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【Shooto2021#05】Sアトム級挑戦者決定戦=SARAMI戦へ、中村未来─01─「勝って評価されない平田選手」

【写真】2月の平田戦を経て、5月に北野きゅうに勝利──も勝ち名乗りを受けるときは、御覧の表情だった中村 (C)MMAPLANET

25日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2021#05で、スーパーアトム級王者・黒部三奈への挑戦権を賭けて、中村未来がSARAMIと戦う。
Text by Shojiro Kameike

今年2月、Road to ONE04のメインイベントで平田樹と対戦した中村は2RでTKO負け。平田樹のためのアンダードッグ――そのような見られ方をして当然の試合で敗れた中村だが、そこからMMAファイターとして新たな一歩を踏み出していた。


――今回、修斗女子スーパーアトム級次期挑戦者決定戦に出場する中村選手ですが、まず2月の平田樹戦での敗北については、どのように受け止めているのでしょうか。

「あの試合は私にとって、いろいろ変わるキッカケになった試合でした。そう考えると、やって良かったとは思いますけど、今考えると本当に悔しいですね(苦笑)」

――試合内容としては、平田選手が組み付いてきても、ケージ際ではアンダーフックやオーバーフックを効かせて倒れない。こかされても、すぐに立つ。そのような展開が続きました。

「試合の作戦は、こかされても立つことでした。その部分では、練習していたことが出せたかなと思っています。ここ最近、グラップリングの練習の割合が高くなっているんですよ。週でいうと、組みの練習が週に4回。特に壁レスは、しっかりやるようになりました」

――以前から打撃の練習に関する動画や写真がSNSなどにアップされていましたが、今は組みの練習のほうが多いのですか。

「はい。打撃は週に2回、ミットとスパーリングをやっています。それよりも組みの練習のほうが多くなっていますね」

――では、平田選手とのスクランブルや、テイクダウンされても立ち上がる展開では手応えがあったのですね。

「そうですね。グラップリングの部分では、そんなに大きな差はなかったと思います。ただ、最後の首投げは……」

――フィニッシュは、平田選手の必勝パターンにハマってしまいました。首投げから袈裟固め、そしてパウンドという一つのパターンです。

「あの首投げは、来ると分かっていても、やられてしまいましたね。もちろん対策はしてきていました。ただ、試合では組んできても首投げは出そうとしていなくて」

――あえて序盤は首投げを出していないようにも感じました。

「そうなんです。ケージに押し込まれている時も、『ここで首投げに来るかな?』と考えていたのですが、そんな素振りもなくて」

――中村選手ご自身のなかで、そこまでケージ際の攻防で劣っていないと感じられたのに、なぜあの首投げからの展開は防げなかったのでしょうか。

「首投げから抑え込まれるまでのスピードが、ものすごく速かったです。投げられた後のことも想定していて……ああしよう、こう立とうとか対策もあったのに、それを考えられる前に抑え込まれてしまいましたね」

――一方で、中村選手の左ストレートが平田選手の顔面を捉え、左ミドルも当たっていました。

「思ったより距離が近かったので、打撃はいけると思いました」

――結果は2RでTKO負けでしたが、試合後にABEMAの中継はご覧になりましたか。

「見ました。青木真也選手に評価していただいて、嬉しかったです。でも、それが悔しいっていう気持ちもあります」

――評価されたのが悔しい……というと?

「負けても評価していただけるだけマシ、そう言われるのは分かります。他には負けたうえに評価されない選手もいるわけですから。だけど、負けて評価されるより、勝っても評価されない平田選手というのが……やっぱり、そういう試合だったんだな、って思いますよね」

──……。

「あの試合は、私がアンダードッグでした。その立場を覆せなかったじゃないですか。だから勝ちたかったし、負けて悔しいです。今考えると」

――ただ、平田戦について「いろいろ変わるキッカケになった」と言われていました。試合後、どんなところが変わったのでしょうか。

「注目されている平田選手と試合をしたおかげで、『平田樹と試合をした人だよね』って声をかけられることが増えました。そこから応援してくれる方も増えたんです」

――なるほど。知名度は上がったわけですね。

「それで、このままじゃいけないと思ったんです。応援してくださる方のために、もっと強くならないといけないって。それで平田戦の後から、練習量を増やしました」

――選手としての生活も変わったのですか。

「仕事の出勤時間を減らして、練習量を増やしました。朝と夜で2部練ができるようにしたんです」

――えっ、中村選手はネイルサロンに勤務していますよね。出勤時間を減らすと給与面、ひいては生活費に関して影響は出ないのですか。

「朝の出勤を減らしただけなので、そこまで影響はないですね。ただ、お昼の仕事を減らすわけにはいかなかったですけど……」

――それでも、大きな変化ですね。

「平田選手は小さい頃から格闘技をやっているし、他の選手と比べても、私は格闘技経験が浅いじゃないですか。だから他の選手に追いつくためにも、もっともっと練習しないといけないと思ったんです」

<この項、続く

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