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【Special】キックボクシング・ルネッサンス Glory&K-1総括対談(03)

kickboxing Renaissance

5月26日(土・現地時間)にストックホルムで開催された「Glory World Series 2012」と、翌27日(日・同)にマドリッドで行われた「K-1 RISING 2012」が開催された。

キック再興への2日間、そして欧州中心のキック界の再構築となった二つの大会を振り返る対談。第3回はK-1 MAXを中心にお届けします。

第1回はコチラから
第2回はコチラから

高島 キックに対し、MMAの視点で語るのは本来、間違っていることかもしれないですが、キックボクサーのフィジカル&コンディショニング・トレーニングは、改善の余地が残っているように思います。

と同時に、ハルートは長身ですし、減量に失敗したのかと。あれだけ一方的に攻めていても、攻め疲れでトーンダウンしてしまうのは――。少し抑えて戦っても、十分に勝てた試合に見えました。

中村 もう少し間をおいたり、2Rに攻め続けている時に一度ひくことだってできたでしょうね。試合のヤマを作るのが、まだ上手くないと思わざるを得ないファイトではありました。

高島 グローエンハートが粘りを見せたからこそ――の意見なのですが。

中村 グローエンハートの大きさ、頑丈さ、一発の強さは、コンディション次第にはなってくるとしても、他の出場選手にも脅威になってきそうですね。

高島 攻撃を受け続けながらもスタミナは、なんとかもちました。

中村 結果、ハルートが荒くなったところで一発を当てました。あの辺はフィジカルと耐久性、体の強さが出た試合だったと思いました。グローエンハートは凄くスマートなタイプではないし、1Rのハルートの攻めを見ていると、ハルート勝利で堅いと思ったんですけどね。

高島 テクニシャンに対して、最もがっかりさせられるのは、ガチャガチャと攻めてくるタイプを、その技術で封じ込むことができず、押し切られることなんです。なんのためのテクニックだと、MMAだとタンク・アボットに格闘技のトレーニングを積んでいる人は負けてほしくないというような……。ハルートにはグローエンハートを封じ込んでほしかった……。

中村 サワーやキシェンコと、ハルートがどういう風に戦うか。それも見られなくなるので、残念です。

高島 グローエンハートはトーナメント戦なら、次の試合のことを考えると、ああいう風に体力勝ちするような戦いはできなかったはずですから、ハルートにとっては何もかも間が悪い1回戦だったということですね。もちろん、結果論ですが。

他のK-1MAXの試合で気になった選手はいますか? 先ほどはサワーの名前を挙げていましたが。

中村 サワーもそれほど調子が良かった風には見えなかったです。これは総括的なところに入ってきてしまうのですが、次の試合が決まっているなかで、トーナメントの1回戦に臨むというのは、色々な面で難しいのでしょうね。そういう部分で考えさせられる試合でした。

高島 サワーは6月23日にIt’s Showtimeのベルギー大会で世界70キロ王者のクリス・ンギンビに挑戦することが決まっています。そのなかで一度敗れているロクエニ戦でした。

中村 今回も敵地スペインでの試合だったのですが、ロクエニのホームで1票を落してスプリットで判定勝ち。下手すれば判定負けも、あり得るという展開でした。

高島 決定打は出なかったです。

中村 下がっていたロクエニと、前に出たサワー。ホームタウンデシジョンもあるかなというなかで、ポイントが入り勝ちました。まぁ、本当に難しい試合を上手くまとめて勝ったという感じでした。

高島 ボディへのヒザを急所と判断されて、休めたのはサワーにとって良い方向に働きましたね。キシェンコの方はいかがでしたか。

中村 対戦相手のイ・スーファンが、以前ほど調子が良くないですよね。HEATでダニーロ・ザノリニと戦って負けた時も蹴りが出なくなっていたし。スタイル的にも、大きくてパワフルでバチバチで蹴り、パンチも強かったのに。今回そういう良さが出なかったですね。

キシェンコの方がマイクス・ジムのスタイルなのか、体も大きくなっていて、パワーで押すような形になっているのが印象に残っていますね。

高島 アジア人のファイターは、アジア圏内のファイターにフィジカルで勝っていると、欧米の選手にはフィジカルで押し切れなくなって勝てなくなるタイプの選手もいます。フィジカルで負けると、良さも出なくなる。

中村 キシェンコとしては、相性を考えてバンバンと前に行っても倒せると踏んだのかもしれないですが、もっと上と戦った場合にあのパワーアップしたスタイルで、どこまで戦えるのか。それが試されるでしょうね。

高島 日本でも名前のある二人以外に気になった選手はいましたか?

中村 アンディ・リスティですね。ドラゴが動かなかったのでやり放題ということはありましたが、頭を抑えたままコーナーに詰めてボディを打ったり、ヒザを見せたり、発想が違う試合を見せていました。

高島 ドラゴの動きは悪かったですね。最初にダメージがあったのか、あれだけもらっても動かない。ギアを上げることもなかったです。

中村 無策過ぎたように感じました。リスティは自分で変則的だとは思っていないと思うので、次の試合でどんなスタイルを見せるのか。あのままなのか、オーソドックスに戦うのか楽しみです。

高島 リスティもハルートまではいかなかったですが、打ち疲れがありました。やはりキャリアという部分なのでしょうか?

中村 ドラゴが前に出て来なかったから良かったですが、明らかに息は上がっていました。あと気になったのはンギンビの相手が、パジョンスックじゃなかったですね(笑)。ウェブサイトの写真はパジョンスックだったので、名前を変えたのかと思っていたら、明らかに違う選手が出てきて……。

でもンギンビは、上手いと思いました。飛びヒザを上手く使ってポイントを取っていました。Krushでもそうですが、あのルールだとパンチで攻めてから、飛びヒザにいくと距離が詰まってブレイクになる。

高島 個人的に(ムラット)ディレッキー・スタイルと呼んでいます(笑)。

中村 ハハハハ。距離が詰まるとブレイクになるので、ンギンビの場合はヒザも当てていたし、着地してパンチにつなげるなど、新K-1スタイルというべき、今までにないコンビネーションが見られました。

この項続く



5月27日の激戦も――、過去のGLORY WORLD SERIESアーカイブ映像はコチラ

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