【AJJC2016】フェザー級優勝、杉江アマゾン大輔 「意外とガードワークができるようになった」
【写真】優勝を決め、爽やかな安堵の表情を浮かべた杉江(C)MMAPLANET
10&11日(土・日)に東京都足立区の東京武道館で国際ブラジリアン柔術連盟=IBJJF主催のアジア柔術選手権2016(Asian Jiu-Jitsu Championship 2016)が開催され、杉江アマゾン大輔がフェザー級で頂点に立った。
二連覇中のイザッキ・パイヴァがまさかの初戦敗退。世界の壁を超えることを目標にアジアに挑んだ杉江は、ここでどのように気持ちを切り替えたのか。そして彼にとってフェザー級のブラジリアン柔術とは何だったのか。
――アジア選手権、優勝おめでとうございます。
「ありがとうございます。今回、MMA PLANETで僕のインタビューが無かったので、絶対に優勝してやろうと思いましたよ。オレのこと忘れているだろう、と(笑)」
――申し訳ありません。色んな選手の声を届けたいので(笑)。では今大会について聞かせてください。まず1回戦は大塚博明選手との対戦でした。4月のジャパニーズ・ナショナルの1回戦と同じしたね。その時は両者ポイント無し、レフェリー判定でアマゾン選手の勝利。今回はアマゾン選手がアドバン1-0で勝利しています。
「はい。4月に対戦していたこともあって、大塚選手も僕のことを研究していたし、僕も大塚選手のことを研究していて、今回は僕の研究のほうが得点に傾いたのかな、というだけです。今回はレフェリー判定ではなくアドバンテージで勝ちましたし。試合として、アドバンテージやルーチなども計算しながら戦っていたんです」
――一方、優勝候補の1人であったイザッキ・パイヴァが1回戦でチェ・ワンキに敗れました。
「僕も決勝の相手はイザッキになるかなと考えていました。それがチェ・ワンキ選手に負けて、『あぁ~』と思いましたけど、でも今の韓国は柔術のレベルの上がりようが凄いですからね。もともと柔道も強い国だし、それも当然なのかな、と」
――イザッキ・パイヴァと対戦したかった、という気持ちはありませんでしたか。
「うーん、試合って『勝てるか勝てないかの壁』ってあるじゃないですか。今回、その壁は打ち破りたいと思っていたんです。ワールドマスターでデニウソン・ピメンタに負けたように、上の選手には勝てないという壁を感じていました。今回はイザッキに勝って、その壁を壊す。そうしないと、ただの“いち柔術家”で終わってしまうので」
――なるほど。
「でも1回戦が終わって、イザッキに勝ったワンキ選手に勝てば、その壁を壊したという証明になるんじゃないかと思いました。これはトーナメントだから、優勝できればいいかなって。誰に勝つか、ということではなく、これだけの選手が出ているトーナメントで優勝するという戦績が欲しかったんです。今回のアジア選手権ってレベルが高かったじゃないですか」
――フェザー級はもちろん、他の階級も過去最高レベルといっても良かったでしょう。
「そんな中で優勝できたというのが嬉しいです」
――準決勝はチャールズ・ガスパー選手に2分34秒、一本勝ちでした。あのフィニッシュは、どういう形で極まっていたのでしょうか。
「まず僕が下になって、外巻きのデラヒーバから草刈りで倒しました。チャールズが亀になったところで、僕は片襟を持っていたから、がぶった状態で送り襟絞めを極めたんです。たぶんチャールズは、僕の動きが分かっていなかったと思うんですよ」――アマゾン選手の動きが分かっていなかった、とは?
「僕、意外とガードワークができるようになったんです。ベリンボロとか。チャールズはそれを知らないだろうなって」
――確かに過去の試合からは、アマゾン選手がガードワークで勝負することは想像しにくいかもしれません。復帰後もベリンボロに挑戦して失敗したことがありましたし。
「はい(笑)。自分でも、もともとモダン柔術を取り入れようとは思っていませんでした。でもライト級からフェザー級に落とし、軽量級になればなるほどモダン柔術のテクニックが必要になってくる。だから加古(拓渡)のプライベートレッスンを受けたりして、ガードワークを身につけてきたんです」
――なるほど。
「それと決勝に向けて体力を温存したかったので、準決勝はできるだけ早く試合を終わらせておきたかった。練習は十分積んでいたので、全試合10分を戦える体力には自信があったんですけど、それでも早く極めることができて良かったです」
――そして決勝はパイヴァを下したチェ・ワンキとの対戦になりました。
「準決勝を見ながら、ワンキ選手をパスするのは大変だろうなと思いました。彼は引き込んでからワームガードや50/50を作ってくるんですけど、まず相手が下になったら自分が上になってアドバンテージを取り、そのアドバン差を守ろうと決めていたんです」――決勝はその通りの試合展開となり、アドバン1-0で勝利しましたが、終盤はパスを狙いに行く場面もありましたね。
「今日は全体的にルーチが早かったじゃないですか。1回戦でそれは分かったので、密着して頑張るだけじゃなく、攻めていかないとルーチが入り、2つ入るとアドバンテージを取られてしまう。だから攻めていかないといけない、と思って」
――試合終了後、チェ・ワンキはジャッジについて抗議していましたね。
「最後の三角絞めはアドバンテージが入るんじゃないか、ということなんでしょう。でも、こちらも試合をしていて、アドバンが入るものかどうかは分かりますから」
――時間的にタイムアップと同時でしたし、それも含めてアドバンテージが入らないのは仕方なかったかなと思います。
「そうですね。自分としては、決勝で燃え切ることができたと思います。ムンジアルからこのアジアまで、いろんな試合をしてきたじゃないですか。その経験が生きていますよね。特にずっと細川(顕)と一緒に練習しているから、ガードがうるさい相手には慣れているんです」
――それは大きな強みでしょうね。
「細川とそんな練習ばかりやっていて、この年齢で練習量も戻ってきましたし。当たり前のことですけど、やっぱり練習にかける時間と量って大切じゃないですか。それで全日本から結果も出てきたので、『練習は裏切らない』っていうのが今さらながら分かってきました」
――結果、自身のガードワークも向上して。
「そうです。僕のモダン柔術のテクニックは、加古であったり細川であったり、彼らと練習してきたから、できるようになったんです。まだそれほどアピールできるほどじゃないですが、ヘタではないけどマアマアできるっていう」
――ベリンボロに挑戦して失敗した頃と比べれば。
「今日は成功しそうなところがあったでしょう(笑)。そうやって、明らかに軽量級の戦い方になってきましたよ。僕、今は力を捨てているんです。脱力というか」
<この項、続く>