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【ONE64】ガフロフとの組み技戦を控えた青木真也 ──「勝負論のある世界に」in ジャカルタ

JKT【写真】ジャカルタで組み技戦、そこに存在しているモノは青木の闘いへの拘りだった(C)SHINYA AOKI

明日20日(土・現地時間)、インドネシア・ジャカルタのジャカルタ・コンベンションセンターで開催されるONE64「King of Courage」で青木真也が前ONE世界フェザー級王者のマラット・ガフロフとグラップリングマッチで戦う。

Shinya AokiMMAファイター同士のグラップリング戦出場は、その意義云々ではなく大物のゲスト出場感が拭えない。それは最近の青木の若い選手たちとの接し方を見ても、感じていた──勝利への想いが希薄になっていたのではないかという疑問に通じる大会オファーだった。

試合前夜、ジャカルタにいる青木に国際電話で勝負に賭ける想いの所在を尋ねた。


──マラット・ガフロフとのグラップリングマッチが、明日に迫ってきました。現在の体調は如何ですか。

「最初は75キロというオファーだったので、少し心配で76キロにしてもらったのですが、結果的には75キロでも大丈夫な感じで、体重も尿比重の方も問題なかったです。

ガフロフは2日とも最初は比重がダメで、2度目でクリアーしたようです。ジャカルタは温かいですし、問題なくきています。ジャカルタという土地に組み技だけで来ることができるというのも、なかなかないことなので有り難いですよね」

──通常体重と契約体重が同じぐらいなので、尿比重に対して慎重になっていたわけですね。

「そうですね、僕は細かい方なので。結果的に問題がなかったのです。僕自身、70キロに落とすことも可能かと思ったのですが、水分を含んで70キロの体になっても今よりも良いパフォーマンスは出せないような気がします。だから、僕は75キロとかが良いのかもしれない」

──ただONEライト級、77キロの選手はドライアウトはしていないにしても通常体重からは体重を落としているように感じますが。

「きっと水抜きしていないと、体重は戻らないですよ。だから、フェアといえばフェア。格闘技における体重制というのは、互いの体重を揃えて公平な条件でやりましょうということだったのに、いつの間にか体重落とし合戦になり、安全が担保できなくなった。

そういうなかでこの計量方法は新しい流れだし、やはり1人の選手の尊い命が失われたという大事があったので、ONEという組織が大きく変わることになったのだと思います」

──その新計量方法で挑むグラップリングマッチですが、ガフロフの実力が読めないのが本当のところです。

「分からないですねぇ(苦笑)。組んでみてどうなるのかは楽しみでもあるし。自分の組み技を信じている部分はあります。そこは大丈夫だと思います」

──ゲイリー・トノンという本職の人間と戦うのではなく、MMAファイター同士のグラップリングマッチです。そうなると、青木選手も何があっても下にならないよう粘るMMAグラップリングではなく、下になって自分の形を作るという選択肢もあるかと思うのですが。

「いや、MMAと同じようにやります」

──それは引き込むことはないということですか。

「やっぱり、そういう風になると思いますよ」

──下になって自分の形を作るという選択肢がないと?

「それをやっても、何もならないですからね」

──グラップリングもMMAの一部であるということでしょうか。

「MMAというか、闘いですね……闘いだから自分から下にはならない。下にされたら返すし、立ち上がります。それが僕の信念なので」

──この試合だけを考えると、ガフロフが青木選手に引き込まれた方が自分の形は作り辛いかもしれないですが。

「引き込まないです。あのう……俺、変なこと言っていますか?」

──変ではないです。が、この試合のことだけを考えると違う選択肢もあるかとも思います。

「ここでの勝敗も大切ですけど、何度も言っているように闘いなので。信念があります」

──なるほど。実はabema TVでの青木アワードもそうですし、若い選手に対しての青木選手の接し方を見ていると随分と優しくなった。ギラついていた時と明らかに変わったので、そういう部分がどれだけ青木選手に残っているのかと感じていたのです。

「優しくなりましか……。それで弱くなり、勝てなくなるのだとしたら……それはそれで受け入れざるを得ないのかもしれないですね。格闘技をする目標が勝つことであるとすれば、今の僕は間違っているわけです。勝っていないから。

同時に格闘技をする目的が、自分が豊かになることだったら今の僕は成長していることになる。ただ、優しくなったわけではないですよ」

──優しくなったわけではない?

「ハイ。若い子を認めているんです。認めている若い選手に丁寧に接している。こないだ、田中路教選手のことを『さんづけするんだ』って驚いていたじゃないですか」

──ハイ。

「それは僕が彼を認めているからです。そこは優しくなったわけではなくて、自分達の世代が若い選手たちに追いやられていることを自覚している。彼らがやっていること、彼らがやろうとしていることは凄いことです。僕らより将来性があるかもしれないし。

僕はそんな彼らを尊重し、負けないように抗っている。彼らと関わることで、少しでも頑張りたい。少しでも勝負論のある世界にぶら下がっていたいんです」

──つまり格闘技を続けている目的が勝つためだと。

「勝利を目指して闘い続けているし、このところ僕の立場が勝負論から外れかけていることに対し、一番ジレンマを感じているのは僕自身なので。

ユーサップ・サーデュラエフと戦う今成正和、セコンドの北岡悟とともに

ユーサップ・サーデュラエフと戦う今成正和、セコンドの北岡悟とともに

俺はやっぱり、ベン・アスクレンと闘ったことを後悔していないし、勝つために闘いました。でも、その試合を自分でコントロールできなかった。そういう状況下に置かれている自分に対しての苛立ちはありますからね」

──であるならば当然のことなのですが、そろそろ勝ち名乗りを受けるところが見たいです。

「勝ちたいです。ずっと勝つためにやっているし、勝ちたいから試合に出ている。今回、北岡(悟)さんが一緒に来てくれたのですが、そういう話も一緒にできました。うん、勝ちたいですよ。何よりも自分が勝負論の中にいたいので、まだ」

──つまりはレジェンド枠には入りたくないということですね。

「入りたくないです。だってそういう取り組み方になっているつもりはないですから。まだ闘っている。だから、明日も勝つために闘います」

■ONE64対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
ティファニー・テオ(シンガポール)
シィォン・ヂィンナン(中国)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ステファー・ラハディアン(インドネシア)
ムハマド・イムラン(パキスタン)

<ミドル級(※93.0キロ)/5分3R>
ヴィタリー・ビクダシュ(ロシア)
レオナルド・アタイジ(ブラジル)

<グラップリング76キロ契約/15分1R>
ムラット・ガフロフ(ロシア)
青木真也(日本)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ツー・ノット(インドネシア)
リン・サロス(カンボジア)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ユーサップ・サーデュラエフ(ロシア)
今成正和(日本)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ヴィクトリオ・センダック(インドネシア)
ヨハン・ムリア・レゴウオ(インドシア)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
リスキ・ウマー(インドネシア)
アーノル・バツバラ(インドネシア)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
レネ・カタラン(フィリピン)
パン・シューウェン(中国)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
プリシーナ・ジャオル(インドネシア)
オードレイローラ・ボニフェース(マレーシア)

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