【VTJ 6th】フライ級T優勝、扇久保博正 「UFCで戦いたい。日本で戦いたい相手は元谷選手しかいません」
【写真】VTJフライ級のベルトを腰に巻いた扇久保。今後の進路とともに、VTJが今後どのような階級でトーナメントを開催し、このベルトはトロフィー替わりなのか防衛戦なども予定されているのか気になる……(C)TAKUMI NAKAMURA
4日(土)東京都大田区の大田区総合体育館で開催されたVTJ6th。メインイベントではVTJフライ級トーナメント決勝戦が行われ、扇久保博正がシーザー・スクラヴォスに判定勝利し、VTJフライ級王者としてベルトを腰に巻いた。
<VTJフライ級T決勝/5分5R>
扇久保博正(日本)
Def.3-0:50-45, 49-46, 49-46
シーザー・スクラヴォス(米国)
2月のVTJ4thからスタートしたフライ級トーナメント、決勝まで勝ち進んだのは扇久保とスクラヴォス。扇久保は1回戦で春日井健士に判定勝利すると、準決勝ではカナ・ハヤットにリアネイキッドチョークで一本勝ちし、決勝に駒を進めた。一方のスクラヴォスは1回戦でマモルをリアネイキッドチョークで秒殺し、準決勝では神酒龍一に判定勝利。日本のトップ選手を立て続けに撃破し、決勝進出を果たした。
1R、オーソドックスに構えるスクラヴォスに扇久保が右ロー、シングルレッグからテイクダウンを奪うも、スクラヴォスがギロチンを狙いながら立ち上がる。打撃でプレッシャーをかける扇久保は左ハイキック、スクラヴォスはそれをキャッチしてテイクダウンし、亀になる扇久保のバックに回り込む。じっくりバックキープして、チョークを狙うスクラヴォス。これに長時間捕まる扇久保だったが、反転してインサイドガードに戻すと、パスガードを狙いながらパンチとヒジ打ち。スクラヴォスの動きに合わせてギロチンへ。スクラヴォスが頭を抜いて上のポジションを取り返したところでラウンド終了となった。
2R、ジャブからパンチをまとめて前に出るスクラヴォス。扇久保はステップを使って距離を取りつつジャブと右ローを蹴る。これがずばりとハマり、前に出るスクラヴォスの前足に扇久保が何発も右ローを蹴り込んでいく。さらに扇久保は左ミドルと左ハイ、これでスクラヴォスの出足を止める。ローを嫌ってか、スクラヴォスがサウスポーにスイッチすると、すかさず扇久保が右の三日月蹴り。これをスクラヴォスのボディに突き刺し、スクラヴォスが苦悶の表情を浮かべる。扇久保は組みつこうとするスクラヴォスを突き離し、ボディにヒザ蹴りを叩き込んだ。
3R、ここもサウスポーに構えるスクラヴォス。扇久保はインローを蹴って、右ハイキックにつなげる。スクラヴォスの蹴り足を取ってテイクダウンを狙う扇久保だったが、スクラヴォスが扇久保をケージに押し込んで逆にテイクダウンを奪う。ここで扇久保はケージに背中を預けながらフックガードでスクラヴォスの体を浮かしてダブルレッグへ。これでテイクダウン、一気にマウントポジションを奪う。スクラヴォスの動きに合わせてギロチンを狙う扇久保。スクラヴォスも脇を差して体を起こし、扇久保の足をたたむようにして上のポジションを取ってマウントへ。扇久保はTKシザースでポジションを返し、インサイドからパンチを落とした。
4R、すぐに組み技の攻防になり、扇久保が一気にギロチンへ。これは極まらず、試合はスタンドの攻防に戻る。サウスポーのスクラヴォスは左ミドルを蹴って前に出る。2Rの三日月蹴りで右足を痛めたという扇久保は蹴りは使わず、シングルレッグでテイクダウン、スクラヴォスのバックに回り込む。ここからじっくりと時間を使い、リアネイキッドチョークを狙いつつ、トップキープしたままで4Rを終えた。
5R、扇久保が左フックからダブルレッグで早々にテイクダウン。足を一本ずつ抜いてパスガードを仕掛けながら、隙を見てはパンチとヒジを落とす。ここで扇久保はパス狙い→パンチ・ヒジを繰り返し、スクラヴォスを消耗させていく。トップキープで時間を使い、確実にダメージを与えた扇久保は終了間際に足関節でのフィニッシュにもトライ。これは極まらなかったものの、最終ラウンドも終始攻め続けて試合終了を迎えた。
判定はジャッジ1名がフルマークの50-45、ジャッジ2名も49-46と差をつけ、扇久保の完勝と言ってもいい内容に終わった。試合後にはDEEPフライ級王者・元谷友貴への対戦アピールも飛び出した扇久保。MMA PLANETの個別インタビューではスクラヴォスの攻略法、そしてファイトスタイルの変化について語ってくれた。
――改めてベルトを巻いた心境を聞かせてもらえますか。
「勝てたことは嬉しいですけど…まだまだって感じですね」
――試合前にはどんな作戦を立てていたのですか。
「5Rを通して打撃で展開を作っていこうと思いました。5分5Rだったので、あまり組み過ぎるとスタミナをロスすると思ったので。そうは言っても1Rでいきなり組んじゃったんですけど(苦笑)」
――スクラヴォスが構えをスイッチするタイプで、打撃の練習&対策は難しくなかったですか。
「それは全くなかったし、そういう考えで練習するのはやめました。過去に対策練習をやりすぎて、自分の力を出せなかったことがあるんです。だからもう相手どうこうは気にせず練習して好きにやろう、と。シーザーがどっちに構えてもローと前蹴りを蹴るつもりでした」
――オーソドックスのスクラヴォスはジャブからパンチで前に出てくるスタイルだったので、右ローはかなり蹴りやすかったのではないですか。
「むちゃくちゃ蹴りやすかったです。カットする感じがないからバンバン蹴ることができ。シーザーはパンチ自体もその場で打ってコンビネーションをまとめる感じだったんですよね。多少、ボディブローは強いなと思いましたけど、あれだと僕が足を使って距離を取れば確実にローが入ります」
――ケージサイドで試合を見ていて、2R終盤、サウスポーにスイッチしたスクラヴォスに蹴った右の三日月蹴りがかなりダメージを与えたように見えました。
「あれは相当効いていました。シーザーがサウスポーになったら右の三日月蹴りを蹴ろうと思ってずっと練習してたんで、ばっちり決まりました。ただあの一発で右足の指を痛めてしまって(苦笑)」
――それで打撃でペースを掴んでいたにも関わらず、3R以降は組み主体の戦い方に切り換えたのですか。
「それが自分でも覚えてないんですよ。周りから言われて気づいたくらいで」
――過去の試合で扇久保選手はテイクダウンしてもトップキープ出来ずに立たれてしまい、それで消耗することが多かったと思います。でも今回はテイクダウンからトップキープまでが一連の流れになっていました。あれは練習で意識されていたのですか。
「試合中に焦らなかったことが一番ですね。矛盾するかもしれないですけど、今回は立たれてスタンドになっても大丈夫だと思って戦っていたんです。今まではテイクダウンすると『これで立たれてスタンドになるとまた打撃をやらなきゃいけない…』と思って力んじゃってガチガチになっていた。それが良くなかったんだと思います。でも今回は立たれても打撃やればいいと思っていたんで、リラックスして力も抜けていました。それで相手をコントロールできたんだと思います」
――それは面白いですね。立たれてもいいと思っていたから力が抜けてトップキープ出来た、というのはMMAならではだと思います。
「あとは向かい合って、スクラヴォスが小さく感じました。組んだ時の力も感じなかったし、やっぱりフライ級が自分には合ってるんだと思います」
――当初は「5分5Rの長丁場は嫌だ」と言っていましたが、結果的には5分5R戦えた上に、最後まで動きのペースが落ちることがなかったですよね。
「ポイントは打撃ですね。スタンドの攻防をやれば疲れないってことが分かりました。それに俺も落ち着いてやれば打撃でいけるんだなって(笑)」
――ちなみに扇久保選手は、空手時代は突きよりも蹴りが得意だったのですか。
「左の上段蹴りと胴廻し回転蹴りが得意でした。さすがに胴廻し回転蹴りはリスクが大きすぎて出せないですけど」
――スイッチしないでその場で蹴る左=前足のハイキックですね。
「はい。あれは小さい頃から得意にしている技なので自信あります。あれ一発で倒すのは難しいですけど、タイミングよく蹴れば当たります。そういう技も込みで今回は打撃で上手く試合を組み立てられたと思います」
――試合後には元谷選手との対戦アピールもありましたが。
「もちろんUFCから声がかかればUFCで戦いたいですが、そうじゃないなら日本で戦いたい相手は元谷選手しかいません」
――今年はトーナメントということで2月から連戦が続きました。怪我やダメージもあると思うのですが、次の試合はいつ頃を考えていますか。
「来年の始めくらいですかね。年内はゆっくり過ごして、なるべく試合間隔をあけないようにしたいと思います」