【Special】MMAビジネスの今をシュウさんに聞く(02) WSOF & RFA
【写真】3月23日に旗揚げ第2弾を開催するWorld Series of Fighting 。シュウ・ヒラタ氏は様子見の段階という。その理由は…… (C)MMAPLANET
UFCに続き、メジャーと呼んで良い存在になったBellator MMA。そのスカウティング能力の有能さを語ってくれたシュウ・ヒラタ氏。今回は選手をマネージメントする立場として、両メジャーとの契約について引き続き語ってもらった。
シュウ・ヒラタ氏に聞く『MMAビジネスの今』、第2回はさらにWSOFやRFAなど人材育成、あるいは再生の場となるプロモーションについて語ってもらった。
<インタビュー第1回はコチラから>
――ベラトールのスカウティング能力の高さは、マネージメントサイドでも認められているわけですね。
「さらにいえば、どのファイターもベラトールの希望する長い契約書にサインすることには躊躇するはずなんです。それはUFCに行けなくなるんじゃないかという想いに通じています。そこを説得して、サインをもらうわけですから、この作業はズッファのタレントリレーション部門は必要ないモノですよね」
――特別なケースは例外として、今後ズッファはベラトールのファイターを取ることはない。では逆に今回のようにUFCで大量リリースがあった場合、結果を残しているファイターがカットされたケースでも、ベラトールはUFCのファイターに食指を伸ばさないとシュウさんは、考えられていますか。
「サムがいつも言っていることは、『なるべく、UFCをリリースされた選手は取りたくない』ということなんですね。それはSpikeに移行してからは、さらに強くなっています。やはり自前のスターを育てたいということで。もしかすると、一生交わらないかもしれないですが、ファンにとってはどっちが強いのかという根本的な比較論、この部分はとても大切になってきます。だから、ファン心理を考えると、今後はどうなっていくのか」
――ランペイジ・ジャクソンなら欲しいという特例は、すぐにでも生まれてきそうなものなのですが。
「そこは私にも分からないですね。リアリティTVショーのコーチにランディ・クートゥアーやフランク・シャムロックを登用していることを考えると、何かあるかもしれない。ジョン・ジョーンズの件で、揉めたグレッグ・ジャクソンも連れてきているのも、面白い点です。ベラトールは、非常に興味深い戦略を立てています。ジョシュ・バーネットには全く興味を示さないとか」
――あれほどの肝入りで登用したキング・モーが、すぐにこけてしまった。投資の対象の試合結果が、どうなるのか分からない。そこが難しく、ファンの立場では面白い部分です。
「キング・モーはあれだけ煽っていたし、プロモーションとすれば頭の痛いケースでしょうね(笑)。いくらストーリーを仕立てても、結果までコントロールはできない。そのなかで新しいスターが出てくるのは、やはり選手層の厚いUFCとベラトールになるわけです。
ベラトールはリアリティTVショーを始める。つまりはトライアウトも始まるわけです。TUFのトライアウトは業界唯一のスカウティングシステムだったのが、もう一つできる。これは凄いことだと思います」
――この現状は、初めからUFCでなくベラトールを頭に入れるファイターが生まれるケースを生むことになるのでしょうか。UFCでトップになるよりも、ベラトールの方がなりやすく、いち早く有名になれるという考えの下で。
「来るかもしれないです。ただ、今はそうではないです。スポンサー的な部分では、圧倒的にUFCの方がお金を稼ぐことができます。なんといっても、PPVシェアという巨大な飴がありますから。この状態を覆すのは、かなり厳しいと思います。
だってチャンピオンになって一度でも防衛戦をすれば、PPVシェアができる契約が増えてくると、選手にとっては半端ない金額が手に入ってくるわけですから」
――ではUFCでトップになるのは諦める。UFCを1勝2敗でリリースされるなら、ベラトールでレギュラーになって稼ぎたいと思うファイターなら、出てくるのではないですか。
「う~ん。そのように考えているトレーナーは、出てきています。そういう考えのトレーナーからの相談は、実はもう相当受けているんですよ。例えは悪いかもしれないですが、凄く有名な大学教授の息子が二人いて、長男は東大に行かせても大丈夫だけど、次男は東大では苦労するから、他へ進学させたいと思うのと同じで。
ただし、そこを選手に納得させるのは至難の技です。『俺が一番強い』と思っている人間が集まっているわけですから。逆にそれぐらいの気持ちでいないといけないですし」
――UFC、ベラトールよりも小さな戦いの舞台もMMAPLANETでは注目しています。そのなかでRFAやWSOFは興味深いイベントなのですが、実際のところマネージメントサイドからすると、どのような印象を彼らに持っているのでしょうか。
「WSOFに関しては、様子見という段階です。最終的に戦う場所を決めるのは選手、それが僕たちのルールなのですが、凄く良い選手がWSOFの名前を出した時は、慎重に判断するように助言しています。
NBCスポーツの中継は、最少で年に2回で3年契約。となると最少のままでいくと、3年で6イベントしか中継がない。上手くいって増えてほしいけど、だからこそ様子見をする必要がある。アスレチック・コミッションは1大会で12試合までは多く認めるのですが。13試合になると弾く州が多いです。
これはジョー・シルバもショーン・シェルビーも言っていましたが、13試合を認めてくれるコミッションが増えれば、彼らの仕事もどれだけ楽になるか――と。そうすると、WSOFは最少で年間24試合になってしまう。
ごくごく、普通に数学的に考えても年間の試合数が非常に限られてくるわけです。そうなれば、やはり僕としてはおススメはできないです」
――例えば日本人選手でUFCをリリースされ、ベラトールも取らない。でも、米国で試合を続けたいからWSOFを視野に入れるというケースは考えられます。
「それは有りですね。う~ん、要はボードッグとかIFLとか色々見て来て……、何か空気感というものを感じるようになっているんです。そこを払拭できるような活動をWSOFに期待したいですね。だから、現時点ではWSOFとは1試合契約が一番だと思います。
RFAに関してはネブラスカ辺りで、地道にカジノなどを回っている。結構頑張ってやっていると思います」
【写真】RFAを主戦場とするセルジオ・ペティスは、アンソニー・ペティスの実弟でまだ19歳。若いファイターが飛躍的に力をつけている(C)GONGKAKUTOGI
――人材育成の場としては、大いに注目できるプロモーションだとは思うのですが、ビジネスの場ではまだない?
「セルジオ・ペティスなどですよね。ダスティン・キムラもそうですし、マックス・ホロウェイもそうなんですが、20歳そこそこでしっかりと試合ができる選手が増えているのは、恐ろしいです。もう水垣選手なんて、本人に言っているのですが、もう中堅。あと2、3年が勝負だよって」
<インタビュー第3回はコチラから>
<インタビュー第4回はコチラから>
<インタビュー第5回はコチラから>