【AJJC2016】アダルト紫帯フェザー級出場、宇野薫<01>「一般の会員さんも強い方はたくさんいます」
【写真】道着の宇野薫は息の長いファンにとっては、さほど珍しい姿ではないかもしれなない。しかし、新調されたばかりの紫帯姿は凄く新鮮だ(C)MMAPLANET
10&11日(土・日)に東京都足立区の東京武道館で開催される国際ブラジリアン柔術連盟=IBJJF主催のアジア柔術選手権2016(Asian Jiu-Jitsu Championship 2016)に何と日本MMA界のパイオニア、レジェンド宇野薫がアダルト紫帯フェザー級に出場する。
MMAでは世界の頂点で戦ってきた彼がブラジリアン柔術のトーナメントになぜ、しかもアダルトの部で出場するのか。飽くなき格闘技を追及する姿勢、そして永遠の格闘少年振りが窺える話を訊くことができた。
──アダルト紫帯フェザー級に出場する宇野薫選手です。そもそも柔術のトーナメントに出ようと思ったのはいつ頃なのですか。
「最初に柔術の試合に出たいと思ったのは、先生である植松(直哉)君が2010年にムンジアルでベスト8になった時ですね。UFCファン・エキスポでフレジソン・パイシャオンとグラップラーズ・クェストのスーパーファイトで戦った後にLAに寄って、その時に初めてムンジアルを見たんです。
UCLAロングビーチ校のミラミッドという会場で、植松君の試合を見た──その印象が凄く強く残っています。あの時、いつかムンジアルに出たいと思うようになりました。なので、もう6年以上も前ですよね──柔術の試合に出たいと思うようになってから。その気持ちはずっとありました」
──最近ではワールド・マスターに出たいということを宇野選手は言われていましたが。
「一番出てみたいのはムンジアルです。ただ、元々所属していた慧舟會は柔術の道場でなかったですし、それまでブラジリアン柔術をちゃんと習ったことがなかったので。植松君に習うようになってからも、『なんで白帯を巻いているんですか』って聞かれたりして(苦笑)。
実はウィキペディアで黒帯になっていて……そんなことないのに。ADCCでジョン・ルイスとペドロ・デュアルチという黒帯に勝った時(1999年2月)に、ヘンゾ・グレイシーが『ウノも黒帯だ』って言ってくれたことがあって、それだけで黒帯って書かれたみたいで(笑)。黒帯なんてもらったこともないですし、慧舟會でも黒帯になっていないのに」
──柔術あるあるですね(笑)。
「本格的にブラジリアン柔術の稽古を週に一度でるようになったのも、植松君がネクサセンスを開いてからで3年ぐらいです。それまではスクランブル渋谷時代にプライベートレッスンを受けていて、そのあとで一般の柔術クラスに参加させてもらったことがあったぐらいで、道着の練習はほとんどしていなかったです。
あっ、その前には2009年に米国へMMAの出稽古の旅に出たときにホイラー・グレイシーやクレバー・ルシアーノと練習をさせてもらったことがありました」
──あの時もホイラーから「なんでウノが白帯なんだ?」って言われていましたね(笑)。
「道着を貸してくれた人が白帯だったから、そのまま白帯を巻いていて(笑)。それからも道着を着た柔術の練習が自分のなかでのトレーニングの一環になるまでは、随分と時間が掛かりました。でも、植松君に週一で習うようになってからも、ずっと白帯のままでしたよ」──植松さんが宇野選手に柔術の練習を薦めたのは、あくまでもMMAのためであって柔術トーナメントで勝つためではなかったですよね。
「ハイ。柔術の稽古を始めて、その技術を体感すればするほど柔術が分からなくなりました。柔術とMMAは別モノだという捉え方をしつつも、MMAのために柔術の練習をするというスタンスは変わらなかったです。
ほんと、こんな技もあるんだ、あんな技もあるんだって毎回が驚きの連続で。そして、自分もあんな風に仕掛けることができるようになりたいなと思いつつ、MMAの選手なのでMMAのために練習してきました」
──そもそもMMAのトップファイターであり、レジェンドである宇野選手が一道場生になり柔術を習い、仕事帰りや学生さんと一緒に汗を流すというのも、凄い話ですね。
「そうですか……。僕自身、植松君にプライベートで指導を受けてきて、Team OTOKOGIでも練習してきて、その流れでネクサセンスの一道場生になって普通に最初から習いたいという気持ちになったんです。月曜日は柔術が二コマあるので、だいたい立川に通わせてもらっています」
──一般の道場生とはどのようなスパーリングになるのですか。
「どのような……いや、やられますよ。巧いなって思う人はたくさんいますし。楽しいです(笑)。最初は道場生の方たちのことも個人的には分かっていなかったので、手を合わせる前は帯の色を確認して、『この人は青帯だな』って思ってスパーリングをしたりして。
今はもう名前もどんな風に柔術をする人かも頭に入っていますが、それまでは分からないので正直、警戒するところもありました」
──これを読んでネクサセンスの道場生の方が『そんなことない』と気を悪くするかもしれないですが、『俺、宇野薫から取ったんだ』って言いたくて無茶をしてくる人がいるかもしれないわけですから。
「でも一般の方との練習というのは慧舟會でずっとやってきたことで、今でもUNO DOJOの会員さんともやっていますので、そういう面は大丈夫です。慧舟會は後半のほうはプロ練習がありましたが、一般の会員さんと汗を流すという前提でやっていましたから。
だから逆に一般の道場生の方のなかにも、一つのことに秀でた個性のある人がいる。それこそプロに通じる一芸を持った人がいることも知っていましたし。だから、ネクサセンスで一般の道場生の方と練習することにもすぐに馴染めたと思っています。本当に一般の会員さんも強い方はたくさんいますからね」
<この項、続く>