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【UFC99】宇野薫、正式参戦へのプロセス

f49208e13月17日(火・現地時間)ズッファより宇野薫のUFC復帰戦が、6月13日(土・現地時間)ドイツのケルンにある同国最大規模の屋内競技場、ランクセス・アレーナで開催されるUFC99『Franklin vs Silva』で行われることが正式発表されている。ここでは、その正式決定に至るプロセスを振り返ってみたい。

Text by Manabu Takashima

【写真】1月下旬、米国ジム巡りを行った宇野薫。そこで掴んだものを日本に戻ってきて、確かなものとしようとしている (C) MMAPLANET

2003年9月のエルミス・フランカ戦以来、実に6年ぶりのUFC出場となった宇野。HERO’S、DREAMとキャリアを重ね、常に一般層に向けた総合格闘技の認知度アップを胸に刻み戦ってきた彼は、昨年末にUFC復帰を心に決めた。

BJ・ペンと世界ライト級王座決定戦でドローという戦いをした次の一戦が前述のフランカ戦でのノーPPVマッチ、しかも第一試合出場を強いられた敗戦後に契約が満了となってしまった。「忘れ物がある」――、2001年1月、PRIDE全盛期に誰よりも早くMMAのルーツへ挑戦を決めた宇野のオクタゴンに賭ける想いは想像以上に強かった。


1月、米国の強さを肌で知るためにMMAジムを巡り、その際にサンディエゴで行われたWECでズッファのダナ・ホワイト社長にUFCで戦いたいという想いを伝えた。

米国MMAの実力を体に刻みこもうとした渡米期間中に、宇野がUFC復帰に関して起こしたアクションはこれだけだった。アクションというには大仰な想いの伝達――、ラスベガスに移動しUFC94を観戦した際も、直接交渉よりもエクストリーム・クートゥアーでの実戦トレーニングを選択した。

もっとも直接交渉もなにも、この時点で彼はまだズッファと交渉するマネージャーすら決定していなかった。そういう意味では、ゴング格闘技誌上でUFC出場の意思を明らかにした昨年末から、彼のUFC登場への道は何も進展していなかったのである。

英語も決して堪能とは言えない彼に交渉能力はない。
器用そうでいて、その実は口下手。
他人に不快感を与えるような振る舞いなどもってのほかだが、同様に自らの信念にそぐわない行動を誰よりも嫌う。

そんな彼の本質に触れた者が、スクラムを組み、チーム・カオル・ウノ日加連合と呼ばれるアンオフィシャルなグループは生まれた。その中心的な役割を果たす彼の友人が、宇野のラスベガス滞在中に、ズッファのマッチメーカーであるジョー・シルバに、彼のUFCに賭ける想いをメールに綴った。

5日後に届いたジョーの返答は、「私は宇野が大好きだ。彼は素晴らしい人間だ。ただ、今、自分は200人の契約選手を抱え、特にライト級は最も層が厚い。少し時間が欲しい」というものだった。一見、社交辞令にも聞こえる彼の言葉だが、日本人特融の考えてみる=否定するということではない。業界内でジョー・シルバが時間をくれという台詞は、必ず何らかの答えが戻ってくるのと同意語。準備期間が与えられたと捉えることができる。

そして、正式発表の1ヶ月以上前に、ズッファから宇野のもとへ4試合ディール、第1戦がケルンで行われる対キング・フィッシャーというオファーが届いた。

宇野はマネージメントサイドを固め、2月16日にUFC復帰を正式なものとした。「ライト級でどこまでやれるのか不安は多い。でも、ここでもらったチャンスを生かしたい」という判断だった。

直後に宇野は世田谷・千歳烏山にある八隅孝平率いるロータスクラブ・パラエストラ世田谷で金曜日に行われているプロ練習=YBTのトレーニングに参加にするようになった。

青木真也、北岡悟、植松直哉、朴光哲、金原正徳、田村一聖、土屋大喜ら一世代から二世代若い選手らと汗を流す。同世代+年長者は、佐藤ルミナぐらいのもの。慧舟會でも、礒野元指導の柔術クラスに顔を出すようになったとも聞く。

「フィッシャーはアグレッシブな打撃の持ち主。パンチ、キックだけでなくヒザ、そしてヒジも打てます。間合いのコントロールも上手いので、その辺りを特に警戒する必要があると思います。ぺースを握られると、勢いに乗って攻撃してくるので、一瞬たりとも油断はできないです。凄く強いのでやりがいがあります」という宇野。

覚悟を固めた、3ヶ月を迎える。

■UFC99『Franklin vs Silva』対戦予定カード

<ライトヘビー級/5分3R>
ヴァンダレイ・シウバ(ブラジル)
リッチ・フランクリン(米国)

<ウェルター級/5分3R>
マイク・スウィック(米国)
ベン・サンダース(米国)

<ウェルター級/5分3R>
マーカス・デイビス(米国)
ダン・ハーディ(英国)

<ライト級/5分3R>
スペンシャー・フィッシャー(米国)
宇野薫(日本)

<ライト級/5分3R>
デニス・シバー(ドイツ)
デール・ハート(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ステファン・シュトゥルーフ(オランダ)
デニス・ストニッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)

<ウェルター級/5分3R>
ジョン・ヘザウェイ(米国)
リック・ストーリー(米国)

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