【Interview】 ゴイチ・ヤマウチ「アイドル? K-1の魔娑斗だよ」
【写真】パラナ州クリチーバ在住のヤマウチ。そう、シュートボクセがある格闘技人気の高い都市で彼は育った。早くからMMAに馴染める環境も、彼を後押ししたに違いない。
Goiti Ymauchi――、ゴイチ・ヤマウチ。日本語をアルファベットにすれば、本来はGoichi Yamauchiとなるところだろうが、このアルファベット表記こそ、彼がブラジリアンの証ともいえる。1993年1月5日生まれの20歳の日系ブラジル人ファイターは、叔父の指導を受け14勝1敗の戦績とともにBellatorとの契約を果たした。
日本人ファイターとは縁が薄い、世界第2位のMMAプロモーション=ベラトールで、リョート・マチダを思わせる家族とともに戦うファイターが初陣を迎える。
Text by Marcelo Alonso & Photo by Gleidson Venga/Team PVT
――日本生まれと聞いているけど、詳しく教えてもらえないだろうか。
「僕は愛知県の安城市で生まれた。そして、3歳半の時に両親とともにブラジルに引っ越してきたんだ。僕は日本生まれだけど、両親はブラジル人。おばあちゃんが日本人なんだ」
――ところでベラトールとサインをしたけど、もうデビューは決まっているのかい?
「決まったよ。9月13日のカリフォルニア州テメキュラで行われる大会だ」
――その日はシーズン9フェザー級トーナメントが開幕するけど、8人の出場選手のなかに君の名前は見られないね。
「トーナメントに出る前に、ワンマッチで戦うことになっている。まだ対戦相手は聞かされていないけど、すぐにでもベラトールのスタッフから連絡があると思う(ムサ・トリヴァーと対戦という話も聞かれるが、まだ正式発表はない)。それから、正式発表があるはずだよ。トーナメントは来年になってから、出ていくことになるだろう」
――練習環境的にはかつてのリョート・マチダのように家族内で行っているというのは本当かい?
「ほとんどの練習はアレナ・ジムで行っている。ただ、MMAはチーム・ヤマウチの一員として活動しているんだ。コーチは叔父のオサム・ヤマウチ。チームでMMAのために柔術、フィジカル・コンディショニング、ムエタイのトレーニングを積んでいるよ」
――打撃を使って、仕留めるスタイルだけど、柔術トーナメントへの出場経験もあるのかい?
「青帯時代だけど2度、ブラジレイロのチャンピオンになっているよ。一応はナショナル王者だよ。南米選手権でも優勝しているし、パラナ州の大会だったら20回以上チャンピオンになっている。柔道も地区大会レベルだと、たくさんトーナメントに出ていたよ。それからボクシングでもパラナ州のチャンピオンになった。15歳でアマチュアMMAで戦うようになり、7勝0敗でプロに転向したんだ」
――そしてプロでは現在14勝1敗というレコードを残していると。
「その通りだよ。アイアン・ファイトとスマッシュのフェザー級チャンピオンにもなっているよ。そう、ベルトを2つ持っているんだ」
――それだけ若い頃からMMAをやってきたゴイチにとって、アイドル視していたファイターはいるのかい?
「MMAではいないよ」
――MMAでは……ということでは、他のスポーツや格闘技ならアイドルがいたということ?
「1人だけいるよ。K-1チャンピオンだった魔娑斗だ。魔娑斗と自分を重ねてきた(笑)」
――でも、キックでなくMMAファイターを目指したんだね。ではアイドルでなくて、好きなファイターは?
「エメリヤーエンコ・ヒョードルが好きだった。でも、崇拝するというほどじゃない。ヒョードルはアニマルだよ。引退しちゃったけどMMA史上、最高のファイターだったと思っている。凄くアグレッシブなのに、感情に流されるんじゃなくて、目標に到達するために、しっかりと分析してそういう戦いをしていた」
――試合を戦う上で、魔娑斗やヒョードルに影響は受けたのだろうか。スタンドとグラウンド、どっちで戦うことを望んでいるんだい?
「基本的に自分では、かなり戦術家だと思っているよ。グランドとか、スタンドだとか、僕の好みで戦いたい局面っていうのはない。その時々で、最も有効な戦い方をしたいんだ。対戦相手の動きを理解して、どうやって崩していけるのか。そこでベストな選択をして戦っている」
――柔術からMMAへ進出したのは、自然とその道に進んだということだろうか。
「家族の影響が大きいよね。子供の頃から柔道と空手の稽古をしていたし、家族みんながMMA、PRIDEを視るのが好きだった。だから、僕もMMAにハマったんだ。で、柔道や空手、柔術だけでなく、ムエタイ、ボクシング、レスリングの練習もするようになった」
――まだ20歳、今後もフェザー級で戦っていく予定だろうか。最近は体重を落とすファイターが、とても増えているけど。
「これ以上、体重を落とすつもりは一切ないよ。ライト級に階級をアップすることはあっても、バンタム級に落すことは有りえない。いずれにせよ、今はフェザー級で戦うことしか考えていないよ。凄く調子が良くて、動けているからね」
――今、UFCはブラジルでも凄い人気を誇っているけど、最終的にはUFCファイターになることを目標にしているのだろうか。
「それはないよ。ベラトールと契約できて、凄く満足しているしね。ベラトールは質がどんどん良くなっているし、いつかUFC以上のイベントを開くことができるんじゃないかと思っている」
【写真】まだあどけなさも残るヤマウチの素顔。ベラトールで世界のトップへ上り詰めることができるか?
――なるほど。では今現在、日本とは連絡を取り合っているの?
「今の日本に帰ってみたい。トライしたことはあるんだけど、上手くいかなかった。日本に戻ることが、僕の夢なんだ。でも、飛行機代も高いし、なかなか実現できていない。ベラトールでファイターとして成長すれば、日本行きも身近なものになると思っている。日本に残っているファミリーと、本当に長い間会っていないし、絶対にまた日本へ戻りたいと思っている。ベラトールでなくても、日本で戦う機会もあるだろうし、絶対に日本を訪れる日はやってくると信じているよ」