この星の格闘技を追いかける

【Interview】フィリピン発――危ない肘使い=ユージーン・トケーロ

2012.12.06

Eugene Toquero

【写真】1981年1月21日、セブ・シティ出身のユージーン・トケーロ。今時珍しい喧嘩の香りを残すMMAファイターというのもフィリピンらしい――(C)MMAPLANET

見る者の目を奪うファイターが、フィリピンに存在する。まだキャリア4戦、対戦相手の技量からもどれだけの実力の持ち主か測りかねるのも事実。米国レスラーに掛かれば、アッという間にテイクダウンを奪われ敗れてしまうかもしれない。その一方で、これだけ見事にヒジを使いこなすファイターも、ほとんど見ることはできない。

10年の歴史を持っても、未だ創世記という混沌のなかにあるフィリピンMMA界からフライ級、ストリートファイターとしての危なさを持つユージーン・トケーロを紹介したい。

――PXCで素晴らしい活躍を見せているユージーン・トケーロ選手ですが、もともと格闘技を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

「17歳のときにキックボクシングとムエタイを始めた。理由はマーシャルアーツが好きだったから。もともと、俺は強いファイターだったし、キックの試合を見て自分もリングの中でプロとして戦ってみたいと思ったんだ」

――もともと強いファイターという言葉は、如何にも危ない香りが漂ってきます。キック以前にマーシャルアーツの経験は?

「マーシャルアーツの経験は全くなかった。でも、数多くのストリートファイトをこなしていたんだ(笑)。小学校から喧嘩に明け暮れ、キックを始めてカレッジに入学しても、喧嘩癖は直らなかった(笑)。決してバッドボーイじゃないよ、ただ、よく喧嘩を売られたから買わない理由はなかったんだ。

セブのジムに入門したけど、キックはセブでもそんなにポピュラーでなく、年に2回か3回トーナメントが開かれるだけだった。しっかりと練習と試合をしたかったから、マニラに引っ越してきたんだよ。その後は散打のナショナル・チームの一員に4カ月だけなった。

2004年と2010年にはムエタイのナショナル・チームに選抜されたけど、2011年からMMAに専念している。キックボクシングとムエタイでは60勝7敗ぐらいの結果を残した。ただ、フィリピンでプロのムエタイの試合に出たのは1度だけなんだ」

――それだとムエタイ・ファイターとして生活をしていくことはできないですね。

「そうだね。ジムの指導で給料は得ているけど、ムエタイのプロ大会は本当に少ない。でも、指導をして生活の糧とし、自分の練習もできるから、ずっとジムにいることができる。自分の練習は午前中にして、夕方からは指導をしているんだ。2年前にセブで行われたプロのムエタイの試合に出た時はエルボーでKO勝ちしている」

――MMAでもエルボー、そしてヒザ蹴りの威力をまざまざと見せつけています。

「俺のコーチはタイ人だし、タイで練習もしてきた。今もムエタイだとタイはスバ抜けている。エルボーやニーだけじゃなくて、パンチだって彼らは優れているし、タイ人から多くのことを俺は学んできた。エルボーもヒザも、本当のテクニックで使い勝手がいい」

――MMAを戦おうと思ったのは、どうしてですか。

「MMAファイターにもムエタイを指導していて、ほとんどMMAの知識はなかったけど、その教え子たちよりも俺の方がMMAで強かった。以前からUFCやPRIDEをTVで見ていたし、自分でMMAにもトライしてみたくなったんだ。最初の試合は悪くなかった。2度目の試合も問題なかった。で、今は4連勝中で凄くMMAで戦うことを楽しんでいる」

Toquero【写真】11月10日のPXCで、ジェローム・ワナワンを下しMMA4勝目を挙げたトケーロ。そのファイトはまだ非常に荒々しいモノだ (C) MMAPLANET

――目標とするMMAファイターはいますか。

「好きなファイターはアンデウソン・シウバだ。彼こそコンプリートファイターだと思う。だから、俺も試合では打撃中心で戦っているけど、練習では寝技に力を入れている。倒されても自分の身を守ることができるようにね。今はようやく自分でも関節技を仕掛けることができ始めてきたところだ。

以前はムエタイのナショナル・チームで指導し、練習を続けていたんだけど。MMAで戦うことを決めて、エルウィン・ターグレのサブミッション・スポーツに合流した。

エルウィンがアレ・カリに負けてしまったから、俺がリベンジしたい。個人的にもアイツのことが嫌いだから、ケージでなかでケリをつけたい。アイツにとっては、あれがファイティング・スタイルなんだろうけど、あの人を舐めた態度は許せない。エルウィンもスタミナをロスしていなければ、あんな奴に負けなかったはずだ。

ここで練習している連中は、あんな奴に負けない。PXCがアレ・カリとの試合をオファーしてくれた絶対に断らないよ」

――なるほど、因縁勃発ですね。ところでフィリピンではPXCが順調にMMAを普及しているようですが、トゥケーロ選手の目標はアレ・カリの持つPXCフライ級王座ですか。

「そうだね……、余り今後のプランなんて考えていない。ただ、戦うことが好きだから戦い続けていきたい。ホント、毎日戦ってもいい。どこでも戦う。3、4年で引退すると思うけど、今はMMAファイターとしてやっていけるという自信がある。

ケージやリングなんて関係なくずっと戦ってきたから、ケージの中で戦うのなんてヘッチャラだ。逆に凄く落ち着いて戦える。路上で戦ってきた過去は無駄じゃないよ(笑)」

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