この星の格闘技を追いかける

【TUF11】第1週 新シーズンは怒涛の14試合で幕開け

3月31日(水・現地時間)、ケニー・フロリアンが五味隆典を破ったUFC FIGHT NIGHTの放送終了後、米SpikeTVでは、ジ・アルティメット・ファイター<The Ultimate Fighter(TUF)Season11>がスタートした。

【写真】この日行われた全14試合で、最もインパクトを残したクレイトン・マキンニー。チャーリー・リンチの鼻をくの字に折り曲げ、最後はスイッチから左ストレートを叩き込んだ (C) ZUFFA

11回目となる今シーズンは、ライトヘビー級四天王時代を形成したチャック・リデルとティト・オーティズがコーチを務め、6月のフィナーレに向けた生き残り合戦が行われる。

28名のミドル級ファイターがUFCトレーニングセンターに足を踏み入れると、青いTシャツを着たリデルに赤いTシャツを着たティトを引き連れ、ダナ・ホワイトがやってきた。


「UFCトレーニングセンターへようこそ。ティトとチャックは知っているだろう。お前らをトレーニングしようと早くも闘志を燃やしている」と語るダナは、今回の特別ルールについて「ここに28人がいる。14名がハウスに進んだ後、プレリミナリ―・ファイトとして7試合が行われるが、その敗者にはワイルドカード枠が作られる。2名が対決し、勝者は準々決勝に復活できる。判定に持ち込もうなど絶対に思うな。そんなことをしたら一生後悔する」と語気荒く説明した。

さっそく、28名によるエリミネイションマッチが始まると、オクタゴンサイドでは、ダナに加え、TUF1、TUF3でそれぞれコーチの経験があるリデルとティトが慣れた様子で各選手の戦いを見守った。

【写真】ハイキックで豪快な勝利を挙げたイェイガーだったが、スタークのレベルも微妙なところ。果たして、その実力は―― (C) ZUFFA

■ジェイミー・イェイガー×ベン・スターク
TUF11は、Art of Fightingに参戦経験を持つジェイミー・イェイガーとベン・スタークによる一戦から。右肩に大きなタトゥーを入れる両者はともにオーソドックスに構える。イェイガーは、開始早々、右ミドル、左ロー、前蹴り、スーパーマンパンチ、左のハイと一気に畳み掛けるや、ガードの上ながらも右ハイでスタークをなぎ倒す秒殺勝利を挙げた。

これには、ティトも「すげーキックだ」と脱帽、ダナも「図に乗った態度で登場したが、本物のようだ」と評価し、イェイガー本人も「これでみんなが俺のハイキックにビビるだろう。まだまだ見せてやるよ」と自信満々に語った。

■ブラッド・タバレス×ジョーダン・スミス
第2試合では、Icon SportやX-1に参戦する教師ファイター=ジョーダン・スミスと、ハワイ出身でローカルプロモーションMMA4戦無敗のブラッド・タバレスが激突した。

オーソドックスのタバレスは、左ローから左フック、スミスの蹴り足を掴むと一気にケージへ押し込む。途中、スミスが強引に投げを狙うも、タバレスは腰を落として踏ん張り、スミスが突き放そうとしたところで二―を突き上げたが刹那、素早い右ストレートでダウンを奪った。

すぐさまレフェリーが試合をストップ、試合後のタバレスは「俺の夢に一歩近付いた」と陽気に話した。

【写真】小柄なマクレイだったが、随所に高い運動能力を垣間見せ、アクシデント気味ではあったがウォーカーに完勝した (C) ZUFFA

■クリス・マクレイ×クレバーン・ウォーカー
第3試合のクリス・マクレイとクレバーン・ウォーカーの対戦も呆気ない結末となった。

マクレイは、ローからワンツー、組み付いてきたウォーカーをノーモーションで投げ捨てると、右肩から落ちたウォーカーは肩を脱臼、グランド状態で「タイム」を連発した。勝ったマクレイはケージのポストを蹴ってバク宙を披露するなど、身体能力の高さをうかがわせた。

■ジェームズ・ハモーティ×ノーマン・パライシー
「フランス人ファイターのイメージを変えてやる」と意気込むノーマン・パライシーは、柔術とレスリングを融合させたスタイルで日本のケージフォースやベラトールFCにも参戦経験を持ち、対するジェームズ・ハモーティはMMA5勝1敗のキャリアを誇る。

試合は、開始からパンチをフェイントにダブルレッグで豪快なテイクダウンを奪ったパライシーだったが、ハモーティがパンチを顔面に返すと、パライシーはケージを背に引き込むようにしゃがんでしまう。

上になったハモーティはパウンド、エルボーを落としながら、マウント、サイドを奪っていく。パライシーも潜ってハモーティの足をすくい上げるが、疲労が色濃くスイープを完遂できないまま、押し潰され、再びマウントからパウンドの連打を浴び、1Rが終了した。

しかし、鼻から出血は見られるものの、自らの足でしっかりとセコンドの下へ戻ったパライシーは、ここで「アイ・クイット」を発した。

トレーナー陣から「バカなことをいうな」と叱られるも、レフリーのハーブ・ディーンに「戦えるか」と問われると、やっぱり「ノー」と即答するパライシー。これには、さすがのリデルも「俺のジムの人間だったら、即刻首だ」と呆れた表情をみせ、ダナも「違う仕事を探すべきだな」と苦笑いを浮かべた。

■ニック・リング×ウッディ・ウェザーバイ
日本のDEEPやベラトールFCに参戦し、MMA10勝無敗のパーフェクトレコードを誇るニック・リングは、バックマウントから側頭部にパウンドを放ち、ウッディ・ウェザーバイに完勝した。

■カイル・ノーク×ワレン・トンプソン
豪州のMMAイベント=ウォリアーズ・レルムに参戦経験があり、EliteXCではスコット・スミスと対戦している(2RKO負け)カイル・ノークは、ワレン・トンプソンに強烈なエルボーで攻勢に。目を覆いたくなるほどの大流血に追い込み、2R判定勝利とした。

■コート・マクギー×セス・マシンスキー
血の跡が残るオクタゴンでは、ローカルプロモーション時代に元UFCファイター=ジェレミー・ホーンと対戦経験のあるコート・マクギーとセス・マシンスキーが激突した。

試合は、マシンスキーからテイクダウンを奪うマクギーと、マクギーからパンチでダウンを奪うマシンスキーという構図で一進一退の攻防に。2Rを終え、試合は延長ラウンドへと突入したが、最後はマクギーが7人目の予選通過者となった。

■ビクトー・オドネル×クリス・カモージー
幼い表情ながらも、両腕、胸に大きなタトゥーを入れるカモージー。そんな試合は、両者粗いパンチが目立つ大味な展開となった。

サウスポーのカモージーが要所でヒザ蹴りをヒットさせるも、オドネルもダブルレッグからのテイクダウンで反撃。延長ラウンドでは、鋭いローを見せたカモージーだったが、続くパンチはやっぱり大振り。それでも豪快な払い腰を見せると判定勝利を勝ち取った。

【写真】自らダークホースと語るウスコラ。足技から最後は素早い右フックを叩き込み、クーパーを下した (C) ZUFFA

■ケイシー・ウスコラ×ブレント・クーパー
MMA18勝15敗という多くの試合経験を持ち、KOTC時代には小路晃から勝利を挙げているケイシー・ウスコラは「俺はダークホース」と自ら言い切った。

その宣言通り、ウスコラは左ミドル、前足への逆関節蹴り、ハイキックは空を切ったが、すぐさま首相撲で捉え、離れ際に強烈な右フックを叩き込みブレント・クーパーを沈めた。

■ジョー・ヘンリ×コンスタンティノス・フィリポ
ジョー・ヘンリは、コンスタンティノス・フィリポの飛びヒザ蹴りやパンチに苦戦を強いられたが、差し合いから下になった瞬間、巧みに腕十字に捕えて逆転の一本勝ち。

■リッチ・アトニート×ライル・ステフェンス
リッチ・アトニートは、ダブルレッグでテイクダウンを奪うと、ライル・ステフェンスのタックルにも、がぶって冷静に対処するなど、安定した戦いで判定勝ちを挙げた。

■ジョシュ・ブライアント×グレッグ・レベロ
序盤からパンチで幾度もラッシュを仕掛けたジョシュ・ブライアントは、中盤以降、グレッグ・レベロのヒザ蹴りで反撃を許すも、最後は判定で逃げ切った。

■ジェイセン・フリン×チャールズ・ブランチャード
ジェイセン・フリンとチャールズ・ブランチャードの対戦は、ブランチャードがグラウンドでトップをキープ、パウンドを落とし続けてTKO勝ち。メンバー最低身長の男が生き残りに成功した。

■クレイトン・マキンニー×チャーリー・リンチ
前髪を中央に寄せて垂らす特徴的な髪型が印象的なチャーリー・リンチと、左右で黒と緑に髪を染めたクレイトン・マキンニー。両者の対戦が、本エリミネイションマッチの最後となった。

TUFには不可欠といえる強いキャラクター性を併せ持つ両者、試合はマキンニーが強烈なインローからリンチのパンチに合わせてダブルレッグでテイクダウンを奪うと、そのタイミングには、ダナも「ビューテフルテイクダウン」と思わず声が出る。

また、ローから、リンチのパンチに潜りこむようにダブルレッグを仕掛けたマキンニー。踏ん張られても、払い腰にスイッチして豪快に投げ捨てる機転を見せると、バランスを崩して下になっても、下から積極的に腕十字を狙っていく。

そんなマキンニーのパンチで、鼻を骨折したリンチが気合いで戦いを続ける中、最後はマキンニーがスイッチから左ストレートを叩き込み勝負あり。終わってみれば、マキンニーが総合力の高さを誇示する一戦となった。

「あんな鼻見たことない。リンチはタフに戦った」とご満悦の様子のダナが話す通り、試合後リンチの鼻は「くの字」に曲がる痛々しい姿に。それでも、全14試合を終え、「予想を超える良いマッチが見られた。このメンバーも才能の宝庫のようだ」と語るダナは、「チームは明日発表される」という言葉を残し、ジムを後にした。

また、この日は穏やかに観戦したリデルとティトもしかり。過去に2度対戦し、2敗を喫しているティトにとっては、因縁の相手リデル、そして、元マネージャーで天敵ダナを前に、いつまでも行儀よく黙っているはずはない。次回チーム編成を皮切りに、激しい戦いが本格的にはじまりそうだ。

PR
PR

関連記事

Movie