ十字だけでなくついにヒールや外掛けが解禁される (C)IBJJF

ついにノーギのアダルト黒帯と茶帯の部においてレッグリーピング(外掛け)とヒールフックが解禁された。IBJJFが2021年度のルール改正を発表し、かねてから予告されていたように、従来は禁止されていた相手のヒザを捻る攻撃がほぼ全面的に認められることになった。
Text by Isamu Horiuchi

このルール改正により、つまり外ヒールや内ヒールに加え、トーホールドの形から外側に圧力をかけることや、アキレス腱固めから相手の自由な足側に動いて極める動きも可能となる。


(C)SATOSHI NARITA

さらに、それらの足関節技のセットアップにきわめて有効な外掛けポジションも解禁。

インサイド・サンカク、ハニーホール、サドルロック等さまざまな名称で呼ばれるこの形への入り方、そこから極めるまでの繋ぎ方、その防ぎ方こそ、近年のグラップリング・シーンにおいて最も顕著な技術的発展を遂げてきた分野だ。

(C)DAVE MANDEL

今回のルール改正は、これらの技術の普及と有効性をIBJJFが認めてのものといえるだろう。

ただし、しばしば見事なヒールでのフィニッシュにつながる、スタンディングから飛びついてカニバサミを仕掛けてのテイクダウンは禁止のまま。が、グラウンドの状態にて、背中を付けて回転するなどして同様の形に足を絡めて外掛けを作るムーブは可能だ。

カニバサミ=フライング・シザーは正面からでない、横から仕掛けは許されても良いと思われるのだが……閑話休題。

(C)KEISUKE TAKAZAWA

また、スタンドからのいわゆるイマナリロールは、従来から禁止されている「相手を掴まずに引き込む」動きに該当するため反則となる。

ノーギではない道着着用の柔術部門の全てのカテゴリー、またノーギ部門での全てのマスターの部や紫帯以下の帯色では、従来通りレッグリーピングとヒールフックは反則のままだ。

この動きを受けて、今までIBJJF大会を敬遠しがちだった足関節技師たち──ゴードン・ライアン、ゲイリー・トノン、クレイグ・ジョーンズら──が積極的に参戦し、最先端の攻防がIBJJFノーギの舞台でも見られることが期待される。その結果、これまでは世界大会と呼ぶには寂しい陣容であることも多かったノーギ・ワールズが、ADCC世界大会に匹敵する舞台となる可能性もある。

オズワルド・ファダ系モニーウ・サルモの弟子ジュリオ・セザーは足関王=O Rei do Chave-de-Perna(オヘイド・シャウジペゥニャ)と呼ばれた柔術家。後のGTF代表だ

ブラジリアン柔術にあった足関節系の技術は、かつてブラジルでは主にリオ北部──豊かなリオ南部の人間からズブービオ(※郊外)柔術という蔑称で呼ばれていたオズワルド・ファダに代表される非グレイシー系の道場で細々と受け継がれてきたもの。

それもあり、ブラジリアン柔術界においてはヒールのみならず足関節技をスブービオ柔術が使う邪道とみなす風潮が根強く存在した。当初IBJJFがノーギ部門でさえ全面的にヒールを禁止したことは、安全性への考慮だけでなく、こうした足関節技への意識も無関係ではなかっただろう。

その技術が今世紀に入り、ジョン・ダナハーとその弟子たち等による技術改良を経て、各種ノーギグラップリング大会において一大センセーションに。その勢いはとどまるところを知らず、今回ついに、競技柔術の最高権威までもがその価値を認めざるを得なくなった形だ。

競技統括団体が、自らの都合でルールやその価値観を「上から」一方的に押し付けるのではなく、競技者とその側にいる指導者たちが技術を改良&創造し、価値観を変え、ルールの変革を促してゆく──そんな可能性が柔術には秘められていることを示した、このルール改正の歴史的意義は大きい。

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