【on this day in】8月26日──2006年
【写真】緊張でがんじがらめになっていたような動きの固さで、岡見はUFCでのキャリアの第一歩に踏み出した (C)MMAPLANET
UFC62
@ネヴァダ州ラスベガス、マンダレイベイ・イベンツセンター
「ラスベガスのオープニングファイトは寒々しい。世界の最高峰と誰もが認める前夜から、それは変わっていない。ボクシングの慣習なのか、周囲に溢れている余興と一攫千金に行く手を阻まれるためか、メインカードが始まる頃に満員に膨れ上がる観客席はガラガラ。ホント1万2000人のキャパに2000人ぐらいしか入っていない。ケージサイドではジョー・ローガンの解説が肉声で聞き取れてしまう。言ってみれば冷え冷えとしているのだ。そんな館内を青ざめた表情で、まるで操り人形の如くガチガチになった岡見勇信はオクタゴンに足を踏み入れた。アラン・ベルチャーを相手に非常に固く、ぎこちない動きながらしっかりとトップ、バックマウントを奪い判定勝ち。こうしてサンダーのUFCでの生活は始まった。以来、13勝を挙げ世界タイトルにも挑戦した。4連勝が1度、3連勝が3度。改めて振り返ると、とんでもないことを彼はやってきたことが分かる。特筆すべき点は、連敗が一度しかないということ。言ってみれば、誰も期待していなかった状況からここまでの戦果を残したわけだ。あれから9年、岡見は大変なプロモーションと契約し、ウェルター級初陣に臨む。年齢も練習環境も、生活も変わった。ただし、あの時から、彼のポテンシャルを信じて疑わなかった人がいる。最後の挑戦だからこそ、その人物の『ゲン』に耳を傾けてほしい──と年寄りは思ってしまう。勝手ながらそれが自分にとっての夢の続き、だ。そして、偉大な岡見勇信の記録を抜く、日本人ファイターの存在を待ちたい。あとねぇ、そのUFCで日本大会が迫っているけど、プロモーションで日本人最高のUFCファイターが関われない──というか、それが当然にならざるを得ないことが──どうにも歯がゆい」
on this day in──記者生活20年を終えた当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。