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8月23日、ONE記者会見に向けて【Gray-hairchives】─11─Apr 2nd 2012 Zorobabel Moreira

Zoro【写真】初期EVOLVEのブラジル人の中心はイッサとゾロ、そしてアレックス・シウバだった (C)MMAPLANET

23日(木)、東京都新宿区パークハイアット東京で来年3月31日のONE日本大会に向けての記者会見が開催される。

同会見まで、ONEの歴史を選手か会計者のインタビューを通して振り返ってみたい。Gray-hairchives─1995年1月にスタートを切った記者生活を、時事に合わせて振り返る──第11弾はゴング格闘技230号より、2012年3月31日に開催されたONE03でフィリップ・エノモノと腕十字で下したソロパベル・ゾロ・モレイラのインタビューを再録したい。

ホベウト・ゴルド・コヘイアの黒帯からイヴォルブMMAでムエタイを学んだゾロ。MMAファイターとしてポテンシャルは素晴らしく高いモノがあったインタビューでも時折りの覗かせた気の弱さに通じるブラジルへの望郷の念が、彼をMMAファイターとして大成させる壁となった。

この後、イヴォルブを離れることになったゾロだが、彼のインタビューからイヴォルブMMAの柔術サイドの成り立ち、なぜブラジル人があれだけシンガポールで指導しているのかが理解できるだろう。


――エノモトと対戦し、見事な腕十字で一本勝ちを収めました。

「とても嬉しい。凄くハードなトレーニングを積んできたので、ハッピーだよ」

――勝因はどこにあったと思いますか。

ローと首相撲からのヒザ蹴りが強烈だったゾロ

ローと首相撲からのヒザ蹴りが強烈だったゾロ

「僕のバックグラウンドは柔術だけど、シンガポールに移って来てから、必死になってムエタイの習得に励んできた。同時にレスリングもやってきたし、その成果が出た試合だったよ」

――9月のアンディ・ウォン戦でも、ケージ際の組み合いのなかで、見事なヒジを決めていたことが印象に残っています。青木選手も『ゾロは凄く強い』と言っていますし、日本のストリーミング中継の解説をしていた北岡選手も凄く強いファイターだと言っていました。

「ポーハ、凄く嬉しいよ。僕はブラジルにいたころから、シンヤやキタオカの試合を見てきたから。シンヤの素晴らしい柔術や、キタオカの動きが凄く好きだった。その2人にそんなこと言ってもらえるなんて……、ポーハ、こんなに凄いことはないよ」

――青木選手はゾロには極められてしょうがないと言っていました。

「シンヤが持ち上げすぎている。僕だって、シンヤに極められまくっているよ(笑)」

――ゾロが、柔術を始めたきっかけは何だったのですか。

「僕はリオデジャネイロ州マカエウという人口2万人ほどの小さな街に住んでいた。10歳のとき、バーリトゥードに興味を持っていた僕を見て、母親が『柔術がやりたいの?』って尋ねてきたんだ。母の友人の一人が柔術の先生で、そこで練習できるからって。それから僕の人生は柔術なしでは成立しないものになった」

――その時はもうUFCが始まっていたのですか。

「UFCが始まる前で、柔術のイメージは決して良いものではなかった。柔術家同士の仲が良くなかったからね。けれども、幸運にも僕らの街は小さかったから、アカデミーも一つしかなかったから、問題なかった。だから、母も柔術をやったらなんて勧めてきたんだと思うよ(笑)」

――ゾロ自身は、どのような性格の子供だったのですか。

「学校では時々、喧嘩はしていたよ。柔術を始めてピタリとやめた。柔術が自信を与えてくれたんだと思う。ただ、柔術を僕が始めて、最初の先生だったヴィオビエリは直ぐにリオに戻ってしまったんだ(笑)。彼の代わりにカーロス・グレイシーJrの教え子のアダォン・ジャナルドがやって来て、指導を受けるようになった」

――そこでグレイシー・バッハとの関係ができたわけですね。

米国勢が台頭する以前、リオで行われていた柔術は質が非常に高く茶帯で世界王者になるのは相当な力の持ち主だ

米国勢が台頭する以前、リオで行われていた柔術は質が非常に高く茶帯で世界王者になるのは相当な力の持ち主だ

「アカデミーが、グレイシー・バッハの支部になったからね。実際にリオデジャネイロに移り住み、柔術やMMAのトレーニングを積むようになったのは、カリーニョスがカリフォルニアに行った後で、ホベウド・ゴルド・コヘイアの指導を受けたんだ」

――つまりグレイシー・フュージョンで学んだということですね。

「2005年にグレイシー・バッハ・アメリカができて、マーシオ・フェイトーザに続きカリーニョスもカリフォルニアに行ったあと、僕の練習仲間の多くがゴルドのアカデミーに通うようになった。それ以前に僕は学校をやめて、練習と柔術の指導に専念するようになっていたんだ」

――柔術を勧めたお母さんも、学業を止めることになるとは思いもしなかったのではないでしょうか。

「母は学校をやめることに反対したし、将来を心配していたよ。だって、ほとんどの柔術家がファイターや指導者になっても生活が成りたっていなかったからね。最後は応援してくれるようになったよ。リオに引っ越してからも、僕はゴルドのところでインストラクターを続けたんだ。ゴルドのおかげでMMAAの色んな技術を身につけることができた。ポーハ、ゴルドは本当にたくさんのものを僕に与えてくれたんだ」

――プロフィールによると、柔術世界チャンピオンとなっていますが、いつ、何帯で優勝をしたのですか。

「2005年の茶帯メジオ級だよ」

――リオ時代のムンジアル茶帯優勝の価値は相当なものです。

「チジューカ・テニス・クルービーで行われていたムンジアルは特別だ。会場の雰囲気もそうだし、レベルも今とは違う。色帯だといくら強い柔術家でも、お金が掛かりすぎるからLAで行われるムンジアルに出向いていけないからね。コンペティション・スポーツとして急激に進化を遂げた柔術のトーナメントで優勝を狙うには、打撃やスタンドのトレーニングをしている時間はない。だから、僕は柔術を愛しているけど、MMAに専念しているんだ。ムエタイのトレーニングを一生懸命やり、ムエタイのことも大好きになったよ(笑)」

――MMAで目標としているファイターはいますか。

「目標というわけではないけど、PRIDE時代はヒョードルとミノタウロが僕のヒーローだった。ポーハ、PRIDEは大好きだったよ。今はアンデウソン・シウバとジョン・ジョーンズの試合を夢中になって見ている(笑)」

――なるほど、ムエタイが大好きなのも分かる気がします(笑)。そういう意味でも、イヴォルブMMAという最高の環境でトレーニングが積めていますね。

「その通りなんだ。リオデジャネイロでもハフェエル・ドスアンジョス、デウソン・ペジシュンボら、凄く良い練習仲間がいたけど、シンガポールと米国に分かれた形だね。イヴォルブは世界に例を見ない偉大なムエタイ戦士が揃っていて、柔術の強豪もゴルドのところから集まっていた。2年半前にイヴォルブからチームに参加しないかという誘いを受けて、断る理由はなかったよ。ポーハ、シンガポールにやってきて、僕の人生は劇的に変わったんだ」

――気候的には問題ないと思いますが、何もかも整っているシンガポールの風情は、リオの良い意味でリラックスできる雰囲気とはかなり違うように感じます。

「ムイト・サウダージ……、シンガポールに来て、一度もブラジルには戻っていない。ポーハ、いつだって家族や友人が恋しいよ。でも、僕はここに強くなるために来た。今の世の中、明日はどうなっているか分からないことだらけだ。だから、今、僕はここで強くなることだけを考えている。もう少し若い時にこっちにやってきていたら、寂しさに負けて、ブラジルに帰っていたと思う。でも、この年齢になると、自分が何をすべきが分別がついているよ。シンガポール名物のチキンライス(海南鶏飯)だって、十分に美味しいしね(笑)」

――ムエタイのトップに習う打撃は一味違いますか。

「全く別モノだよ。ブラジルではボクシング中心で、パンチばかり練習していた。そのパンチも気持ちで対戦相手を圧倒するような感じだったんだ。イヴォルプでムエタイを習うようになって、数多くのテクニック、間合いを習うことができた。ただ、腰や足、スネの使い方は実は柔術とムエタイでは共通点が多く、柔術をしっかりと練習していたおかげで、首相撲の上達が随分と早かったと思う。柔術をやっていたことが、ムエタイの習得を助けてくれるなんて、本当に格闘技は面白いよ」

――柔術、ムエタイと並びゾロの武器は、その体格にあると思います。

「以前は77キロで戦っていたけど、シンヤが『ポーハ、70キロで戦えるよ』って言ってきたんだ。ビックリしたよ、そんなつもりは全くなかったからね。でも、一度トライして様子を見てみようってことになり、70キロに落したんだ。問題なく体重は落せた。でも、動けるかどうかは分からない。その時、リッチ・フランクリンがジムにきていたんだけど、彼がミットを持ってくれた。凄く、動きに切れを感じたんだ。これならライト級で戦えそうだって自信がついた。アンディ・ウォンとは72キロのキャッチウェイトで戦ったから、正式にライト級で戦ったのは、一昨日が始めてだった。70キロで戦うようになったのは、シンヤのおかげだね」

――青木選手と相当に仲が良さそうですね。

「シンヤは最高の友人さ。ポーハ、シンヤのブラジリアン柔術は本当に美しい。ノーギのスペシャリストだけど、ギを着ていても強いんだ。ただ、楽しんでいるだけなのに。僕はムエタイも柔術も使えるけど、MMAとして機能しているかといえば、シンヤほどではない。今回もその部分をシンヤに習ってきたんだ。試合で課題も見つかったし、まだ僕はMMAビギナーなんだよ」

――ゾロがビギナーだったら、世界中ビギナーだらけになってしまいます。

「フフフ、ありがとう。僕がこんな風に戦えるのは、イヴォルブという素晴らしいチームのおかげなんだよ」

――ところで、青木選手は4月20日にベラトールでエディ・アルバレスと戦います。

「ポーハ、試合の予想はしたくないんだけど、シンヤは完全に準備ができていることだけは確かだ。ケージ対策もバッチリだし、ムエタイも凄く進歩した。柔術はいうまでない。あんなにMMAのことばかり考えている人間はいないよ。練習が終わると、絶対にノートにその日の練習のことをメモしている。シンヤは特別な奴だよ」

――ゾロ自身も、すでに元UFCファイターのアンディ・ウォン、世界中で結果を残してきたフィリップ・エノモトを倒したわけですが、次の目標は何でしょうか。

「そうだね……、今は与えられた試合で結果を残していくことかな」

――ONEライト級のナンバーワンコンテンダーはゾロだという見方も成り立ちます。

「これから先のことを考えるよりも、今、しっかりとなすべきことをやっていきたい。MMAは世界中に強くて危険なファイターがいる。だからこそ、僕のなすべきことは練習して、もっと強くなることなんだ」

――なるほど、ゾロが凄く慎重で謙虚なことは分かりました(笑)。

「僕の夢は世界のベストファイターと戦うことだよ。チャトリが判断すれば日本でも、UFCでも戦う力が備わっているということになる。チャトリからゴー・サインが出た時こそ、僕が世界の舞台で戦う時だよ」

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