【Thai Boxe Mania】ジョルジオ・ペトロシアン、1年2カ月振りの復帰へ
【写真】地元で復帰戦に臨むペトロシアン、実戦の勘と同時に気になるのは拳の具合だ(C)MMAPLANET
24日(土・現地時間)イタリア・トリノのパラルッフィーニで行われる「THAI BOXE MANIA 2015」で、ジョルジオ・ペトロシアンが約1年2カ月ぶりの復活を果たす。
2009年のK-1 WORLD MAX優勝を皮切りに、K-1 WORLD MAX連覇、GLORYライト級スラム優勝など、70キロ世界最強の名を欲しいままにしていたペトロシアン。しかし2013年11月にアメリカで行われたGLORY12ライト級世界トーナメント準決勝ではアンディ・リスティのリーチと飛び込みの速さに苦戦し、生命線とも言える距離を支配することが出来ず。ロープに詰まったところで右を打ち抜かれてマットに沈んだ。このKO負けを最後にペトロシアンは表舞台から姿を消し、地元イタリアで約1年2カ月ぶりにリングに戻って来ることになる。
リスティ戦での衝撃的なKO負けにも通じる──長年の拳の負傷からのブランク、そして新世代ファイターたちの台頭により、どうしても存在感が薄れてしまったペトロシアンだが、この敗戦は実に6年11カ月ぶりのもの。この試合だけでペトロシアンの実力が衰えたと判断するのは安易だろう。抜群のディフェンス能力をベースに、左ミドルと左のヒザ蹴り、そして変則的な軌道で繰り出す左ストレート。パンチ&ローを主体とし、対角線コンビネーションを軸に試合を組み立てるダッチ・キックボクシングとは一線を引くペトロシアンのファイトスタイルは、ペトロシアンが所属するサトリ・グラディエートリウム・ネメシスのアルフィオ・ロマノット会長によって作り上げられた。
松濤館空手出身、オランダで見たムエタイの試合に感銘を受けて独学でムエタイを学んだロマノット会長。プロとして第一線で活躍することはなかったが、アマチュアで試合経験を積み、ムエタイにキックボクシング流のアグレッシブさを加えた独自の技術体系=“ダイナミックムエタイ”を作り上げた。
まさにヒジ&首相撲なし、よりアグレッシブさが求められるK-1・GLORYルールで勝つためのムエタイスタイル。ペトロシアンはそれを体現するファイターであり、“ダイナミックムエタイ”で世界の頂点を取った男ということになる。
ペトロシアンを下したリスティは昨年3月のGLORY世界ライト級王座決定戦ではダビット・キリアにKO負け。そのキリアも初防衛戦でロビン・ファン・ロスマーレンに敗れるなど、GLORYのタイトル遍歴だけを見ても、トップが目まぐるしく入れ替わっているのが70キロの現状だ。リスティにこそ敗れたものの、キリアとロスマーレンには完勝しているペトロシアンが第一線に戻ってくるとなれば、70キロの勢力図は大きく変わるに違いない。
ペトロシアン復帰戦の相手はトルコのエルカン・ヴァロル。ヨーロッパを中心に試合を続けているヴァロルだが、ISKAとWKNのヨーロッパタイトル以外に目立ったタイトル獲得歴はない。昨年6月にアルバート・クラウスとも対戦しているが、パンチ&ヒザ蹴りで前に出るクラウスの圧力に下がり続け、判定負けを喫している。
タフで粘り強さが目立つものの、実力的には70キロのトップ戦線に食い込む選手とはいい難く、近距離でのフック系のパンチ主体で攻めるスタイルは、サウスポーで距離を取って戦うペトロシアンにとっては相性のいいものだ。すでに4月11日(土・現地時間)イタリア・ミラノで行われる「Oktagon 2015」で昨年のK-1 WORLD MAX王者エンリコ・ケールとの一戦を控えているペトロシアン。まずはヴァロルとの復帰戦をクリアし、ケールとの新旧K-1 WORLD MAX王者対決につなげたいところだろう。
急速に力をつけるKunlun Fight、ムエタイルールで世界トーナメントを行っているTOP KINGなど、この1年で大きく様変わりした世界の70キロの戦線。どのプロモーションを主戦場に戦っていくのかを含め、ペトロシアンがどう絡んでいくのか。まずはその第一歩、本格復帰への試運転となるヴァロルとの復帰戦だ。
なお、同大会にはジョルジオの実弟アルメン・ペトロシアンやWFCイタリア王者のヴィットリオ・イエルマノらも出場する。